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野巫の祭  作者: 凡栄
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野巫の祭 5

野巫の祭 5



鳥居をくぐると見た目以上に涼しい。

正面の本殿に行こうとして、この社の名前を見ていないのに気がつき鳥居の外まで戻る。

石柱に刻まれたこの社の名前は

「鎧神社」

(よろい・・・?)

まぁ神社であるから、その御神体は何でも構わないのだが鎧とはね。

とりあえず手を合わせておこう。

んっ?

神社が手を打って、寺院が手を打たないのだっけか?

まあいいや、とりあえず手を叩いておけ。

お参りがすんだらさっきの疑問がよみがえる。

一体誰の鎧を奉っているのか?

神社の縁起を見てみると次のように書いてあった。


当社の創建は、約千百年前に遡ります。

醍醐天皇の時代(898~929)、理源大師の徒弟である 筑波の貞崇僧都、行基作と伝えられる薬師如来像がこの地に祀られ、円照寺が創建されました。

当時は神仏習合といって、神社とお寺が密接につながっていた時代でした。 その際、寺の鬼門鎮護のため当社が創建されたと伝えられています。

また創建以前から、この地は一つの伝説が伝えられていました。

それによると、武の神様として名高い日本武命が天皇の命によって東国の平定に向かったとき、当地に甲冑六具を蔵めた(しまいかくした)というのです。

鎧にまつわる話はこれだけではありません。

天慶三年(940)、関東に威をとなえていた平将門公が藤原秀郷によって討たれると、この地の人々はその死を悼み、天暦元年(947)、将門公の鎧もまた当地に埋めたと言われています。

また一説によると、将門公を討った後、重病となった藤原秀郷が、 将門公の神霊の崇りであると恐れ、薬師如来を本尊とする円照寺に参詣し、将門公の鎧を埋め、祠を建ててその霊を弔ったところ、 病気がたちまち治ったと言われます。

それを聞いた人々はその御神徳に恐れ畏み、以後、村の鎮守の社として近隣の尊崇をうけてきたと伝えています。

これらのことから、「鎧」の社名が起こったと伝えられています。


と書いてあった。

ふむ⋯

ここもまた平将門の所縁のようだ。今日は平将門が続く日だな。

んっ?まてよ。

鬼門に将門…?

どこかで…聞いた話だな。

どこだったかな。

そうだ、神田明神だ。

神田明神は江戸城から見て鬼門の方角。

しかもそこには平将門が関東武士の神として武士政権である徳川幕府によって奉られている。

鬼門に将門…。

何だ?

この違和感は。

同じような違和感を頭ではなく体が覚えている。

いつだったか、こんなような気持ちになったことがある。

どこでだったか…。

ここまで気になると神田明神まで行ってみたいが、どうやら日が暮れてしまった。今から向かっても遅い。

もう少しこの社の話を見てから家に帰ることにしよう。

奉られている神の一覧があった。


日本武尊やまとたけるのみこと

大己貴命おおなむちのみこと

(大国主命おおくにぬしのみこと・大黒様)

少彦名すくなひこなのみこと

(恵比寿様)

平将門


ずいぶんと色んな人達、おっと、神々が入っているもんだな。

さて帰ろうと出口に向かうと、今まで気付かなかったが境内の中の入口近くに小さな社が別に立っている。

ついでだからこちらも覗いてみる。


摂社 天神社

学問の神様・菅原道真を奉る摂社で、もともとは柏木北公園に鎮座しており、明治中頃に遷座した。

成子天神の元の社であることから元天神とも言われる。

狛犬型庚申塔

この天神社の両脇にある狛犬は、驚くことに申(猿)なのだ。申が二匹(というのだかは知らない)並んで座っている。

こんなのは全国的にも非常に珍しいらしく文化財になっているとのこと。

残念なのは向かって右側の狛犬の前足が何者かによって壊されたのかコンクリートで修繕された痕が痛々しく残っていたことだ。

造営は享保6年(1721)でとなっているが、庚申はだいたい塚になっていてこのような狛犬の形はしていない。

庚申は農村部に多いはずだが、ここもその当時はのどかな田園地帯だったということか。

その農村文化の名残なのだろうな。


ふ~~む。

不思議な場所であった。

しかし、さっきの違和感は何だったのか?

気がかりが残ってしまったが、酔い覚ましには十分な時間も過ぎたことだし、日も暮れた。

さぁ、家に帰るとしよう。



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