日常の誘惑。
二話目できました。応援してくださった希少で優しい方々と、これから読んでみようかという勇気を持った全ての人々に心からの愛を込めて贈ります。(・・・あれっ、サンテクジュペリ入っちゃった)
混み込みの市街地の商店街に、「安くて旨い」魚屋さんがある。
ウチからは車で出かけなきゃ・・・、という運転下手の私には、高リスクの買い物にはなるが、「ハイリスク・ハイリタアーン」のこんな時代。避けられない選択だ。
「魚は○○○鮮魚店だよねー」
「あーっ、私もソコ!」
「やっぱり美味しいものは、わざわざ足を運ぶっていうことアリだよね」
「うん!」「うん!」「うん!」
・・・わんこ散歩中に出会った奥様方の話題に、、、最後まで入れなかった。
そうなると出かけるのだ。
皆そうだと思う。・・・絶対行きたくなると思う。間違いないからっ! ・・・そうだよねぇ!!
あっ、常軌を逸してしまうところだった(汗)。
そういうワケで、冒頭の鮮魚店へ、フンフンと鼻歌交じりに出かけたのであった。
駐車場は、細い脇道を入っためんどくさい場所。「ええい、これしきで追い返されてたまるか」・・・誰も追い返す意図で作ったのではないだろう道路から、私には登呂遺跡の高床式倉庫に仕掛けられた鼠返しと同じニオイを感じた。
しかし、事実がどうであれ、教習所のクランクもS字カーブも、楽々クリアの私に、ド―――――ンとそびえ立つ、両側の塀!! 教習所には「塀」は設置してないぢゃん。しかし、
「こんな所でリタイアしてたまるか」
物事は根性で乗り切れる時もある。この時のハナシを手記として出版しようかと思うほど達成感のある通過であった。近いうち、市役所の道路関係課で、ここが「みなし道路」かどうか確かめよう。なってなかったら「すべきです」と一言添えよう。うん。
それはそうとして、「魚」だよ。買い物ごときで、何でこう苦労してんだよ。スッと済ませろよ。・・・という声が聞こえてきそうなシチュエーションなので、車を止め、今どき常識の「買い物バック」をひっさげ目当ての鮮魚店へ向かった。
向かうつもりだった。いや、確かに向かっているが、
「待った?」
「ううん、来たばっかり」
「よかった」
「なんか、久しぶりだね」
「そうなっちゃったね」
たまたま私の止めた車の近く、駐車場出入り口のそばの電柱の傍らで男女二人の密やかな会話が耳に入った。
ニュータイプじゃなくとも「ピピピピッ」っと脳波が反応します的、デートの匂い。
路上で、日中から視覚的迷惑をかけているワケでもないし、なんの問題もないですよ。いえ、通りすがりの私ごときの賛否を確認する必要も無ければ、大きなお世話でゴメンナサイ状態ですよ。ホントにすみません。
こういうときは、「キキミミずきん」外さなきゃ。じゃない、着けてないし。というか、アレは動物及び虫、自然物の会話聞き取り装置だから、ますます関係ない。
とにかく、「かなぁ、いっきまーす」と、心の中で区切りをつけつつ車のドアをロックしたのだ。鮮魚店への道は微妙な数の人々。
その時だ、私の背に違和感を感じたのはっ!
「きゃぁぁぁぁ――――」
とは、言っていないが、もやぁぁぁんと、違和感。
「もやぁぁぁん」だと、チカン登場っぽいなぁ、じゃ、「ぽわぁぁぁん」違う「ほわぁぁぁん」・・・このへんでいいか。
私のパーソナル・スペースに、くっきり入り込んで、例の二人が付いて来る。何故?
鳥瞰図なら、いや、真横からでもいいけど、どう見ても三人連れに見える。スピードが偶然一致してしまったのか? それとも、私が遅すぎて、追い越しそびれて困っているのか?
わかりました。足、速めます。しかし、
また、同じ距離を保つようにスピードをそろえてくる。
「何故だぁぁぁ――――?」
しかも例の二人は無言だ。さっきまでの、ちょっとした恥じらいも喜びも嬉しさも・・・、ありとあらゆるデート的なものを捨て去って、買い物奥さんのペースに合わせてくる。
試しに、もっとスピードアップを試みる。
・・・付いて来るっ!!!
何? 何? どうして? ナニ、この密着尾行!
私、盗ってませんよ。というか、まだ店に入ってないし。生まれてこの方、盗みとか万引きとか、やってませんよ!!! と、叫びたくなるじゃないか。万引きGメン、カップルバージョンか? それ以外、何? あなたがた何?
それでも二人は歩調を合わせて付いて来る。早めても、遅めても付いて来る。
なんかもう怖い!
もう、早く店に入って、それでも不信な行動が続いたら店員さんにすがろう。
と、決意を固めたところで、大通りに出る寸前、二人の気配が消えた。スッ・・・。
恐る恐る振り返ると・・・いない!
鳥肌ビンビンの真昼の恐怖に浸りつつ、ふと目先に見える大通りの向こうには、墓地があった。しかし、そちらの住人ならもっと先で「スッ」とならない? 早すぎじゃない。というか、最初から待ち合わせ場所を墓地にしろよ!
怖いからアタマの中で抗議をしました、私。
しかし、余計なコトに気を取られて見落としていたが、「ピン!」と来て振り返ると、そこには和風のラブホが。・・・ここで気配が消えたのなら理に合っている。
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私は回想した。
冒頭での男女は、ここに向かっている姿をどうカモフラージュするかを迷っていたのだろう。あの年代はそうかも知れない。
どこかのお爺ちゃん、お婆ちゃん・・・いつまでもお元気で。
あ、あとがき…ですか。
今度考えときます。ははは。




