悪魔の炎の中の涙
お久しぶりです。受験勉強頑張っているので(白目)投稿ペースがガタ落ちですが楽しんでよんでいってくださいませ ^ω^)
season14
広大は研究所のある2階へ向かう。千歌を避難させたので予定と大幅なタイムラグが生じてしまったが、まだ俺に中の許容範囲内だ。
「・・・!?」
階段を上がろうとしたときに上からガシャンという物音が聞こえてくる。
(敵が侵入してきたのか?)
しかしここで「ハイ無理でした」と下がるわけにはいかない。広大は足音を一切たてないようにして階段を上がる。
「・・・敵影なし・・」
階段には敵はいなかったが物音が聞こえてくる。広大は警戒しつつ廊下を進む。
「これか、音の原因は」
その音の原因は鎖のついたロッカーだった。中に何かが閉じ込められている可能性が高いがもしかすると、いたずら用に設置されたドローンかもしれない。
「開けて、、、みるか」
広大はサプレッサーの付いたバレッタで鎖を切断する。そしてゆっくりと開ける。
「な、夏生!?」
思わず大きな声が出てしまった。中にいたのはパイロットスーツを着ている夏生だった。
「#&@4!!・。」
もごもごと言っているので口元をよく見るとガムテープが貼り付いていた。
「ガムテープ。外すぞ」
「♪☆$¥#」
広大はゆっくりとガムテープを外す。
「痛っ」
「悪い」
「よし、外れた」
「ありがとう。もう私このまま飢え死んじゃうかと思った」
夏生がにっこりと笑う。
「そういえば何でロッカーの中に?」
「確か私、、、」
夏生の話によると、ダンテの回収をシモンズに命じられ格納庫に向かう途中に後ろから殴られて気絶して気が付けば真っ暗なロッカーの中だったということらしい。
「多分、暴徒だと思う」
「それしかないと思うわ」
「話は変わるけど広大は何しにここへ?」
「俺もシモンズに任務言い渡されてな。abyssの粒子とヴェルキリウスの回収だってさ。やる事多すぎてさ」
「じゃあ手伝おうかしら」
「え?いいのか?」
「いいわよ。このまま広大一人で作戦続行とか死にそうだしね」
「それ、しれっと悪口言ってないか?」
「あ、、ごめん」
二人は小声で笑う。
「そろそろ行くこう」
「そうね。何か武器持ってる?なんでもいいよ」
「ハンドガンでいいか?」
「じゃあそれでお願い」
広大は夏生にバレッタを渡した。しばらく歩くと分かれ道にたどり着いた。
「研究室ってあっちだよな」
広大がいかにも研究所オーラが漂う廊下を指さした。
「それしかないと思うわ。もう片方は射撃場だもの」
広大たちは研究室へ続く長い廊下を進む。すると背後から足音が聞こえてくる。その音は広大たちの者ではないのがはっきりとわかる。音がとても重くバーナーの音も聞こえてくるからだ。
「何か来る」
夏生はバレッタを構え広大に伝えるように小声で言う。それを広大は肩を叩いて応答する。
「めんどくさそうだな。グレネードとか持ってないか?」
「無い」
足音の主が階段を上り終わり姿を現す。正体は電動型の火炎放射器を持った重装備の敵だった。
「焼肉になりたくないなら撃て」
敵は火炎放射器のセレフティ―を解除し、ガス管を交換した。敵と遭遇するとは思っていないようなそぶりをしたが、一切焦りを見せない。恐らく敵はとても多くの経験を積んでいる『エース』なのだろう。
「こいつ、なんて硬さなの」
夏生の撃った銃弾はすべて弾かれていた。広大も同じ状況だった。
「そこをどけ。おとなしくすれば手出しはしない」
「abyssを渡すわけにはいかないんだ。断る」
男は強く言い返す。
「ならば本気でいくぞ」
「こっちはもともとその気だ」
敵は火炎放射器のトリガーを引く。その銃口から「ゴオオオオ」と地鳴りのような音とともに火柱が広大たちに迫る。
「危ない!!」
広大は火柱が近づく前に『しゃがみ撃ち』の状態にして足に照準を合わせ2,3発撃つ。しかし敵は怯む様子はなくむしろ相手の怒りを買ってしまったようだ。
「広大危ない!!」
火柱が頭上に到達したとき夏生が敵に向けて回し蹴りをかます。銃弾ではびくともしなかった敵が大玉のように転がる。
「恩に着る」
「お礼なら任務が終わってからにして」
敵はすぐに起き上がり火炎放射器のリロードをする。その間広大たちは撃ち続けるが意味は無い。
『Armor charge remaining 20%. It is lower than the reference value.(アーマー充電残り10%。基準値を下回っています)』
これは好機だアーマー充電が切れたら1斉射するとしよう。
「夏生、後ろに回れ」
「OK」
夏生は敵の後ろに着こうとして回り込むが、敵は冷静だった。
「やらせんぞ」
「私の狙いはどこかわかるかしら?」
ベレッタの銃口から銃弾が発射される。その弾の当たった場所はアーマーではなく背中の替えのガス管だった。
「貴様!!」
「最後に何か言い残すことは?」
「戦士として死ぬときには言い残す言葉はないさ...でもこれを渡して欲しい」
重装兵が手に持っていたのは妻と娘を抱きしめる夫の写真だ。裏を見ると「俺はただいまとは言えなくなった。シンディ、アンナを立派な人に育ててくれ。」と書かれていた。
広大は重装兵の背中に付いているガスボンベを思いっきり蹴った。
「なぜだ。俺は死ぬ覚悟が出来ていたのに」
重装兵は叫ぶように言った。
「そんなもの渡されたらこうするしかないだろ」
「でも、また敵としてあった時容赦はしねぇからな」
広大は涙を流している重装兵に背を向け研究所へ歩き出す。
「広大、あなた泣いてる?」
「目にゴミが入っただけだ」
season15
研究所は物音一つしなかった。広大と夏生は丁寧にクリアリングを行う。
「これだ」
外側に高濃度注意と書かれたジェラルミンケースが机の上に置かれていた。
「よし、これで帰れるわね」
すると背後から「ドンッ」という音がした。
「は、!?」
広大は息を呑んだ。夏生が頭から血を出して倒れていた。
「夏生!!」
すると背後から頭の痛みが襲ってきた。
「abyss借りるね」
ボイスチェンジャーによって変えられた声が頭に響く。
「お前は、、、。」
段々意識が遠のいていく。俺は死ぬのか?
意識が朦朧としていてよく見えないが、ここが病室であることは分かった。
「目を覚ましたんだな。心配したぞ」
声の方向へ顔を向けると享也が立っていた。
「隊長、、、」
広大は手を享也に手を伸ばす。
「お前は戦える状態じゃないんだ安静にしていろ」
享也は広大の手を両手で握る。その手は暖かくとても力強かった。
「隊長、、夏生は?」
「何も異常はない」
享也が顔を顰めた。
「お前にもあるんだが、首に注射の跡があったんだ」
広大は首を触ると少し違和感を感じた。恐らくあの時「ヤツ」が打ったのだろう。でも何故俺は帰ってこれたのか。基地には誰もいなかったのに。今考えたって意味が無いか。
「早く帰ってこいよ」
享也は広大に背を向け手を振った。気圧式の自動ドアが開く音がした。
「た、隊長」
広大が呼んだ頃にはもう隊長の姿はなかった。そしてまた考えた。
「死ぬ気でいたのに、なんで俺は生きているんだ」
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