溺死とかありえない!!
ウゥ……何か寒いな。
どれくらい眠っていただろうか。
少し目が開けにくい気がする。
目覚めなんて誰もがそのような物何だっけっか。
ただ、今の俺が考えられるのは、ここが本当に異世界かどうかってことだ。
ていうか、何だ?さっきから肌がものすごく寒い、いや、寒い所じゃないぞ?てか息苦しい。
いや、何か危機感を感じる……俺は急いで目を開けて驚いた。
目の前に巨大なタコがいた!!それはもう悍ましく巨大で、とんでもない恐怖心を煽られた。
いや、それよりも問題なのが……ここって水中じゃないか!?
まあ、通りでこんなにも寒くて、息苦しい訳なのか、体も気怠いのではなく水中だったから重かったのか。
いやいや、納得してる場合じゃないでしょ!?どうなってるんだよ俺?
てか、これはもう死ぬ未来しか見えないのですけど……。
いやいやいや、こんな所に送り付けた神様も殺す気なのかよ!!
ははっ、本当に終わりなのかもしれないな……。
でもまあ、こんな巨大なタコは多分、少なくとも……地球にはいないだろうな……。
てことは、やっぱりここは異世界なんだな……ちゃんとした確証が持てたな。
そして、やはりというかなんというか、意識が朦朧としてきた気がする。
にしても、こんな状態の俺を捕食しようとしないこの大ダコもよく仕付けられてるんだな。
「おぉい、大丈夫か?お前さん」
え?誰が仕付けてるかって?そりゃ、今目の前で俺に喋りかけてる厳つい感じのおじいさんとかだろう。
「おい!しっかりしろ!!クララ、槍を持って来てくれ!!」
ん?槍?何の話しだ?もしかして俺を助けようとしてるのか?それはありがたいが、できれば槍なんていう危なっかしい物は遠慮頂きたい。
って、いつの間にかさっきの大ダコが槍をニュルッと持ってきていた。
それをこの爺さんに渡したかと思ったら……思ったら?ってちょ!?その槍を思いっきり俺の眉間に構えてるんですけど!?俺は悟った、殺される、と。
必死でもがこうにも動かねえし、この爺さん、槍を構えたまんまだし、どうすりゃいいんだ?
すると、爺さんが何かを唱えている。
「アーテム・メーア!息よ、海と共に吹き返せ!」
あー、あれか、魔法の詠唱的なものだったのか。
ここが異世界ならそんな物もありえるのかもしれないな……って、いつの間にか体が楽になったな。
それに、寒くなくなったし、息苦しくもなくなった!やった!!俺は、生きている!!
とりあえず、今この状態をどうしようか……目の前には遣り切った感満載な爺さん(多分俺を助けた)が俺をジーッと見つめている。
さすがの俺も、ここで歳の差ボーイズラブをやるつもりではないし、相手もそんな事望んでないだろう。
だが、とりあえずこの人の御陰で俺は一命を取り留めたのだ。
「助けて頂き、ありがとうございました」
凄い楽になった水中で俺は軽々と立ち、そして深く一礼をした。
立った時に視界に映ったのだがどうやらここは水中の建物の中らしい。
床の質感や壁が人工物っぽかったしな。
あと、やたらとこの爺さんが俺を見て驚いてる。
そりゃ、いきなり現れたんじゃ無理も無いか……っていうか、この爺さんは水中だっていうのに余裕そうだな。
まあ、さっきの魔法っぽい物もあったし、驚きはしないな
「おぅほぉっほぉ、例には及ばん。それよりも、お前さんはわしを見ても驚かんというのか?」
なんだ?驚くって……もしかしてお偉いさんなのだろうか。
いや、そんな人がこんなところにいるわけが……って、異世界に来た以上、何が起こるか分からんし、物事はあまり断言しないほうが良いだろう。
とりあえず、こういう時はなるべく相手の機嫌をを損ねないように……。
「いやいや、命の恩人に驚くなんてしませんよ!」
「そうか!面白い奴じゃのう!!」
この爺さん、そのまままた『おぅほぉっほぉ』って笑ってやがる。
サンタクロースか!ってツッコミたくなるぜ……。
だが、今の俺があるべき立場としては……旅の者?だとしたら、怪しまれたら即アウトだな。
流れ着いたもの?余計怪しいな。
「まぁまぁ、座りたまえよ。『旅の者』よ」
おぉ!ナイス勘違いだな、サンタ爺さん。
グッジョブだ!
それにしても、なんとかやり過ごさなくては……少なくともだが、このサンタ爺さんの素性をちょっとは知るまでは。
「いやぁ、すみません……つい、うっかりで〜」
「ほぉう……ついうっかりで海底1,6kmまで何の準備もなしに飛び込んできたわけよのぅ?それはまたとんでもない命知らずなもんだな!おぅほぅっほぉ!」
なんだか背筋が凍ったような気がした。
これで聞くサンタ笑いはとても怖いな……。
このサンタ爺さん、何も考えてないようで実は結構できるんじゃないのか?
だがしかし、どうしたものか……嘘もバレたし、だが悪い奴ではなさそうだな。
殺そうと思えばさっきのまま放置してれば死んだんだからな。
やはり本当の事を話すべきなのだろうか?いや、こういう時に『異世界からやって来た』とか言い出すのは俺の記憶の中ではタブーだったからな……どうしたものか……。
てか、ここって海底1マイルだったのか!?
「まぁ、冗談はこの位にしようではないか、若者よ!」
俺はさっきの事もあってか用心深く奴の目を見てみるが……この酔っぱらったかのような目に、なんだか俺までも気が抜けて来た気がする。
「あ、あの……」
こうなったら、全部聞いてやろう。
どうせ今後もこんな事たくさんあるだろうし、ここでダメだったならそん時はそん時でもう静かに暮らせば良いのだ。
……まぁ神様には悪いし、そんな上手く行く保証もないが……。
「俺を殺す……とかありませんよね?」
あぁ、怖い!!こんなの地球じゃ味わう事もできないだろう。
いや、案外営業課のサラリーマンとかはよく味わってたり……これもよく知らないのだが。
このサンタ爺さんはまた笑いやがった。
「……まさか!?そんな事する訳無かろうに?それともそんなやましい理由とかがあるのかな?」
なんだ、この爺さん、むかつくぜ……。
「いやいや!そんな考え、微塵とも無いですって!!」
一応無くはないが……まぁ世界を救うのだからやましくはないだろう。
ん?そうか!だったらもうそんな事話しても良さそうだな、相手もこういう場なら少し位は分かるだろう!そうだったのだ、始めから何を悩んでいたのだ俺は……。
「ですが!」
「うむ?どうしたのだ?」
「俺は……世界を救いにやって来たのです!!」
あぁ、言ってしまった……大丈夫だろうか。
どうなるんだ?……俺……。
ちょっと書き方を変えてみました。