表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んでもめげない異世界紀行 ~ドSな女神様のせいで大体死亡オチ~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
簡単なりきり悪役令嬢セットの世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/47

28

 あたし──ルトは思わず口に出してしまった。


「乙女ゲーって、悪役令嬢ってこんなのだったっけ……」


 い、いやいや! てんせーしゃんは精一杯戦っているのだ。

 そんな事は気にしたら負けだ!

 例え、良い所の令嬢が、王子様と泥臭く殴り合って勝負を決めても何の問題も無い!

 ……うん、たぶんそうだ。そう思おう。

 あ、目つぶしした。


「いけー! 天性様ー! そこだ頭突きだー!」


 意外とルニルちゃんは順応している。

 腕を振り上げ、声を張り上げて応援。

 あたしもやった方がいいのだろうか……。

 最初の、女神様から教えてもらった乙女ゲーというイメージが邪魔をしてしまう。

 てんせーしゃんには勝って欲しいけど……。


「さすがルトの見初めた男よの。我が来たかいがあったというものだ」


 その声の主は、紅い瞳をぎらつかせ、威厳ある2本の角を頭から生やし、2メートルを超える巨躯からは12枚の悪魔の羽根が見えていた。


「あ、ベルゼビュートさんだ。こんにちは~」

「ルト、貴様! いくらなんでも魔王であるベルゼビュート様に馴れ馴れしすぎだろ!」


 その横に姿勢良く立つ女性。彼とお揃いのベルゼビュート騎士団の制服をビシッと着こなし、長く美しい髪を三つ編みに束ねている。


「アスタロトさんもいつも通りだね~! 部屋の掃除ちゃんとやってる?」

「なっ!? それは今は関係ないだろ!」


 主君であるベルゼビュートさんの前だと才色兼備の格好良い女性なのだが、それ以外は怠惰という言葉が相応しい悪魔なのだ。

 あたしは、あそこで人の下着がかびているのを初めて目撃した。

 この世界にきて、しばらく魔王ベルゼビュートの城でお世話になった思い出が蘇ってくる。

 

 最初は、悪魔とか聞いていたからおっかなびっくりだったけど、城主であるベルゼビュートさんは非常に紳士的だった。

 ただ、女神様の事は苦手そうだった。いったい何をしたのだろう……。

 彼のベルゼビュート騎士団を指揮するアスタロトさんとも仲良くなった。

 割とプライベートでも一緒にいる事が多くなり、その時にメイドの礼節も教えてもらった。

 昔、ベルゼビュートさんの専属メイドになるためにやった修行の賜物だとか。

 結局、武力方面で仕える事になってしまったが、普段の自堕落っぷりを見るとそれが正しいのかもしれない。

 そのせいで、みっちりとメイドプレイをさせられて、色々と身についたから良いけど。

 あたしと、布都御魂の使い方についてもアドバイスをもらったりもした。

 何せ2人とも上級第一位の悪魔なのだ。

 その見返り……というわけでもないが、世界樹ユグドラシルが関係する、ある契約をした。

 これはまだ、てんせーしゃんには言わない方がいいだろう。

 巻き込みたくない。


「ところでルトよ」

「な~に~?」

「何を目的に2人は戦っておるのだ? 勝負は最初から決まっておるではないか」

「あ~……それは、うーん」


 答えにくかった。

 原因の1つは、あたしが意図的に伝えなかった事にもあるからだ。

 というか、さすがにそれは自分で気が付くと思っていた。


「このアスタロトが考えるに、片方が馬鹿で、もう片方が大馬鹿なのではないでしょうか?」

「う……、たぶん合っているけど……」


 普段アレなお前が言うな的なものを感じてしまう。

 ただ、言っている事は正しいので肯定するしかない。


「それと、そこの……今はフロランタン・ルニルと言ったか」

「そこだぁー! 天性様えぐりこむように──。え? 私ですか?」

「うむ。我のお節介だが、レイジョに華を持たせたいのなら、もうちょっと思い出した方がいいのではないか。手を握られた時の感覚とかな」


 ルニルは、何か考えるようにウーンと唸ってしまっている。


「あの、ベルゼビュートさん……ッ!」


 あたしの怒気が籠もった声に、アスタロトが警戒する。


「ルトよ。気持ちは分かるが、お前が居れば大丈夫だろう? それに奴も前に進まなければいかん」

「う……」


 こう言われてはどうしようもない。

 数え切れない程の年月を生きてきた魔王には口で勝てない。


「もー! 分かりました! どうにかならないようにしますよ!」

「ルト、貴様! ベルゼビュート様に馴れ馴れしく──」


 若干、ループしている気がする。

 アスタロトは、気が遠くなる程に長く一緒にいるんだから、早く告白しちゃえばいいのに。

 はぁ……どこもかしこも愛というやつは厄介だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ