俺の力なんてありえない!
前回の『異人』というのを『亜人』に変えました。
修正はしてあります。
その神は……ハデス。
「ポセイドンはハデスを知っているんですか?」
「儂か?ああ、知っておる。彼奴は神の中でも三番目の強さを誇っておる」
ポセイドンはさらに、と話しを進めて行く。
どうやら俺の勘は当たってたらしく、ハデスは昔冥界の王として昔から名を轟かせていて、その三番目の強さというのは飽く迄も地上での話らしく、本当の強さは誰も知らないとか……。
大悪魔に冥界の王、ここまで来ると俺にも何となく察しが付く。
「もしかして、サタンはハデスの国に居ると?」
「ああ、儂の予想の中ではな……」
「ちなみに、ハデスは神々の集いには参加してたんですか?」
「ああ、地上の国はともかく、冥界での国では大王だからな」
「サタンとハデスの関係は?」
「儂も冥界については調べようも無いのだが、サタンもハデスも冥界ではビックマウスらいしぞ」
というと、良くも悪くも何らかの関係はあると見られるな……。
はあ……俺は異世界に来てからというもの、物騒で難しい話ばっかしてるよな……。
俺が自分の置かれてる状況に少し呆れていると、ポセイドンが
「儂は手伝えないのに任せてすまない!」
と、言ってきたので「大丈夫ですよ」と返してやったら「さすが異世界人」と言われた。
さっきから、一つ気になる事がある。
「あの……ポセイドン、異世界人とはそんなに凄い事何ですか?」
確かに珍しい事は珍しいのだと思うんだが、そんなにさすが、さすがと言われるとプレッシャーが掛かる。
それに、神様が言うには何かしらの才能があってもそれらしい力は与えて無いらしいし。
「勿論である!事例もあるが、それの全てが伝説であるからな。逆に言えば異世界人は皆伝説級なのだ!」
いや、そうとも限らないんじゃないですか?
もしかしたら何の力も無しにひっそり暮らしてる人もいるかもしれないですよ。
それに……
「そもそも俺には何の力なんて無いですよ?」
「おぉ、お前さんには大した事無いだろうがお前さんの力はこの世界じゃあ大したものじゃからな」
ん?俺の力?そんな物無い筈なんだが……。
「分からんのか?あぁ、そもそも儂の力を教えてなかったのぅ」
「ポセイドンの力?」
「そう、海神ことポセイドン、我の力は……『自然の怒り 海』と、『真の心眼』じゃ!!」
ポセイドンは目の前に向けて指を指し、キメ顔をし、なんかドーンッと音も鳴った気がした。
真剣な話とはどこに行ったのやら……。
「自然の怒り?真の……何でしたっけ?」
「真の心眼じゃよ、ま・こ・との。これで御主の力が分かったんじゃよ」
「はぁ……で、どんな能力が分かってるんですか?」
「もう隠さなくとも良いものを、まあ儂が分かった能力は『海王の力』という儂の力に似た水を完全に我が物にする能力じゃろ?」
海王の力?そんな物知らないぞ?まあそれを言っても問題は無いだろう。
「そんな力知らないんですけど……」
「……何?しかし、その力は見るからに強大だぞ?自らで気付かぬ訳が無い」
え?そんなの……知らない……筈?いや、確かに覚えている。このポセイドンに魔法を掛けられた時に俺は何となく水に関して何かを感じた気がした。
飽く迄気がしたってだけだからな?
「本当にそんな力が俺にあるんですか?」
「ああ、しかし何故初めて会った時に溺死しかけておったのじゃ?」
それは俺が知りたい。
「いいえ、その時は確かに溺死仕掛けてました……あの時俺に掛けた魔法ってどんな魔法なんですか?」
「ん?海の息の魔法か……あれは儂が独自に編み出した魔法で、あの魔法を掛けられた人間は水中でも不自由が無く生活出来るようになるという物なのじゃが……」
「なるほど……前に誰かに掛けた事は?」
「あるとも、その時も溺死しそうになっておった所を助けたのだ。その時は思ってた通りの効果であったが」
……まあ、これは飽く迄俺の予想だが、俺に何らかの魔法を掛けると、俺はその効果を何倍にまでもして受けてしまうということだろうか。
神様なら何か知ってるだろうか……どうすりゃあえるんだっけ?『神様お助けください』だっけ?
後で聞いてみるか。
「分かりました。ですが、今の俺はただの人間だと思っていて下さい」
「そ、そうじゃな……」
「では、作戦会議を続けましょう」
「よし、それでそのハデスの国なのじゃが……」
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俺は暗い深海の中、少し大きめな部屋の大きなベッドに横たわっていた。
あの後も俺達はサタン討伐に関する作戦会議をしていた。
基本情報は初めて知るものだから大体の時間を俺の質問タイムに当ててしまっていた。
その中で纏めた事を一から整理すると、まず今いるこの海底帝国はこの世界の五分の四を覆う大洋のど真ん中の海溝の途中にあるらしく、他の国は基本諸島の集まりで形成されてるらしい。
俺は案外この国が凄い事に気が付いた。
少し難しい話だが、神々の間では領海等の協定も定めてるらしいし、隣国と起こるかもしれない戦争というのも、どうやらこの国が他の国の領海に忍び込んだという噂が立ったかららしい。
そして、新たに作られたハデスの国は最近活発化した深海火山によって出来た島らしく、此処より北東にあり、距離としてはポセイドンの高速水泳の力で二日程行き、普通の船だと一週間程度。
途中に物資購入で立ち寄ったりする事なども含め、早くても一週間と3,4日程度。
もしかしたらこの惑星のほぼ裏側なんじゃ無いかと俺は予想する。
しかし、ポセイドンが言うには俺の海流を操る力を使えば五日で着くとか……本当か?
俺はその事を思い出したのでベッドから起き上がった。
「俺の力か……」
試しに手を前に出し、何となく力を込めてみた。
すると、この部屋の中の水が少し変化した気がした。
俺は少し調子に乗ってさらに力を込めてみた……あれ?
辺りの空間からねじ曲がったかのように水圧が掛かってくる。
俺は耐えながらも必死に部屋のドアを開ける。
その瞬間半開きのドアが大きな音と共に思いっきり開き、俺は目の前に吹き飛ばされた。
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……目を開けると前にも見た事のある花畑に寝ていた。
そして、そんな俺を覗き込むかのように見てくる白い服の美少女も見えた。
可愛い……って、神様か。
俺はそれに気付いてすぐに体を起こした。
「神様……俺は一体?」
「何も問題ないわよ。現実世界では気絶してるだけだから」
神様は前会ったときと同じくツンツンみたいな感じで言って来た。
「無茶し過ぎよ……」
「ははっ……って、俺のあの力は何なんですか!?」
「先に行っておくけど、私はあの世界の歴史位しか知らないわよ?」
「え?それじゃあ、俺の力については分からないんですか?」
「いいえ、あなたが分かった事や体験した事に関しては基本あなたよりも分かってるつもりだから……
で、あなたの『海王の力』だけど、どうやらポセイドンに魔法を掛けられた時に宿ったみたい」
「やはり……」
「ええ、あなたの考えた通り、あなたは自分に掛かった、言わばバフ的な物の効果を何倍にでも出来るわ」
「へぇ〜、って何でそんな事知ってるんですか!?」
「ふふっ、で、後もう一つ能力があって……」
笑って誤魔化された……だが可愛い。
「もう一つの能力?」
「ええ、さっきの能力とは対称的に、呪いや精神攻撃に対し少なくともポセイドンよりも耐性があるわ」
「その二つなんですか?」
「ええ、ちなみに前にあなたを異世界に送り出す時に洗脳を仕掛けたのは分かった?」
っち、やっぱりそうだったのか。
可愛い顔して怖い事をしてしまう神様だな。
「何やってくれてんですか!」
「その時だってあなた簡単に解除してたじゃない。無意識に」
そうなのか、俺って結構凄いんだな。
いや、慢心になったり傲慢にはなってはいけないな。
「さぁ、そろそろ戻らないと大変な事になっちゃうわよ」
「そうですね」
「それじゃあ戻すわよ」
神様が俺に向かって何か唱えてる。
そして俺の体が少しずつ消えて行くが、二回目だし慣れただろ。
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目を覚ますと、俺の後頭部には柔らかい感覚、目の前には二つの山と可愛い顔……クララさんだ。
いつ見ても可愛い……って、また変な事を考えると神様にバレそうだ。
全く、プライバシーの侵害にも程がある。
クララさんは俺が目を開けたからか喜んでいる。
「クララさん、助けて頂き、ありがとうございました」
「いえ、別に問題ないです」
クララさんは顔を赤らめている……あんな変な事言わなきゃ良かった。
「それよりも、カナタさんは問題無いのですか?」
「ええ、特には何も。ちょっと力の加減を間違えてしまって……」
「え?あれって本気じゃなかったんですか!?」
クララさんが思いっきり顔を近づけてくる。
そんなに凄い事なのか?
早くもカナタの能力が分かってきました!
しかし政治的問題は難しくて下手に扱えないですね。