目覚め
出来るだけ毎日更新にしたいなーっと思っています。
キンコン キンコン…
キンコン キンコン…
その音共に断続的な、電車のそれとは違った振動が私の身体に伝わってきた。
(電車の揺れなのか?)
まだはっきりしない意識の中、ゆっくりと目を開けてみた。すると映ったものは、車のグローブボックスのようなものだった。電車に乗っていないという驚きと自分の目線が低くなっている驚きからか私は声を出してしまった。
「うわっ?!」
そして、その発せられた声の高さにもまた驚いてしまった。まるで子どものような声だ。すると低いが優しさの感じられるような声で、運転していた男の人が私に話しかけてきた。
「やっと起きたか、もうすぐ着くぞ」
私はとっさに ダレ? と聞きたくなったが、一応大人であるためか(身体は子どものようだが)違う質問をしてみた。
「どこに行くんだっけ?」
すると男の人は少し笑いながら
「寝すぎてどっか飛んで行っちまったのかい?母さんが臨月で入院すっから、残りの夏休みは伯父さんのとこにお前を預けにいくんだよ。桜が丘にな。」
全く理解が追いつかなかった。私は電車の中で寝てしまったんじゃなかったのか。そう思いつつも状況を整理しようともう一度周りを見てみる。
今自分が乗っている車は内装などを見る限り、かなり古い車だということはわかった。さっきからずっと キンコン キンコン いっているのは確か古い車についていた速度警告なんちゃらってやつだと思った。テレビなんかでみたことがあるやつだ。そしてカーナビ、なんてものからではなく、カーステレオから流れてくる情報から察するに今は1980年代であることがわかった。
季節は先ほどの発言と、気温、日差しの強さから夏であるらしい。
最後に運転しているのはおそらく私の(私が借りている?)身体の子どもの父親で、母親は臨月という理由から親戚に預けられるその途中ということである。
(うーん、やっぱりわからないなぁ)
さっぱりわからない。確かなことは私はタイムスリップして、知らない誰かの身体を借りているという状況であるということである。しかもそれにしては感覚がリアルすぎる。というか本物だった。
そうやって私が深刻そうな顔をしていると父親(身体の主の)が声をかけてきた。
「やっぱり少し不安か?最後に会ったのは何年も前の話だしな。それに、お前は大人しい子だから馴染めないと思っているか?」
私は一応頷いておいた。
「大丈夫さ、伯父さんも伯母さん優しいし、なんせ年が一つしか変わらない女の子もいるんだ。うまくやっていけるさ。」
不安となぜ?で私は頭がいっぱいであったが、目的地に迫ってきているようである。
「よし、高速を降りるぞ」
この先何が起こるのか私にはまったくわからなかった。焦りなのかなんなのかわからなかったが、不思議と心臓が高鳴っているのを感じた。




