これは便利過ぎてありえない!
今回は時間が無くて忙しかったので、色々抜けてるかもしれません!
その時はすみません。
さて、と。
俺はクララさんの部屋のドアノブに手を掛け、少しずつ下げていく。
押しても上手く開かないのはきっとクララさんが中の水圧を上げているからだろう。
しかし俺は押し続ける。
「クララさん〜?」
「ちょ、ちょっとカナタさん今はまだ……」
よ〜ぅし、これで……って、何やってんだ俺?
また正気を失っていたようだ。
「大丈夫ですか?」
「は、はい。もう大丈夫です」
「入って良いんですか?」
「ど、どうぞ……」
俺は少し変な事を考えてた自分を思い出し、中に入る事が勝手に気まずくなったのだが、まあそんな事は気にせず、人生初の女子の部屋へと足を踏み入れた。
クララさんの部屋は前に俺が転移で現れた時よりも綺麗になっていた。
正直、あの時は細かく見てる暇なんて無かった筈だが、クララさんの部屋と聞いてからは俺もまじまじと見てしまっていた。
し、しかし、そんな事は関係ない。
今は今でここはクララさんの部屋だ。
別に俺は鈍感系主人公ではないから、俺が部屋に来るから綺麗にしたなんて考えたら、ちょっと位は勘違いをしてしまうと言うものだ。
「綺麗ですね……」
「えっ!そ、そうですか?別にどこかに行くとかでは無いんですよ?」
そんな事は聞いてないんだが、クララさんも少し緊張してるのだろう。
「それで、どうして此処にいらっしゃったんですか?」
「いや、クララさんって俺が旅に出たらずっと退屈だろうし、その退屈凌ぎを今の内にしようと思いまして……」
「あっ、それなら良いんです!も、もう疲れてるでしょうし、お部屋でお休み為さっていて下さい!!」
そんなに言われるとは、嫌われただろうか……。
少し悲しいのだが、俺はそのまま部屋から出てクララさんに挨拶してから自室に戻った。
あぁ、嫌われたのだろうか……。
俺はそんな思いでいっぱいの心を隠すようにとベッドに潜り込み、その中でベルトから俺のナイフを取り出し、隣の机に置くと、そのまま寝てしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
目が覚めると、俺は大きな花畑の中に居た。
そして、目の前には白い可憐な少女。
「あんた、クララって奴に色目使ってばっかじゃないの!!」
「いった!って、いやいや、そんな事……無くは無いですけど……別に良いじゃないですか!何で言われなきゃ何ないんですか!?」
神様の俺に向かっての始めの一声は、強烈なパンチと共に繰り出された。
実に難しいのである、女性とは。
「そ、それは……もう、良いから!!帰って!!」
何か納得の行かない罵声を浴びせられたと思ったら、俺は目が覚めていた。
ーー最悪な目覚めである。
まるで、昨晩は二人の女性に振られました……的な。
今日はクララさんには合わなかった。
俺は色々と納得行かないまま食堂へと向かった。
いつもならポセイドンが居る筈だが、今日のここには数人程度しか居なかった。
何かあったのか?いや、魚人は空腹というものが偶にしか無いらしいし、周期とかがあるのかな?
色々考えながらも食事を終えると、外がやたらと騒がしくなった。
やっぱり、と思い外に出てみると、食堂の出口の前にはでっかい楕円形をした石?か鉄の塊があった。
長さはおよそ十メートル程で『何じゃこりゃ』がまず俺の発した言葉で、それを支える多くの男達をみて『うわっ!』と声を出してしまった。
この神輿の行列みたいな物の先頭を見ると、大きく笑ってるポセイドンが見えた。
「ポセイドン!これは一体……?」
「やっと来たかカナタ!これこそ、我らの国が誇る最新鋭の潜水艦じゃ!」
「潜水艦!?」
正直、そんな科学の塊的な物がこの(恐らく)中世レベルの文明社会にあることに驚きを隠せない。
そんなもの……そうか、昨日のポセイドンが言った『準備』はこれの事か。
俺の頭の中では少し色んな事が繋がったような気がした。
「潜水艦じゃよ、説明するならば海を水中を使って渡る事が出来るものじゃよ」
「いやいや、それは知ってるんですが、何の為に?」
「何じゃ、御主の世界にも潜水艦はあるんじゃのう……で、これは普段は戦争時に使う物なんじゃが、今回はカナタの旅の為に用意した物じゃ」
なるほど、ポセイドンは海上は危ないから海中での移動をさせる為に用意したらしく、普通の兵器としての物よりも、快適で安全な移動が出来るようにしたとか……まじか……。
中を案内してもらう事になった為、俺は潜水艦の上に上り梯子みたいな二重扉をくぐり、中に入った。
まず目に入ったのが、この潜水艦位の長さの廊下で、そこを進む。
まず案内されたのが上から一階目の奥にある『操縦室』、まぁ、一番重要っちゃあ重要か。
操縦室と言っても、壁はスチームパンクみたいなスイッチが沢山あったのと、先端には大きな窓と石盤が置いてあった。
どうやらこれで操縦するらしい。
そして次が寝室、これは無駄にも二つあった。
俺なら操縦室で寝るんだけど、まぁ、旅の仲間が増えるとか、海賊物じゃあありがちだしな。
その次に紹介されたのが潜水艦の入り口から見て一番手前の左側の部屋の扉を開けると、そこには家族が一緒に食べる位のテーブルと三席の椅子と、『キッチン』があった。
しかし、テーブルは何に使っても良いらしい、普通そうだが。
キッチンは少し狭めであったが、人一人なら普通に行動できる広さであった。
あるのは大きめな竃(と言ってもこの世界じゃ普通)と、まな板代わりの木の板とテーブル、それ位だね。
その向かいの部屋は、今は何も無いが棚や箱とかがいっぱい入った『倉庫』だった。
そして、この部屋の奥にはさらに下へと続く梯子が置いてあった。
そこを降りると、右、左、前と扉があった。
まずは、この船の一番後ろともなる場所の扉を開ける。
そこは紫色の巨大な石とそれを制御するかの如く囲み込んでいる機会のような物。
ここだけ時代がグンと飛んだ気がしたがこれは『誘導魔石』と言い、言わばこの船のエンジンで、その周りを取り囲むのが『制御装置』なんだそうだ。
それでここが『誘導魔石管理室』、俺は『エンジンルーム』と呼ぶべきか?
そこを出て左の部屋がトイレであり、それ以上でもそれ以下でも無い。
残った部屋は……『更衣室』と『シャワールーム』で、二つは繋がってる。
まず始めに来るのが『更衣室』兼『ランドリールーム』だ。
洗濯なんかいつでも出来るが、この部屋は竿とかあったし、俺はそう呼んでる。
その奥が『シャワールーム』である。
俺的にはこの世界では別に使う事も無さそうな所だと俺は言ったが、『分からんではないか!』と言って来た。
でもあれか、さすがに一人で行かせるのはまずいだろうし、少しの雇い人位は連れて行けって事何かな?
にしても、この潜水艦は凄い物だ。
これ程の設備は前の世界で言うと結構なマンションにも匹敵しそうだしな。
しかも、これを全て『魔力』で動かしてるというのも驚きだ。
それほどまでに魔力とは便利な物であり、希少らしい。
しかし、それならそうとその『魔力』はどこで入手するんだ?
答えは簡単、ポセイドンが言うに人間の魔力はその者の魂しか持たないみたいだが、物に宿る魔力や宙に自然発生した魔力は特殊な方法で集めれば時間は掛かるものの、幾らでも集められるらしい。
だからって、今回の旅では海から魔力を集めるのではなく、旅路の最中に様々な国で魔力を補給していく、というシステムだって言う事を聞いた。
ガソリンみたいなものだろうか、いや、あまり深く考えない方が身の為か……。
ちなみに、さっきまで気が付かなかった事だがこの船内は空気で満ちていた。
久しぶりの空気だと喜んでる場合じゃなかったな。
てか、この空気も魔力と海中の酸素を還元やら何かして作ってるらしいし、本当に便利である、魔法とは。
「すごいじゃろ?『魔力』とは!」
「なんであんたが誇ってんですか!?」
「まあ、ゆっくり見て行っておいてくれ」
そう言いながら、ポセイドンは俺を置いて船から出て行く。
魔力の力ってスゲーー!