伯父さんとボク
少し間空きました。すいません(^_^;)
夕日に照らされながら、柚月とともに秘密基地を後にして家路に着いた。
長い影が伸びている。切っても切り離すことはできない自分。まだ日中の熱さを蓄えたアスファルトに小さな“ボク”の影が浮かび上がる。その中に私を見た気がした。
柚月はこうして帰るとき、いつも少しだけ間隔をあけて歩く。それは照れなのかなんなのか、わからないが時折振り向いては私が着いて来ているか確認している。そして少し立ち止まって、距離を縮めて「8月ももうサンブンノイチ終わっちゃったんだね」と言った。
うん、そうだねと私は返す。
「あのさ、夏休みも残り日数が少なくなると時間が経つのが早く感じない?あれってなんでだろ。カウンドダウンをしちゃうからかな?」
そんな感覚、とっくに忘れていた。確かに子どものころは時間の進む速さはコロコロ変わった気がする。楽しい時は一瞬だったし、授業の残り五分はとてつもなく長く感じた。
「なんでだろ?ぼくもわからないや」
そういってとりあえず誤魔化しておいた。
その後夕食を済ませ、午前中のお礼を改めて言おうと伯父さんをさがした。家の中にはおらず、伯母さんに尋ねたところ、ガレージにいるかもよと言われたので向かってみると、ガレージでパンプキンのボンネットを開け、顔を突っ込んでいる伯父さんがいた。
「伯父ちゃん、今日はありがとう。とっても楽しかったよ」
「なんてことないさ、いい経験ができたならそれはよかったよ」
伯父さんのすぐ横にある作業台には様々な工具が並んでいた。
「ねー、伯父ちゃん今は何を修理しているの?」
「今はね、ラジエーター周りをいじってるんだ。少し調子が悪くてね」
と言われてもイマイチわからなかった。伯父さんは続ける。
「手間はかかるんだけどね、好きだからさ。これをしている時が二番目に生きてるって実感するんだよなー」
生きていると実感する。その言葉は私の胸に突き刺さった。
「じゃー、一番目は?」
「一番は野菜作ってるときかな」
「なんで?」
「なんでって言われてもなー、直接生きることにつながるからかな。それで儲けたお金で生活しているわけだしね。実感が湧くんだよ。君のお父さんはサラリーマンで、会社のために働いてお金をもらってると思うんだけど、俺にはそれはしっくりこなくてね。一応大学には行ってたし、サラリーマンになる道もあったんだけどそうはしなかったんだ。何のために働いてるか見失いそうって思ってね、だから農家やってるんだよ」
なるほどそんないきさつがあったのか。てっきり、ただ家業を継いだだけだと思っていた。人の生き方とは様々であると改めて実感した。目的意識がはっきりとしている農家などの職業は、生きるために働くという感覚が強く感じられるのだと思った。
「それに好きだからってのもあるかな。あの土の匂いなんだか好きなんだよね。嫌いなことはやってらんないよ」
好きなことを仕事にするか・・・そんな考えを捨ててしまったのはいつだったのだろうか。
自分自身の答えに繋がる良い手がかりを得ることができたからか、はたまた農作業の手伝いで疲れたのか、その日の晩は深い眠りへとつくことができた。




