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Not too late  作者: 月夜野 宇宙
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ラジオ体操

「お客さん、起きてください。終点ですよ」

 身体を揺さぶられ、現実へと引き戻される。

(ここはどこだ?)

「大丈夫ですか、お客さん。随分とお疲れのようですね。終点ですよ」

駅員と思わしき男は若干面倒くさそうにそう繰り返した。

 ホームの案内板をみると、確かに私の自宅の最寄り駅、そしてこの路線の終着駅である。未だ何が起きたのかわからないまま、駅員に礼を言ってから家路へとついた。

(一体あれは何だったんだ?夢?それにしてはリアルすぎた。感覚はあった、なのに…)

 その証拠なのか、会社を出るまであった食欲はとっくに消え失せていた。家に着いた私はシャワーを浴びると、とこについた。きっと疲労がたまっていたからに違いない。さっきのことは本当に夢だったんだ。そう自分に言い聞かせた。

(明日は休日だから、目覚ましはきっておこう)

 そのまますぐに眠りに落ちた。




 ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ…

 朝がきたことを知らせる甲高い音が頭の中に響いてくる。

(目覚ましは切ったはずだろ、それにこんな音に設定した覚えはないのだが)

 私はその音を止めようと、手探りで携帯を探す。するとその音は突然止まり、

「朝だよ、起きて、ラジオ体操にいこう!」

という女の子の声がした。

 私は驚いた。何故一人暮らしの私の家に女の子がいるのか、そしてこの声には聞き覚えがあった。

「柚月…なの?」

「そうだよ、何寝ぼけてるのボクくん。早く学校行かないと遅れちゃうよ」

 何が起こったのか全くわからなかった。またしてもこの時代に、“ボク”の身体に戻ってしまっていた。なんの考えの整理もつかぬまま、私は柚月に急かされて家を出た。

「この辺ではね、自分の通ってる学校でラジオ体操があるんだ。わたしの行ってる小学校までは10分くらいなんだ。あと少しで着くよ」

 私はなすがままだった。何故自分がこんな目にあうのかわからない。何の意図がある夢なのか、それともそうじゃないのか見当もつかなかった。そうしていろいろと考えている間に学校へと到着した。校庭には、数十人の小学生たちが眠そうな顔でラジオ体操が始まるのを待っていた。そして間も無くしてラジオ体操が始まった。

(ラジオ体操するなんて、高校の体育の授業ぶりだな)

 だけども私の記憶かそれとも“ボク”の身体が記憶していたのか、定かではなかったが間違えずにおこなうことができた。


 体操が終わると柚月は私の手を引いて歩き出した。

「帰らないの?」と尋ねると

「1ヶ月くらいいるんでしょ?じゃー、わたしの友達を紹介してあげる。一緒に遊ぼっ。」

 そう言われ、連れていかれたところには男の子と女の子が1人ずつ立っていた。

「この背が高いのが翔太しょうた、わたしの家の裏のとこに住んでいるんだ。で、こっちがわたしの親友の珠美たまみ。珠美も近所に住んでるんだよ。」

 私はペコっとお辞儀をした。

「でこの子は親戚のボクくん。あっ、あだ名だからね。夏休みの間だけわたしの家に居候するんだ。わたしたちの仲間に入れていいよね?」

 柚月がそういうと、背の高い翔太という男の子は

「そっか、いいよだって柚月の親戚なんだろ。俺は翔太っていうんだ。小6だよ、よろしくボクくん」そういうと私と握手をした。

 続いて珠美という女の子が

「私は珠美っていうんだ。柚月と同じ4年生。よろしくね。」

 柚月よりも背の高い女の子はそう言ってきた。私はまた小さくお辞儀をした。

「よし、じゃーまた後でな」

翔太がそういうと私たちは解散して、家へと戻った。

 朝食を終えると伯母さんが

「そうだ柚月、今日はボクくんにこの辺を案内してあげたら?」

「そうね。じゃ、この後家の門の前集合ね」

 柚月は私の返事を待たずに行ってしまった。そんなことよりもどうしてまたこうなったのか、そのことばかり私は考えていたが、どうやらそんなことをしていても拉致があかなそうだったのでとりあえず、今日は柚月にこの街を案内してもらうことにした。

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