夏風邪
みなさん、風邪ひいてませんか?
ボクはひいてしまって喉がイタイです。
体調管理はきちんとしないといけませんね。
夜釣りから帰ってくると、“ボク”と柚月は泥人形のように動かなくなっていた。
足だけ洗って、布団へ直行して死んだように寝た。
若干の寒気を感じて目を覚ました。時計は0時を回っていた。
トイレに行こうと思い起き上がると、なんだか身体がだるかった。
帰り際に、皓の部屋の電気がついているのに気づきノックしてみた。中からどうぞと言われたので入る。
「あれ、ボクくんどうしたの?起きちゃった?」
皓はパタンと単語帳のようなものを閉じた。
「ちょっとトイレに行きたくなっちゃって。まだ勉強しているの?」
「まぁね。やらなきゃならないからさ」
あくびを一つしながら彼はかえす。
「ボクくんは勉強できる方?」
かれはベッドのほうに座るように促しながら聞いてきた。私には“ボク”のことはわからないので、自分はまぁまぁできるほうだったのでそう答えた。
「そっか、俺もなんだ。なんだかさ中途半端にできちゃうって辛いよね。それなりの高校行っちゃったらさ、それくらい頭のイイ大学にも行かなきゃおかしいじゃん?って考えちゃうようになるんだよね。本当に自分のしたかったことってなんだったんだろうなーってさ、つくづく思うんだよね」
私は何もかえさなかった。かえせなかった。
「こんなこと言っても仕方なかったね。ごめん、ごめん。もう寝な、おやすみ」
おやすみと彼に返して私は布団へと戻った。今度は頭もガンガンしてきた。
柚月に揺さぶられて目を覚ました。口の中の感じと全身の倦怠感から直感的に、夏風邪だなと思った。
「ごめん、柚月体調悪いみたい。今日は行けないや」
彼女は心配した顔で大丈夫?ときいてきたので、多分、と答えておいた。そのあと彼女は走って下の階へといった。その後、ぼんやりと天井の木目をみていると伯母さんがやってきた。
「ボクくん大丈夫?こっちきてから無理しすぎちゃったのかな?とりあえず熱計ってくれる?」
手渡された体温計を脇に挟む。その冷たさに一瞬びっくりした。ピピッと音がなり確認する。37.5℃であった。
「熱はそんなにひどくないみたいね。1日寝てれば治るかも。お粥作ってくるから、もう少し寝て待っててね」
そう言った後、“ボク”の頭を撫でて下へ降りていった。やっぱり、頭を撫でられたり、人に優しくされるとくすぐったい感じがする。普段の私にそんなことが起きないからであろうか?
約30分後、伯母さんはお粥と水をお盆に載せて持ってきてくれた。私が少し身体を起こすと、伯母さんは支えてくれた。
「まだ少し熱いかもしれないから、気をつけて食べてね」
ふーっふーっと息を吹きかけてからゆっくり口に運ぶ。おかかの優しい味がした。そのあともゆっくり食べ完食した。
「良かった、食欲はあったみたいで。またお昼になったらご飯持ってくるからそれまで寝てなさいね」
私は静かに頷き、横になった。そのあと柚月がこちらを伺いに来たけれど、うつるといけないからと言って部屋には入れさせないようにした。こんなに心配してくれるなんて嬉しい限りだ。
その後は1人、色々なことに想いを馳せながら床に臥しているとそのまま寝てしまった。
どれくらい経ったのだろうか、ゆっくりと目を開けると横には伯母さんが座っていた。
「あら、起きたみたいね。じゃー、すぐに準備してくるから」
そういってすぐに部屋を出ていった。どうやらずっとそばにいてくれたらしい。なぜなら伯母さんの膝には畳の跡がくっきりと残っていたからだ。
数分後、伯母さんはうどんを持ってきてくれた。これもまた出汁の味がよくでた美味しいものだった。そのあと伯母さんは頭を撫でながらいった。
「ボクくん、もうすぐお兄さんになるんだよね」
そう言われて、“ボク”がこの家に預けられているのは“ボク”の母の出産の準備のためだということを思い出した。
「お兄さんになったらお母さんに甘えたりとかしなくなるかもしれないね」
「なんで?」
私は尋ねる。
「皓がそうだったからよ」
話によれば皓は柚月が生まれてからというもの、親に甘えたりとかはしなかったようだ。
「きっと、お兄さんらしくしなきゃとか、しっかりしなくちゃと思ったのよね。それにこっちも赤ちゃんの方に忙しくなってあんまり面倒見てあげられなくなっちゃったのよね」
と漏らした。そして続ける。
「でも、あの子本当は甘えたかったんだと思うの。まだ小学3年生だったわけだし。そういえば今のボクくんといっしょだね。だってね、皓の担任から電話があって言われたことなんだけど、あの子、担任の先生に自分は愛されてないんじゃないかって聞いたらしいよ。そんなこと全然ないのにさ。だからさその時にね、私はあの子にそう感じさせてしまったんだって後悔したの。甘えてくれればこたえてあげたんだけどさ、自分からは行きにくいのよねきっと」
伯母さんはまだ頭を撫で続ける。少し恥ずかしくなってきた。
「だからね、ボクくんもちゃんと甘えなきゃダメよ。そんなこと担任の先生から言われるなんて親としては相当ショックなのよ。同じだけ愛しているのにさ。でもきっとお母さんを取られたとおもっちゃうのよね。そんなことないのに。だからそれだけはボクくんも理解してあげてね。」
私は頷いた。
「でもね、生まれてすぐの時期は本当に忙しくて、手をかけてあげられなくなっちゃうかもしれない。だから今、ボクくんのお母さんには全然及ばないと思うけど、おばちゃんが沢山愛情を注いであげるね」
伯母さんの手からしっかりとぬくもりが、優しさが“ボク”の身体に伝わってくる。暖かい。心的にもそうであった。人の優しさとはこんなにも暖かいものだったのかと疑うほどだった。
「さ、あとはしっかり寝なさいよー。じゃないと明日の夏祭りいけないからね」
そして伯母さんはまた頭を撫でてから、部屋を出ていった。短期間にこんなに頭を撫でられたのは初めてかもしれない。ちょっとこそばゆかったけど、なんだか嬉しかった。
私は一人っ子だったので、そういう感情には至らなかったけど、誰かに甘えたりすることは時には大事なのだなと考えることができた。と同時に大人は辛いなとも思った。だってそんな簡単に甘えたりなどできないのだから。
肌と心に温もりを感じながら再び横になる。そして、その気持ちのまま眠りに落ちた。
夜になると、熱は下がっていた。これなら大丈夫そうだ。
明日はいよいよ夏祭りである。どんな内容であるのかとても楽しみだ。
約二年越しに読み返してみると、稚拙な文章だなと自分でも感じます。
まぁ、たいして進歩していないんですけどね・・・




