これが初デートとかありえない!
俺はクララさんの手を引いて街の騒がしい露店街に行った。
正直この街の露店街は熱気がありすぎて毎日お祭り騒ぎで、手でも握っとかないと離れちゃう訳であって……決して意図的にやった訳ではない!!不可抗力なのだ。
「クララさんっ、手を離さないで下さいね?」
「は、はいっ!」
クララさんは例のローブが開けて肌を晒さないように気をつけながらも、俺の手をしっかりと握ってくれていた。
ここまで来ると、周りの奴らを消したくなるが……何故か感謝してる俺が居たのはやはり気のせいだ。
とても興味津々に周りを見るクララさんを見てると、少し不安になりつつも、来させて良かったと思える。
まるで我が子を見守るかのようだ……そんな経験無いけどね。
「クララさんどうですか?」
「もう、ワクワクが止まりません!!」
どこかで聞いた事があるような言葉だが、そう聞けて嬉しいよな。
さて、連れ出してここまで来たのは良いが、クララさんにとってはあまり知らないが多分初めての人間社会、良い思い出を作りたい。
どうしたものか……そうだ、何かプレゼントを買って上げよう。
前に通った時にも良さそうな物が色々とあったし、売れてなければ買えるだろう。
「クララさん、何か欲しい物はありますか?」
「買ってくれるのですか!?」
「当たり前ですよ!!」
クララさんの顔はフードで良くは見えなかったが笑顔が見えたような。
「何にしましょうか……」
可愛い声で考え事をしているクララさんは可愛い、可愛過ぎる。
しかし、金はあるとしても何が欲しいと言うのか、これでクララさんの趣味や好きな物が分かるだろうか。
やっぱり女の子なのでアクセサリーとか、甘い食べ物とか……。
アクセサリーはともかく、この世界の食べ物は日本には劣るものの、結構美味しかった。
水中であのレベルなら、地上では……でも露天だからな……いや、クララさんが欲しいと言ったものを探せば良いんだ。
そう頭の中で決めていると、クララさんが『ウンッ』と頷いた。
「クララさん、決まりましたか?」
「はい、色々悩んだんですが……杖にしようかと」
「腰でも悪いんですか?」
「そっちの用途じゃありませんって!!」
ツッコミをするクララさんも可愛い。
「杖って言うのは、魔法を使うのに欠かせないアイテム何です」
クララさんは人混みの中でもスラスラと説明をしてくれた……要するに。
この世界には魔法があります、これは良いよな?それで、その魔法は人の肉体から直接放つ事も出来るのだが、そうなると体への負荷により消費する魔力量や威力も下がってしまう。
案外魔法とは諸刃の剣みたいなところがあるらしい。
そして、そんなデメリットを解消し本来の力を引き出せるのが、魔法の杖と言う事だ。
そういえば前に、人間で魔法を使えるのはヤバい奴らと言ったが、ある程度の人間でも弱いものなら使えるらしい。
「……分かりましたか?」
「えぇ、何となく」
「それじゃあ、行きましょう。どっちに行けば良いんですか?」
何時の間にか手を引っ張る役がクララさんになってしまっているが、どこに行くかも知らずに行くのは無謀過ぎるぜ。
とにかく、前に杖らしき物が売っていた所は……。
俺は記憶を辿り、方向音痴でない筈な自身の脳内マップにより位置を特定する……鎌倉時代並みのマッピングだが……。
思い出した、今の方向と真反対だ。
「さあ、行きましょう。カナタさん!」
「すみませんがクララさん、こっちです」
「えぇ!ちょっと……」
クララさんを無理矢理引っ張って、連れて行く。
間違えなく杖であろう物が沢山置いてあり、禍々しい雰囲気を放っている。
そんな前見た店に着いたが、看板を見たら『杖』とあったし、やっぱり魔法の杖の店らしい……安心した。
何か名前が胡散臭いのだが。
店内には、見るからに魔女っぽい黒いローブを着た婆さんが座っていた。
「やぁ、お嬢ちゃんいらっしゃい……」
「お婆さん、ここは杖があるんですよね?」
クララさんが問答無用で聞きに言った。
てか、クララさんが魔法を使えたなんて知らなかったんだが。
「あぁ、お嬢ちゃん。ここは列記とした魔法の杖のお店じゃよ?」
「良かったです、という訳で、このお店で一番の杖を持って来て下さい!!」
無礼すぎる程にすごいテンションの高いクララさんに対してさも当然かのように対応してみせるお婆さんは良く出来たものだ。
まぁ、逆に言えば余計に胡散臭いと言えるが……。
「お嬢ちゃんはどんな杖が良いんじゃい?」
お婆さんは店の壁に一杯置いてある杖を一つ一つ見ながら、クララさんに聞いて来た。
「えぇ〜と、無属性のユニコーンがベースで……あと、光属性のもあると良いですね」
そんな専門的用語ばかりを掛け合ってる二人に、俺は着いて行けねぇよ。
少し時間が経ち、お婆さんが意をけっしたかのように一つの杖を持って来た。
「これで良いかい?」
「これは……凄い!ユニコーンの角が芯とされているというのにも関わらずグリフォンの爪まで混ぜられている。って、この木って!?」
「そうじゃよ……」
「黄金の林檎の木ですか!?ど、どうやって!?」
「それは企業秘密じゃな」
「凄過ぎます!」
お婆さんが何かウザいように笑っている。
でも、本当に凄いんだろう。
ちなみにこれは余談だが、クララさんはずっと部屋に引き籠もってた最中は、ポセイドンに頼んで只管勉強してたらしい。
「これ買いたいです!幾らですか?」
「そうじゃな……千五百ウィーゴと言った所じゃな」
千五百ウィーゴ!?それって、宿屋三十泊分に相当するじゃねぇーか!!
いや、紫十五個分だろ?出せ無くは無いが……ここでそんな使っていいのか?騒がれたり……。
「しかし、お前さんは記念すべき第一のお客さんじゃから、二百ウィーゴに負けてやろう」
「えっ!良いんですか!?」
クララさんはそう言って俺とお婆さんを交互に見た。
何となく笑ってやって、そのままポケットから二枚の紫ウィーゴを取り出した。
「お婆さん、これで大丈夫ですか?」
何となく確認しておく、そんなに負けて大丈夫なのか?
カナタ君のクララさんLOVEが止まらないです……。