緑2話 落ちこぼれの少年
僕はこの学校の生徒で、
世間でいう落ちこぼれってやつ
なぜか?
魔法科学校の生徒のくせに、肝心の魔法が使えないから、だ。
魔法を使う為には腕輪がいる
聖剣の力を研究した結果できたものらしい
他の奴らは国から支給された腕輪を使っているのに、
僕はなぜか祖父から譲られた腕輪を使っている
お古なのはまだいい
魔法が使えないのポンコツのくせに
外すことができないのが問題なのだ
どうせ僕はこう思われている
「お古野郎」だの「落ちこぼれ」だの
「何のためにこの学校に入ったのか」
だの
否定することはできない
何も間違っていないのだから
でも、僕はこう考えている。僕を影で笑ってる奴らは、どいつもこいつも同じ
与えられた環境に、与えられた腕輪
手順通りにやれば使える魔法…
こいつらは、みんな何も考えていない
与えられた人生を歩んでいくだけの
「つまらない人生...」
いつもと同じようにつまらない授業が終わり、次の教室に移動しようとした。
「おっと...」
バサバサッ
手が滑って、魔法の書をいくらか落としてしまった。
それを拾おうと、屈んだ時だった。
突然窓が割れて、多数の魔物が現れた
突然の襲撃に生徒たちは慌てた
しかし彼らはすぐに落ち着き
魔法を一斉に放った
だが、魔物には一切傷をつけられず
まず最初に一番近くにいた生徒が魔物の爪の犠牲になった
「ヒィィイ!た、助け...」
その声は悲鳴でかき消された
すでに囲まれており逃げる事はできない
助けを求める生徒が、次々に血しぶきをあげて死んでいく
魔物がこちらへ向かってくる
何も出来ずに眺めていたから
今まで気付かれなかったようだ
(僕、ここで死ぬのかぁ
何も出来ず 何も残せず…
クソみたいな人生だったな)
呆然としながら死を思った
しかしそれはあとから湧いた強い感情に飲まれた
(なんでこんな所で死ななければならないんだ
あんなゴミみたいな奴らと一緒に
ゴミみたいに!僕は違う、こんな所で…!!)
その時
(力が欲しい?)
「…は?」
突然どこからか現れた少年が、剣を持って佇んでいる
ふと見ると、魔物の攻撃はギリギリのところで止まっている
(君には戦う力がある
その使い方に気付くだけ
どうしても気付けないのなら)
少年が剣を差し出す
(この剣を取って
でもこの剣を取ったら
勇者の使命から逃れられなくなる
それでも
「いい」
少年の言葉を遮り剣を奪う
「ああああああ!」
未だ動かない魔物に対し
僕は剣を突き立てた
魔物はあっさりと貫かれ動かなくなった
迫りくる別の魔物も同様に
いつの間にかあの不思議な少年は消えていた
教科書がパラパラとめくれる音が聴こえてくる
それ程までに辺りは静まり返っていた
遠くからは未だ悲鳴が聞こえる
でも、そんなことは関係ない
生徒だったものを見下ろしながら
「ざまぁみろ」
と、一言だけ言い残しその場を後にした