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野巫の祭  作者: 凡栄
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野巫の祭 10

野巫の祭 10



ゴウン⋯ゴウン⋯ゴウン⋯

「 む~…ん…」

襟首に溜まった汗と暑さ、それとタイマーをセットしてあった洗濯機の音で目が覚めた。

とりあえず汗で濡れた頭で枕の上に乗っているのはとても不快なので、よっこらせと体を起こしでベッドに腰掛ける。

ベッドの脇には木製で2段の引き出しが付いた小さな棚があり、その上には妻の写真が2枚入った写真立を乗せてある。

一枚は家族4人で行った最後の旅行でみんな一緒に写ったもの。

一枚は去年、伊勢神宮に行ったとき参道で撮ったもの。木漏れ日の中で笑っている。

「おはよう…」

これも毎朝の日課になった返事をくれない妻への挨拶。

時計に目をやると6時3分、まぁ大体いつも同じような時間だ。

洗濯機が止まれば洗濯物を干す作業が始まるので、それまでに他のことをやっておかないと…とはいっても大した事をする訳ではない。

まず顔を洗って歯を磨き、昨日の夜飲んだなんちゃってビールの空き缶とつまみ類の片付けをする。

昨日は久しぶりに山さんと会って、いつもより多く飲んだせいか朝から腹が減った。

いつもなら朝昼兼用で昼少し前に食べるのだが今日はそれまで我慢できそうにない。

何がいいか少し考えたがそれほどしっかりしたもの食べたいとは思わないので今朝はひやむぎにしよう。

鍋に水を入れて火にかける。

麺を茹でている間に冷凍してある葱のみじん切りと茗荷のみじん切りを出してきて、入れてある袋ごと流しにガシガシとぶつける。

これはみじん切りにして袋に入れた野菜が袋の中で水分が凍って固まってしまっているので適量を取り出すために毎回繰り返す作業となるのだ。

でも、こうして冷凍にしておけば安いときに買って使うときに出してこれる。

ほどよくバラバラになった葱と茗荷を麺つゆに入れると、解凍しながら麺つゆを冷やしてくれるので氷を入れなくてすむから水っぽくもならないでよい。

シャリシャリするのがいささか気になるが仕方がないか。

おっとと、茹で過ぎてしまったかな。

慌ててザルにとり水で冷ましながら麺のヌルを取る。

素麺ならばこの作業はいらないのだが、私は素麺の油の匂いが苦手だ。

ひやむぎはサッパリしているので、また作るのが楽なので夏だけでなく冬場の温かいやつも好きなのだ。

さて、出来上がった。

ザルと麺つゆをお盆に乗せてちゃぶ台へ来た所で部屋の暑さが気になるので窓を開けて風を入れる。

しかしすでに涼しい風の時間は終わってしまっている。

生ぬるい風が入って来た。

ま、クーラーの風よりこちらの方がいいさ。

TVをつけてニュースを見ながら薬味たっぷり目のひやむぎを食べる。

いつもよりも多く飲んだ次の朝だからか今ひとつ口の中がシャッキリしないので、冷蔵庫へチューブ入りのおろし生姜を取りに行き、ほんの少し麺つゆに入れてみた。

ずっずずぅ〜

「うん!」

チューブ入りとはいえ生姜の香りが入って味が上がった、というよりは飲み過ぎた口にちょうど良くなったというべきか。

平日の朝のニュースは同じことを繰り返す。

仕事をしているときはそんなことを気にしたこともなかったが、朝の慌ただしい時間にどのタイミングで見ても短時間でニュース、天気、スポーツの結果などがまとめてわかるようになっているので、15分もすると同じことを繰り返すようになる。

まるで今の自分の毎日みたいだな⋯。

虚しいというより笑えてしまうものだな。

そんなことを考えているうちにひやむぎが無くなってしまっていた。

こうやって食べたものがわからなくなっていくのかな。

また笑えてきた。

そういえば昨日の山さんと飲む前の朝昼兼で食べたものはなんだったかな。

公園でアイスキャンディーを食べたのを思い出したのは洗濯物を干し終わった後だった。




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