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Not too late  作者: 月夜野 宇宙
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抜け殻

前回からだいぶ間隔が空いてしまいました。

小説を書いていて毎回思うことは知識量の多さがものをいうということです。自分のよく知ってる分野のことはスラスラ書けたりするのですが、それ以外はからっきしダメですね。

いつもグーグルで検索したりして奮闘しております…

 ジグソーパズルはほんの1ピースなかっただけで完成しない、不完全なものになってしまう。糊で固めることもできないし、額に入れることもできない。みんなの心はまさにそんな感じ、ぽっかり何かが欠けてしまったようだ。

 翔太は昨日この街を出ていった。“ボク”は1ヶ月もない付き合いだったが、柚月達は違う。彼らは間違いなく“本物”を築き上げていた。わかっていたけども、わかっていないようなモヤモヤした感じなのかもしれない。翔太が去っても秘密基地は使えるとのことでみんな一応集まってはいるが、葬式のような雰囲気だ。涼なんか魂が抜けたような顔をしている。

「なんだか何もやる気しないんだよねー…」

 ようやく珠美が口を開いた。「だよね」と涼がふにゃふにゃした力のない声で返事をする。「抜け殻みたい」続けて彼は呟いた。

 頭上には今の心持ちとは、真反対の澄んだ青空が広がっている。遠くの方には入道雲もみえ、まだ夏の名残りがあるのだなと感じさせる。とは言うものの8月ももう後半、つまり夏休みももうすぐ終わるのである。そして私の“限界”もやってくるのだろう。

「いつも通りふつうにしていようと思うんだけどさー、なんか難しいよ、おれ…」

 涼も入道雲を見ていたような気がした。

「ふつうってさ、難しいよね」

 彼はそう呟いた。

 学校や社会では普通がイイと思われている。無論なんとなく日々を過ごし、馬齢を重ねてきた私は普通の部類に入るのだろう。だがしかし、普通ってどのような基準で決められるのだろうか。当たり前のように頭上を雲が流れることは普通の事なのか。雲の形に注目すれば、同じ形の雲はないわけで、そういう意味では普通じゃないのかもしれない。でも、一般的には普通じゃないことはマイナスとして捉えられることが多い。何故だろうか。“みんな同じ”がイイというのだろうか。

 そんなことを雲をみながらぼんやりと考えた。

「学校の授業参観の時とかもさ、先生たちは普通にしてくださいっていうけど難しいよね」

 珠美は涼にそう返した。すると涼は

「普通にしようとしている時点でふつうじゃない気がするな」

 と言った。的を射ている、と思った。

 柚月は何か準備することがあるということでまだ不在である。もう他のみんなが集まってから30分以上経とうとしているのに、柚月は来ず、みんなぼんやりしたままだ。

 それからまた10分経ってからだろうか、柚月はポスター用紙のようなものを丸めて持ってきて基地に現れた。

「みんなごめん、おまたせ。」

「どこに行っていたのさ」

 珠美にそう尋ねられると、柚月は荷物を机におろして答えた。

「畑の方に行っていたんだ。」

 これを取りにと彼女はポケットからハンカチで包まれた何かを取り出し広げてみんなに見せた。

「これって、ひまわりの種?」

「そう、ボクくん正解。うちの畑のとこに生えているひまわりあるでしょ、そこのやつ。去年とって乾燥させておいたんだ。」

 ハンカチに包まれたその一つをつまんでまじまじと見る。

「これどうするの?あと、そのポスター用紙みたいなのは…」

 私がそう聞くと、彼女はその一言を待っていたかのようににっこり笑った。

「実はね、やりたいことがあるの。」

 彼女の説明は以下の通りである。

「みんな翔太がここを引っ越しちゃうって聞いたの直前だったじゃん。だからなにもあげられてない。もちろん、何かあげることが大事だとは思わないんだけど、なんだろスッキリするって言うのかな、うまく言えないんだけどさ。」

「それなんだかわかるような気がする」

 珠美がそういうと私と涼は同意を示すように大きく頷いた。

「それでなにをするの?」

「みんなでねこの秘密基地の絵を描こうと思うんだ。」

 柚月は机にポスター用紙を広げた。

「ここに秘密基地の絵を描く。そして周りにみんなの名前を書こう。そしてこの種と一緒に送る。」

「でもおれらの中で絵が上手い奴なんていなくない?」

 涼が柚月にそう聞くと、彼女は私の方を向いていった。

「いるよ、ボクくんにやってもらいたい。」

「えっ!?僕に?」

 私は思わず聞き返してしまった。

「全部やってもらうわけじゃないよ。ただ下書きはしてもらいたいな。」

「よし、それではわたしの家に移動しよう!」

 柚月は私の同意を得ずにポスター用紙を丸めて歩き出し、他のみんなも歩き出し始めていた。

「ちょっと待って、流石に見ないで描くのは辛いかな。」

 自信がなかったので思わず引き止めた。

「うーん、確かにそっか。でも他にやらなきゃいけないことあるし、でもボクくん1人置いてくのもなぁ…」

「じゃー、おれ残るよ」

 涼が勢いよく立候補した。

「よしわかった、涼とボクくんは基地に残って下書き、わたしと珠美はうちにいって他の準備ね。」

 柚月はそう提案すると、皆承諾し各自行動に移った。

 いきなりポスター用紙に下書きするのは大変なので、とりあえずスケッチブックに模写することにした。

「涼、見てるだけじゃ退屈にならない?」

 私は思わず聞いてみた。

「ぜんぜん、寧ろ見てたいくらい」

「そっか、ならよかった。」

 私はそこから涼の存在を忘れるくらいの集中モードに切り替えた。そんな様子を涼はただじっと見守っていてくれていた。

 まだまだ暑い時期ではあるが、心はなんだか涼しかった。


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