ふりだし?
ぐるっと家の周りを回ってみることにした。すでに時刻は17時をまわっており、太陽がゆっくりと沈んでいく途中であった。
(夕日が沈んでいくのをちゃんと見たのっていつぶりだろう…)
そして、結局この後はどうなってしまうのだろう、元の時代、元の身体にもどれるのだろうか。そんなことを考えていながら歩いていると、水の流れる音が聞こえてきた。
「うわぁ〜」
思わずそんな言葉が出てしまうほど、透明感があり、夕日が反射してキラキラとひかる水が小川のように流れていた。反射的に側に行ってみると、周りの草の香りが身体全体へと伝わってきた。その開放感に私はうっとりとしてしまった。
家に帰ると、夕食の美味しそうな香りがプンプンしていた。
「ご飯だよ〜」
伯母さんにそう言われ、私は居間へとかけていった。
食卓には大皿に盛られた唐揚げ、サラダそれにご飯と味噌汁という内容だった。
「ずいぶんたくさん作ったんだなー!」
「そりゃー、ボクくんが来たんだしたくさん作らなきゃ」
(それにしてもかなり量があるな…)
しかし揚げたての唐揚げ、炊きたてのご飯 この絵面はある意味最強である。食欲がそそられないわけがない。
「それじゃ、いただきます!」
伯父さんの号令にあとにみんなが続いて
『いただきます!』
と言ったが、私は1人遅れてしまい
「…きます」
としか言えなかった。まぁ、慣れてないから仕方がないだろう。
唐揚げを一口頬張ると肉汁が溢れ出た。少しやけどしそうだったが、その美味しさは言葉にできないものだった。
(そういえば、誰かの手料理をこんなに大勢で食べるのっていつぶりだったけ)
私は美味しさと家族というものの暖かさに感動してしまった。さすがに、泣くわけにはいかないので、それを誤魔化すかのようにたくさん食べた。結局ごはんを二回もお代わりしてしまった。
食後、満腹になったお腹をさすりながらテレビをぼんやりとみていると玄関の方から
「ただいま」
という声が聞こえてきた。どうやら年の離れたお兄ちゃんが帰宅したらしい。私は伯母さんとともに玄関へ行き、先ほどと同じように挨拶をした。するとお兄ちゃんは笑いながら
「そっかよろしくね、ボクくん。俺は基本朝早くと夜にしかいないけど、帰ってきたら勉強はしないことにしてるから気軽に話しかけにきてね。俺のことはにいちゃんでも、お兄ちゃんでも、皓にいちゃんでも好きなようによんでくれよ」
どうやらこの一家は全員いいひとのようだ。自己紹介もうまく乗り越えたし、私はちょっぴり安心した。
その後、私は風呂へと入らせてもらい、居間で今日の出来事を絵日記に書いた。字は小学生っぽく書かなきゃダメかと思ったが、もともと、私は字が上手い方ではないので誤魔化せただろう。そうしているうちにも、私は眠くなってきてしまった。いくら精神が子どもでないとしても、“ボク”は子どもなので疲労に耐えられないらしい。私は柚月の隣に敷かれた布団へと潜り込んだ。
(小学生っぽく振る舞うのは少し難しいのかもしれない。けれども深く考えず、純粋に行動すればそうなるのかもしれない)
そんなことを考えている自分がいた。だけどもっと肝心なことはどうやって元の時代に戻るかだったが、疲労のためかそのことについて考える暇もなく私は深い眠りへと落ちていった。
眠りの中、私は私の身体が何者かによって揺さぶられているのを感じた。
「お客さん、お客さん、起きてください!もう終点ですよ」
(ん?どういうことだ??)




