黄2話 優等生の少女
私は魔物対策学校の在学生である
魔物達にはある特殊な力を持った、「聖剣」と呼ばれる四つの剣が非常に有効だった
その為聖剣を研究することにより
魔物に有効な武器や魔法という力が開発された
私は自ら志願し、この魔物を倒すための特殊部隊を作るための学校に入ったのだ
孤児だったにも関わらず、この学校に入学する事ができたのは、私が幸いにしてそこそこ成績が優秀で生活態度も良かったため、孤児院でお世話になった方が学校に口ぞえをしてくれたおかげだった
成績がいつも優秀なので、孤児の事を馬鹿にされる事もなく、周りとは上手くやれていた
放課後、いつものように地下室で魔物の研究をしていたところ、上から何か叫びが聴こえてきた
様子を見に行った同級生も、一向に降りてくる気配がなかった
あたりはシーンと静まり返っていた
嵐の前の静けさというが、嫌な予感がして、暑くもないのに汗が出てきた
私は備え付けの短剣を持って恐る恐る階段を登った
この短剣も、研究によって作られた魔物に有効な武器…の最新版だ
試作品だが無いよりはマシだろう
嫌な予感は的中した
そこには魔物に襲われている生徒達の光景が広がっていた
私はそこに縫い付けられたように動けなかった
叫びをあげる事もなく、ただ呆然と、生徒達が襲われる様を見ているしかなかった
魔物が私に近づいてくる
そこで初めて動く事ができるようになった
魔物の胴体に素早く斬りかかる
しかし、短剣はあっさりと砕けてしまう
「なんで、効かないの…?」
私達が作り上げた新しい武器
しかしそれはまるで意味をなさなかった
私達の、してきた事は…?
魔物が腕を振り上げた
ぎゅっと目を瞑って衝撃を待った
だが、予想していた場所と違う位置からの衝撃で
私はあっさりと突き飛ばされる
「ぐああ!」
男の叫び声が響く
目を開くとそこには
背中を割かれた同級生が倒れていた
「逃げ…ろ、ティー…タ…」
魔物がトドメを指そうとしている
私は、何もできないの…?
(力が欲しい?)
「…?」
私の目の前に、フードを被った少年が立っていた。
「君、ここにいたらダメだよ!早く逃げて!」
他人に言えたことではなかった
でも、そんな事は考えていられなかった
しかし少年は私の言葉に首を振り、黙って剣を差し出してきた
(この剣を取ったら、君は勇者の使命を背負うことになる
それでも死にたくないなら、誰かを助けたいなら…
この剣を、取って)
「...ッ!」
カランッ
試作品の武器を捨てる音に、魔物たちは気づき一斉に襲いかかってきた。
「私は…まだ、死にたくない
誰かを見捨てて…逃げたりなんかしたくない!」
少年から半ば奪うように剣を受け取る
そして魔物に向き直った
襲いくる異形たちをバッサバッサと切って行った
少年は既にどこにもいなかった
私を庇った同級生
周囲の魔物を倒し切る頃には
もう、息はなかった
「ごめん、ごめんね…」
私は泣きながら同級生の亡骸の手を取り重ねた
「私が魔物を止めるから…!」
キッと前を向き、私は歩き出した
魔物と…戦うために……
話数は時系列となっております