スケッチ
今回はかなり単調な感じになってしまいました。
ご了承ください。
いつものようにラジオ体操を終え、5人で話しながら校門へ向かう。お盆真っ只中だからだろうか、ラジオ体操の参加者は少ないような気がする。
「いよいよ明後日になったね」
「そうだなー、準備も大詰めって感じだよ」
と柚月と翔太が話をしているので、何の事なのか尋ねると涼が横から
「夏祭りの事だよ」
と言ってきた。
そのあと4人に詳しく聞いたところ、柚月たちの通っている小学校ではお盆最終日に学校で夏祭りを開催するらしい。準備は6年生がクラスごとに役割を分担し、1学期から始まるそうだ。それのために翔太はここ数日遊びに参加しなかったのだ。
「参加できるのはこの小学校の人とその親族とか友達だけなんだよ。だからボクくんも参加できるよ」
と珠美は付け加える。
「ふーん、そうなんだ。ねぇーねぇー、どんなことするの?」
「校庭には何個か屋台が出るよ。あと、駅前の焼き鳥屋さんもきてくれるんだ。それで、もちろん櫓も組んで盆踊りもあるよ。でもさ、一番の目玉はなんつたってお化け屋敷さ。学校全体を使ってやるんだから!」
と少々興奮気味で翔太が答えてくれた。
「そろそろ大詰めだから、先帰ってまた準備しなきゃ。じゃーなみんな、今日も行けないからー」
翔太はそう告げると、ダッシュで帰っていった。
みんなの感じといい、かなり面白そうなものだと思ってワクワクした。
「さてと…」
朝食をとり終えて、私は車庫のちょうどいい場所に脚立を置いて、それにまたがった。
今日の午前中は柚月は夏休みの宿題をやるとのことなので、先日伯父さんに 俺の車も描いてくれよ と言われたので早速やってみようと思った。
まずは全体のバランスを取る為にタイヤを描く位置を決めて、順に全体像を追っていった。
何度も消しては夢中で描き続けた。
細かい調整を終え、下書きが完成した。書き始めてから1時間もかけてしまっていた。でもその為か小さなキズや少しくたびれた感じをうまく表現できたと思う。
その後、母屋に戻り、輪郭を黒の色鉛筆縁取りその後、丁寧に色塗りをしていたところへ柚月がやってきた。
「ボクくーん、何してるの?」
「あっ、柚月終わったの?今はスケッチをしてたとこなんだ」
どうやら今日の分は終わったらしく、私の様子を見にきたらしい。
「うわ、これうちのトラックだよね?ほんとに何でも上手に描けるんだね!」
「そんなことないよ、これはあるものそのままを描いてるだけだし。」
一応、謙遜してみた。なんだか恥ずかしい。
「いやいや、わたしなんて同じもの描こうとしたって途中でグニャってしちゃったり、何だかわからなくなるもん」
と彼女は笑いながら言った。
その後も黙々と色を塗り続ける私の横で、柚月はじっと、固唾を飲んで見守っていた。
「で、できた」
「写真みたいな絵ですごいね」
と手をパチパチしながら彼女は褒めてくれた。
「いいなー、わたしもなんか自分の得意なこと見つけたいなー…皓兄にもよく言われるんだ。何か一つ得意なことがあるといいよってさ。こう言うのを芸は身を助けるっていうんだっけ?」
そうだよ、と返すと少し満足した顔をして
「そうだ、早くお父さんに見せに行こうよ。きっとびっくりするからさ」
彼女は私の返事も待たずに、手を引き玄関へと駆けて行く。
少し自信はなかったが、かなり満足できる仕上がりなので、どのように評価されるか内心楽しみだった。
頭上には雲ひとつない青空が広がっていた。




