大悪魔とかありえない!
「それでは、儂の人生相談を始める……」
ん?今何て言いました?
俺の耳が異世界に慣れてないならば、俺は会って間もない小父さんの人生相談をする事になるのだが。
だが、その目には眩しい程の希望が見えた気がする。
「じ、人生相談とは……?」
「いや、あのな?実は、クララは儂の娘なのじゃ」
ポセイドンは前に見たよりもさらに弱々しい態度で言って来た。
まあ、俺も薄々勘付いてはいたんだがな……とりあえず……。
「そ、そうだったんですか!!」
「本当は気付いておったくせに……」
なんなんだよ!驚いて欲しかったんじゃないのかよ!!
この、ジジイ……ま、俺も寛大だからな。
「どっちなんですか!」
ちゃんとツッコミを入れてやると、テヘ!みたいな感じで誤魔化して来た……可愛くないっちゅーの!
「まあ人生相談とは半分冗談で、此処からは真剣な話しなのだが……」
つまり、今までは真剣じゃ無かったってことですか?
……今は触れなくても良いか……。
そう俺が考えていると、ポセイドンが遠くを見るかのような目で語って来た。
「儂の娘であるクララは、その昔……150年程前じゃったか。その時のこの国の建国記念日の式典の際に、調子に乗って呼んでみた『大悪魔サタン』によって呪いを掛けられてしまったのじゃ……」
『大悪魔』をノリで呼ぶとか……150年前とか……とにかく色々知りたい事も沢山あるのだが。
「それは、どんな呪い何ですか?」
「その呪いとは……『恐れの呪い』じゃ」
「恐れの呪い?」
「あぁ、恐れの呪いとは全ての人に意味も無く恐れられてしまう呪いなのじゃ」
なるほど……前の世界ではラノベとかでも、人に嫌われてしまう呪いとかあったよな。
確か、そうゆう呪いを持った奴って大抵「運命」とか言って悲しく生きてた気がするのだが……。
まあ、これでポセイドンが俺に対してクララを匿まってるとか、怖くないのか、とか言って来た理由が分かった気がする。
ん?でも待てよ?この国の場合……。
「でも、その呪いは『人間に』って事なんですよね?」
「ああ、儂らは人間じゃないし、国民も魚人であり、全く問題のない筈なのだが……」
「……なのだが?」
そう、この国の国民が皆水中で生きるのに特化した『魚人族』である事はさっき聞いていた。
そして、そういった者達は地上で生きる者とは違う『亜人』と呼ばれる事も知った。
そういう、種族の違いによる差別とかは前の世界だと争い事に繋がっていたのだが、実際この世界では互いに気にしていないらしい。
それで、何だっけ……?
「実は、二年前から、国民……つまり亜人にも怖がられるようになってしまってな……」
「え?人間にしか嫌われないって言ったのはその……『サタン』ですよね?」
「ああ、その通りなのじゃが……無論それが本当なんて言われてないからな」
それって最低じゃないか!クララちゃ……さんが皆に嫌われるなんてありえないだろ!!
ってか、ポセイドンがまるでリストラされたサラリーマンのように見えて来た。
見た事なんて無い筈だが。
「ちなみに、その呪いとは日に日に強くなってたりとか?」
「ああ、その通りなんじゃ!儂には止められんのじゃよ!このままだと国民は疎か、昔から付き添っていてクララとも親しかった家臣や、最悪、儂までもが……いや、それ以上は考えない事にしておったのじゃ」
ポセイドンは、少し涙で目を潤せながらも、必死に訴えて来た。
俺のこの世界での目的は世界の救出だが、これも入ってくれるだろうか。
なんせ、神様は『探れ』としか言って来なかったし、だったらこれもその内に入るだろう。
「陛下?」
「陛下?呼び捨てで構わんぞ」
「えっ、じゃあ、ポセイドン、どうすれば呪いは解けるんですか?」
「どうせなら、敬語じゃなくても構わんのじゃが……
え〜、呪いを解くには二つの方法が存在する」
ポセイドンはそう言いながら二本指を立て、机をドン!っと片手で叩く。
教えてもらった方法は二つ、まずその呪いに対する魔法、もしくは解除魔法を探すこと。
もしくは、術を掛けた術者か、掛けられた者を殺すという方法。
前者は穏便に済ませられるが、悪魔と言えば魔法の本場、増してはその悪魔のボスのような者の使う魔法への解除魔法やそれに値する魔法などほぼ無いらしい。
勿論、ポセイドンが部下と共に150年探した結果から言えた事だ。
そして後者だが、正直こっちの方が可能性はある。
掛けられた側を殺すという意味ではなく、サタンを討つという意味だ。
ポセイドンが言うには、見つけられさえすれば自らの手でサタン如き簡単に殺せるらしいが、どうやらサタンは悪魔の中でも最も身を隠すのが得意らしい。
そもそも姿という姿が無いみたいだからな。
なんて厄介な奴と事を構えたんだろうか……しかし、その方法が一番早いらしいし。
勿論ポセイドンも討伐人数の頭数に入れて、俺がどのようにして見つけようか思案してる時。
「すまないカナタ!」
「えっ?と、突然どうしたんですか!?」
「実は儂、隣国との戦争が近くてな……サタン討伐は参加出来ないのじゃ」
「はあ?それじゃあ、誰がサタンを倒すというのですか?」
そうさ!ちゃっかり俺もポセイドンが強いらしいからと完全に戦いには安心してたってのに。
ってか、何してんだよ!?
「なんでこんな時にそんな事起こしてるんですか!?」
「そう、そこなんじゃよ!?」
ポセイドンは『よくそこに気付いた!』みたいな目で言って、説明して来た。
どうやら、『神々の集い』というものがあるらしく、そこでは全ての神が集まって今後の世界の方針とかを会議で決めたりするらしい。
そこで前に出た議題の中で、どうやら様々な国の中で混乱が起こったりしている、っていう話題が持ち上がったのだとか。
そして、それが皆が言うに二年前……。
これはクララが異人に怖がられ始めた時期と被っている。
さらに、全ての神が皆口を揃えて唱えた人物が、大悪魔サタンであったらしい。
ここまで来たら偶然じゃない、唯事じゃない、とポセイドンは考えた。
そこに、今回の戦争もどうやら裏でサタンが関わってるとか……。
俺からしたら俄に信じがたい話しだ、だって一人の人物がそこまでできるのか?
ポセイドンからの答えは 『YES』サタンなら遣り兼ねないことだとか。
だとしたら、そんなに目立ってるサタンが見つかってないのはなぜか?
ポセイドンからの回答はこれまた簡単で、どこかの国か王族が匿まっていることらしい。
確かに、そんなに目立っておいたら流石のサタンでも自分一人では隠れきれないだろうと。
俺が今言われた事を整理しようと頭をフル活用してると、さらなる謎をポセイドンが言って来た。
「カナタ、さっき一つだけ言い忘れてたのだが全ての国はそれぞれの神が治めてるのじゃ」
それに関しては何となく思ってた、そうなると、神々の集いは国連みたいなものだろうか、よくは覚えてないが。
俺はそう考え、ポセイドンに言葉を返す。
「えぇ、それで?」
「それがだな、最近、もう一つ国が増えたのじゃ」
「ほほぅ、いつに?」
「一年と半年前じゃ。さらに、その国の王、つまり神は……『ハデス』じゃ」
ハデス……か。
俺も薄々勘付いたのだが、どうやらこの世界の神はギリシャ神話の神々っぽい。
そしてハデス……ゲームやラノベ等と同じならば素人でも分かる事。
その神は……ヤバい。
色々と単語が出て来て正直追いつかないのですが、後々処理されます……多分。