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俺の為の異世界救出  作者: 優しい鼠
一章 冒険準備
14/25

着いて来るとかありえない!

 さて、どうしたものか……。

 俺は一週間にも及ぶ修行の為にも、まずはゼウスの用意してもらった部屋へと持ち込む物の準備をしていた。

 潜水艦の倉庫はそれ程荷物が多く無く、あっても食料とこの世界での日用品や、何が入ってるか分からない木箱や大きな袋位があるだけだ。

 取り敢えずこの大きな箱とかの中身は説明されてないので、俺が一つ目の箱に手を着けようとした瞬間、その木箱がゴソッと動く。

 ななな、何だ!?スパイか!?いや、案外中身が落ちただけなのかもしれないな。

 俺はこの世界に来てからと言うものあまり危険に触れずに来たせいか、余計に敵とか僅かな動きに集中するようになってしまっていた事に実感した。

 そう自分に言い聞かせてから、俺はその箱に手を掛け、中身が傷付かないようにそっと小さめな『水龍の力』で開ける。

 開けてる最中に、こうやって入れられてるって事はあまり開けない方が良かったんじゃないか?と、中身の事は考えず、少し罪悪感に浸っていた。

 

「まぁ、今更どうでも良いんだけどねっ」


 そう呟いて、俺は木箱の開けた部分を開ける。

 中を見てみると、そこには大きめな袋と小さめな袋が一つずつ入っていた。

 俺は、何も説明されてないこの木箱への疑心を簡単に忘れ、小さな袋の方を手に取って、それを縛る紐を解いてみる。

 これまた中には布が入ってた……正確に言えば、服?

 広げてみると、それは白の布地に様々な紋様のようなものが描かれた、フード付きのローブだと分かった。

 

「なんだこれ?」


 思わず口にしてしまう程、よく分からん物である。

 しかし、紋様のような物は何処かで見た事があるような気がした……怪しいのは分かるんだが。

 俺はそのローブを適当な所に置いて来て、そのままさっきの大きな袋を取り出そうとすると、今度は目の前でその袋がゴソゴソと動く。

 何となく、その動き方が意思ある物のようだった気がしたが、俺の中ではそれに対する恐怖心よりも好奇心の方が勝っていた。

 そっと手を掛け、俺は固く縛られた紐を解こうとするが、正直木箱の中ではやりにくいので、持ち上げようとしたら、結構重かった。


「……重いな……」


 何とか広い所に出し、もう一度紐を解いてみる。


 少々苦戦したが、何とか解けた……手先は器用では無い方でな。

 俺は流れで袋の中を見る。

 

「な、何で居るんですか!?」


 そう、そこに居たのは赤いワンピースを着た、黒髪の女の子が居た。

 

「クララさん……って、え?」


 俺はそう問いかけるが、クララさんは怒ってる様子だ。

 えっ?何で?特に俺は何も……いや、勝手に置いてったからだろうか?

 それはやっぱり不可抗力であって、その……。


「さっき『重い』って言いましたよね……」

「なるほどね……ははっ……」


 うっかり乾いた笑いが漏れた俺は、何とか怒るクララさんを宥める事に成功した。

 勿論、『勝手に居たのがいけないんだ!』なんて事は言わない……飽く迄も平和的にね?

 っていうか、女心って難しいな……そう言えば、神様も何故か怒ってたな。


 


 ーーーーーーーーーーーーーーー




「それで、何で此処に居るんですか?」

「私はカナタ君と旅してみたいんです。でもお父様……いや、陛下にはちゃんと許可とってきましたし」


 何故に許可を与えた!?ポセイドン!!お前の大事な大事な娘ではなかったのか!?


「本当に、ポセイドンが許したんですか!?」

「えぇ、最初はダメって言われてましたが、何度も言ったら……」


 甘過ぎるだろ!彼奴!!

 にしても、どうしたものか……だって。


「呪いはどうするんですか!?」

「それなら……」


 そう言いながら何も無い木箱を漁り出すクララさん。


「って、無いですよ!?あ、あのローブはどこに!?」


 なるほど……俺は置いといたローブをクララさんに渡すと、クララさんはそれを大事そうに抱える。

 案外、クララさんっておっちょこちょいなんだな。

 俺がクララさんの新たなる可愛い一面に気付けた事を喜んでたら、クララさんはそのローブを羽織り出した。


「実はこのローブ、呪いを軽減す効果があるんですよ!見てて下さいね……ほら!」


 クララさんは自慢げにローブをフードまでしっかり着ると、大きな胸を張って来た。


「でも、僕には効果無いですよね?」

「……そうですよね」


 やばい!落ち込ませてしまった!!どうやって慰めるか……。


「で、でも、とても似合ってますね!」

「ほ、ほんとですか!?それなら良かったです」


 うん、クララさんならどんな服を着ても、可愛いですよ……何て言ったらさすがに引かれるよな。

 こんな時は話題転換だな。


「それで、本当にその服の効果はあるんですか?」

「えぇ、以前は魚にすら怖がられてたのに、これを着れば小魚にも上手く寄れるようになりました」

「どこで手に入れたんですか?」

「国の最高峰技術を詰め込んだんです」


 正直言って、海底帝国の技術なら、呪いなんて完全無効化出来るんじゃね?と思うんだが。

 しかし、それなら人と会う分にはあまり問題無いかな?

 って、ここに来た本来の目的を忘れてた。


「それじゃあ……荷物の整理を手伝って貰えますか?」

「連れて行って貰えるんですね!?」

「まぁ、危なく無い所までですが……」

「ありがとう御座います!手伝います!」

 

 か、可愛い……でも、一見俺よりも年上な人に敬語って、気が引けるな。


 整理自体にはあまり時間が掛からなかったが、クララさんとお話しした事で余計に時間を短く感じた気がする。

 その中で分かったのだが、俺の活躍はさっきポセイドンに『使い捨て小型通信水玉』?と言う物で聞いたらしい。

 何て言うか、本当にポセイドンの国って凄いんだな!

 でも、その御陰で俺からの説明を大体省けたので良かったとするか。

 

「これで大丈夫なんですか?」

「えぇ、これ位持ってけばどうにかなるでしょう。ゼウスは修行させるだけだ!って言ってましたし」

「でも、宿とかは用意してくれたんですね」

「確かに、なんだかんだ言って優しい神様ですね」


 こう言った他愛ない会話って楽しいよな。

 俺も前の世界じゃ少しは嗜んだ筈なんだが、とても久しぶりな感じがする。


「そう言えば、カナタさんって何歳なんですか?」


 そう言えば俺って何歳だっけ?

 前の世界と変わってなければ、十五歳の筈なんだが……ちなみに誕生日は二月十三日です、どうでもいいけど。

 

「十五歳ですけど……」

「へぇ〜、やっぱり人間ですからね」

「ま、まぁ、今となっちゃあ神と親しい人間かつ、ほぼ人間じゃないですからね」

「まさか『神の槍』を手に入れるなんて思いもしなかったですよ」


 まあ、人間が神の名の付く力を持ってるとか、神の面子が潰れるってもんだからね。

 何となく笑ってたが、今外を見たら少し暗くなっていた。


「それじゃ、クララさんはそのローブを着て……って、何処に行くんですか?」

「それは、カナタさんの……」


 クララさんはそこまで言うと顔を思いっきり赤くして、手で顔を抑えてる。

 か、か、可愛い!!

 でも、どうしたものか……。


「取り敢えず、今日はゼウスに相談してみますか」

「そ、そうですね……」


 何故か切ない感じにして来るクララさん、ちょっと勘違いしちゃうんで止めてもらえますか?




 ーーーーーーーーーーーーーーー


 

 

「カナタ君、例え君の願いでも、ダメですよ」


 一言、ゼウスはそう言って来た。

 何でも、ゼウスの政治方針は成る可く自分が加わらない事、見守り型って訳だ。

 それで、俺にばかり良い目を見てると他の民に不満が生まれてしまうそうだとか。

 ポセイドンみたいなタイプは難しいらしい。

 

「カナタ君はお金があるのでしょう?ならそれで良いんじゃないですか?」

「た、確かに……じゃあ、そうします。明日は何時頃に伺えば?」

「いつでも良いですよ。基本神に睡眠は要らないので」


 そうだったんだ。

 通りでポセイドンはいつも早くから食堂に居た訳だな。


 俺はある程度の金貨を持って宿屋に向かった。

 でも、この世界でのお金の感覚がよく分からない。

 ゼウスは宿屋一泊分なら(質にもよるが)平均五十ウィーゴするらしい。

 ちなみに、ウィーゴは紫、赤、緑、青の四種類あって、紫が百、赤が五十、緑が十、青が一ウィーゴ分に相当する。

 色っていうのは、ウィーゴが生まれたときから決まってて、これもまたそれぞれの総量がきまってるらしい。

 とても都合の良い世界だよな。

 

 ーー宿に着いた。

 そして店主は言った、『受付終了』と。 

まさか、クララさん一人に一話分使ってしまうとは……。

しかし、これは大事な事なんです。

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