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野巫の祭  作者: 凡栄
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野巫の祭 13

野巫の祭 13



うん、あつい⋯

歩き始めてすぐにそう思った。

暑いのは慣れているのだが仕事でないとどうにもこうにもたまらない。

エレベーターでまとった冷気はすでに蒸発して今にも汗が噴き出しそうだ。

さて、秋葉原まで歩いていくか電車でいくか。

歩いていけば1時間。

国際通りの新しい浅草駅からTXに乗れば2駅で秋葉原だ。

マンションを出て、右と左に進む道が分かれる。

ふうぅ〜

上を向いて一息ついてみる。

歩くか⋯どうせ時間はたっぷりあるんだし、汗が噴き出さない程度にゆっくり歩いていけばいいさ。

靴の底が溶けてしまいそうな道で影を探しながら歩いていく。

浅草から上野まで歩くといつも思うのだか、何でこんなに仏壇仏具のお店が多いのだろう。

田原町の交差点から上野駅手前まで延々と並んでいるのだ。

面白いのはこの途中に合羽橋道具街というのがあるのだが、これまた調理道具や店舗設備のお店がズラ〜っと並んでいる。

この地域は何かに特化したものが集まるのかもしれない。

隣町で、これから行く秋葉原も電気に特化した街だしな。

そうこう考えているうちに上野まで来てしまった。

すでに背中は汗でぐっしょり。

できるだけゆっくり、汗が出ないように歩いたつもりだったが、よく考えると今日は風が止まっていて蒸し暑い。

上野駅から広小路の方は人が多いし車も多く、より暑さを感じるので駅の手前で裏通りに入る。

大通りと違って裏道は影が多く幾分かでも歩きやすい。

このまま秋葉原までは裏通りで行こう。

日陰はあるがゴチャゴチャした道をどんどん進むと蔵前橋通りまで来た。

昭和通りを渡って最近できたカメラ屋の巨大な建物を目指す。

近くまで来てあらためて見ると、電気関連商品だけでよくまぁこんなに大きな建物を建てたものだな⋯と、元建築屋としてよろしくないことを思いながら入口に近づくと、あらっ、開いてない?

休みかな、と中を覗くと人がたくさん動いている。

何でだろう⋯

当たり前だ、お店の中の時計を見たらまだ9時少し過ぎ。早すぎたのだ。

またも自分の時間と世の中の時間の違いに気がつかなかった。

建物に入れば涼しくなれると思っていたので残念さと共に汗が一気に噴き出してくる。

これはまたらん⋯。

近くのコーヒー屋さんに避難するように飛び込んだ。

コーヒー屋さんというのは、これも飲物に特化した商売なので喫茶店とは違う。

喫茶店は食べ物もそこそこ用意されているし、何より品物を席まで持って来てくれる。

と、いうことでコーヒー屋さんはとても笑顔な応対だが持って来てくれないので早くに座りたい気持ちを抑えて、コーヒーができるまで待って自分で運ぶ。

アイスコーヒーにガムシロップを入れてストローで氷を一回しする。

カララン⋯という音がいかにも冷たそうでいいな。

一口飲んだら

「ほぅ⋯」

っと声が出てしまった。

胃の周りに冷たさがしみていく。

ここまで来てようやくコーヒーの香りに気がついた。

いい香りだな⋯。

麦茶ばかりじゃなく、部屋でもたまにはコーヒーもいいかもな。

うだうだとしているうちにすっかり汗もひき、体の熱も十分に取れた。

そろそろ電気屋さんの開店時間になったかな。

「ごちそうさまね」

笑顔の店員さんに声をかけて外に出ると猛烈な暑さが襲ってきたが、すぐにビルの中に入りこむ。

今度はすんなり中に入れた。

グルグルと店内を回るが目移りばかりしてしまう。

ピカピカの電気製品が並んでいるがどれも新品なのでそれなりの金額がする。

ずいぶんと長い時間回っていたが、巨大な空間では結局何も買わず、駅の反対側にあるジャンク屋街に向かう。

途中、漫画の世界から飛び出したような女の子達が並ぶ一角を通り抜け、中古家電を扱うお店を見て回る。

手頃な値段のFAXがあるわあるわ。

使い方を聞いて、程度と値段で選ぶためにグルグルとお店まわりをした。

その中でも使いやすそうなやつを選ぶことにすると、お店の人が感熱ロール紙を3本おまけに付けてくれた。

帰りも歩く予定なので、持っていくには大きく重い荷物となるので送ってもらうことにしたが、配送料を入れても1万円で済んだのは助かった。

やれやれ、ここでの用事も片付いて気がつくともう夕方になっていた。

昼も食べずに歩き回っていたのか⋯。

なんか時間の感覚がおかしいな。

そういえば今日もずいぶん前からまた違和感を感じている。

何なのだろうか。

その時、さっきFAXを買った時に住所を書いた伝票の控えを落としてしまった。

いけないいけない。

屈んで拾おうとすると全身にゾクッと寒気が走った。

反射的に顔を上げて周りを見る。







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