黄3話 翠と黃の邂逅
多分、ここまで魔物が来ているということは、他の校舎も魔物に襲われているだろう
そう確信した私は急いで学校を出ようとした
思ったとおり、他の校舎は魔物の攻撃を受けて壊滅していた
(誰か生き残っていないのかしら?)
その時、正門の前で人影のようなものが動いた
(よかった!私の他にもまだ生き残っている生徒が...)
と、思った瞬間、私の目に信じられないものが飛び込んできた
その人影は魔物たちに見向きもせず
出口へ真っすぐ進んでいくのだ
襲われている人がいるといのに
グシャッ!
「助…けて…」
信じられない...
どうして、平然と進むことができるの…?
私は他校舎の生徒を襲っていた魔物を攻撃した
不意を突かれた魔物はあっさりと倒れたが
襲われていた生徒にもう息はなかった
「どう…して…」
私がそう呟いたとき
ひときわ大きな魔物が襲い掛かってきた
**
後ろから戦っている音が聞こえる
まだそんな気力がある奴がいたのか、と
ぼーっと考えていてふと気づく
「戦闘音」が聞こえたのだ
本来ならば攻撃が効かない以上
一方的に殺されるだけだ
殆どは悲鳴と人が裂かれる音
もしくは武器が壊れる音
だが戦闘音が聞こえるということは
その人物は余程諦めが悪いのか
対抗できる武器を持っているということ
「カリヴルヌス、か?」
ゆっくりと 音がする方へ歩き出した
**
大きな魔物は他の魔物とは違い
硬い装甲のせいで攻撃が効かないようだ
動きこそ遅いが、いずれこちらの
体力が尽きてしまうかもしれない
「どうすれば…」
「動かないで」
突然魔物の後ろから声がしたと思うと
魔物の装甲を何かが貫いた
その何かは私の顔のすぐ横に伸びると直ぐに引っ込んだ
魔物がゆっくりと倒れ、やがて事切れた。
振り向くと、先程歩いていた生徒がいた
私は少し驚いた、さっきまで何の興味もなさそうにしていたのに
(助けてくれた?)
「あの、ありがとう…」
「やっぱカリヴルヌスか」
私の言葉を無視し彼は私の持つ聖剣を見る
彼の手にはもう一本の聖剣が握られていた
剣を持ったまま黙っている彼に聞いてみる
「どうして、助けてくれたの?
貴方はさっき…」
「聖剣の継承者を殺す訳にはいかないでしょ
こいつ等は助ける義理が無いから無視しただけだよ」
死体を指差しながら、彼が言う
「そんな、助けを求めているのに!」
彼は私の言葉を聞き、ため息を吐いた
「誰もがあんたみたいに善人じゃないんだよ」
その言葉に何も言い返せなくなった。
「…とにかく助けてくれてありがとう
私はティータ、ティータ=フリージア 貴方は…?」
「…カイルだ」
「名字は?」
「なんだっていいだろ、どうせ名前しか使わないんだから」
めんどくさそうに言い放つと
もう行っていい?と聞いてきた
めんどくさそうにしながらも、こちらの問いにきちんと答えてくれた
彼は、ぶっきらぼうなだけかもしれない
グァアア!
私がそう思った時、生き残りの魔物がいきなり襲いかかってきた
辺りの魔物は全て居なくなったと、すっかり油断していたのもあって、私は判断が遅れ、剣を落としてしまった
(ああ、まだ勇者の宿命もわからないのに!)
どすっ
死を覚悟したその時、魔物はカレトヴルッフで一突きにされていた。
グフゥ、という情けない声を上げながら魔物は力尽きた。
一瞬の出来事に呆然としていると
「大丈夫?ほら、あんたの聖剣」
と、言いながらカイルは私が落とした聖剣を渡してきた。
(また、助けられちゃった…)
「あの…」
「礼なんていいよ
それよりとっととここ出た方がいいと思うけど」
そう言って彼は背を向けて歩き出した
急いで呼び止める
「待って! 私も、一緒に」
カイルは少し驚いたような表情で振り返った
しかし直ぐにめんどくさそうな顔に変わると
「好きにすれば?」
とだけ言ってまた歩き出した
「えぇ、好きにさせてもらうわ!」
私を助けたのは、ただ私が聖剣の使い手だったから
どうあれ、カイルは私の命の恩人だ
私はカイルについていく事を決めた