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野巫の祭  作者: 凡栄
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野巫の祭 59

野巫の祭 59




「そんなことはないだろう。通報者だろう。なんで消えるんだ。」


中の救急隊員はまた声を荒げて言った。

間髪入れずに外の救急隊員が言う。


「わ、わかりません。」


そうだよな。

わからないよな。


こんなこと信じられないよな。


それが普通だ。


奴らを知らなければこんなこと⋯


いや、私だって知らないのは同じか。

奴らのことを何もわかっていないのだからな。


とにかく、ここからは早く離れよう。


「あのぉ〜、すみませんが体も動きますので、このまま帰ることにしたいのですが。」


まだ混乱している隊員たちに声をかける。


中の救急隊員がクルリとこちらを向いて


「あぁ、どうもすみませんでした。」


「いや、いいえ。」


「あの、確認したいことがいくつかありますので、もう少し待っていただけますか。」


真剣な顔で言われて断ることもできない。


「わかりました。」


それを聞いた中の救急隊員は外へ出た。

そして外の2人と実際に立っていた場所や、メモを取った内容などを確認していた。


素早く確認を終えて戻ってきた。

救急車の中へ顔だけ入れて


「高瀬さん。あなたは高瀬さんで間違いありませんか。」


「はい。高瀬です。」


「電話番号はここに書かれているもので間違いなかったですか。」


「はい。間違いありませんでした。」


それを聞いて救急車の中へ入ってきて、そのままスライド扉を閉めた。

さらに運転席で搬送先を探すために無線連絡にしていた救急隊員に外に出るように言って救急車から降ろした。


「高瀬さん、今ご気分は大丈夫ですか。」


「はい。大丈夫です。」


「身体のどこかに変わった感じはありますか。」


「いえ。ありません。」


「そうですか。」


右手を顎のところへ持ってきて少し考えていたが


「高瀬さん、お一人だったと言ってましたね。」


「はい。私一人でした。」


「何をしていたんですか。」


「そこのスーパーへ買い物に来たんです。」


「なるほど。お家からずっと一人で。」


「はい。ずっと一人で。そもそも私は一人暮らしなんです。」


「娘さんがおられると。」


「はい。おりますが住まいは杉並区なのでここにいるはずがありません。」


「別々に住まわれていると⋯」


「はい。」


「高瀬さんは、この街には長いのですか。」


「いえ、去年の暮れに引っ越してきました。」


「なるほど。ご近所に親しくされている方は多い方ですか。」


「いや、ほとんど近所付き合いはありません。」


「ふむ。では少ないながらにも中に若い女性はおられますか。」


「いえ、いません。」


また顎に右手を当てて少し考える。


「高瀬さん。まずはあなたの体が心配です。意識を失って倒れたことは事実でしょう。体に異変があったのか、あるいは気付かずに頭を何かにぶつけたか。とにかく気を失って倒れていたのは事実です。」


「はい。」


「その上で、誰かが通報して救急車を呼んだ。そして、その人は身内で娘だと名乗り我々に状況の説明までした。で、消えたと。」


こちらをジッと見つめている。

そして何かを決心したように


「高瀬さん、いま救急搬送の必要はなさそうですので我々はこれで帰ります。が、明日のできれば午前中にでもご自身で病院へ行って検査をしてもらった方が良いと思います。」


「わかりました。」


「それと、我々と話をした女性には本当に心当たりはありませんか。」


「はい。ありません。」


「しかし、お名前も電話番号も知っていましたが、本当にご存じないのですか。」


「それは私が聞きたいですね。」


2人して、しばらく口をつぐんだ。







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