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説明しよう!
……したくない。
詳細に説明したら、俺の精神がブロークンしてしまう。
うぅ……。
だが、何かの糸口になるかもしれない。
はぁ……。
憂鬱……憂鬱します……。
ダイナマイトバディの占い師とフレンドリーなキスが出来ると聞いて、全速力で走ってドクターダックワーズの自宅兼、診療所へと向かった。
本当は豪華な診療所を個別に建ててもおかしくないのだが、彼は自分のための贅沢はしない。
余った金は慈善事業へ寄付していた。
まさに聖人のような人間だった。
俺から見ても、たまに熱視線が恐いだけで、他はオールグリーン。
非の打ち所がない人格者。
なので、それなりに信頼をしていたのだ。
「ん、どこも異常はないですね。健康その物です」
細身、高身長、メガネイケメン、誠実、医者、これだけ揃ってなぜか恋人も嫁もいない。
そのダックワーズが、少しオドオドしながら聴診器を使っていた。
俺の素肌が見えていたからか?
そうか、こいつも異性に対して奥手だから良い人ができないのか……俺と同じタイプだな! 健全な童貞として親近感が沸いてきた!
「ありがとう、ダックワーズ。あなたの事、頼りにしてるわよ」
ちゃんと労っておこう。
レイジョ様は気が利く、そう……気配りの達人なのだ!
こうやっておけば、人間関係も大丈夫だろう。
「れ、レイジョ様……。このダックワーズの事を、本当にそんなに想ってくれていますか?」
ん? 思ってるとも。最初にこの世界にきた時、怪我をした俺の元へすぐ駆け付けてくれたしな。
あんなに急いできてくれるなんて患者として、よっぽど大事に思われているのだろう。
ふふ、レイジョ様は幸せ者だな。
「ええ、もちろんよ」
「では、再び一緒に死んでくれますか!?」
「は?」
「レイジョ様が0歳の時からお慕いしていました! その気持ちは今も変わりません!」
「え、あの、ちょっと、落ち着いて」
すごい勢いでグイグイと寄ってくる。
少し恐いのですが。
いやー! 男の人の力すごいー!
……って、これはマジでやばい状況じゃね?
「て、手荒な真似はしたくないので縛らせて頂きます……!」
「誰か男の人呼んでぇー!」
俺の女々しい叫びは虚空に消えた。
そして、ソフトな感じに縛られて、鼻息を荒くしたダックワーズと2人きりなのであった。
縛られるなら女の子に縛られたい。
さっきの占い師の子とか……。
「あの運命の日、私達は出会ったのです! 御懐妊されたレイジョ様の御母上……その御身体の中を魔法で透視した時、私は恋に落ちました! ああ、胎児でも美しいレイジョ様……」
あーあー聞こえなーい。
なにも聞こえなーい。
「だけど、私の身分は一介の医者にすぎない……婚約したクレープ王子に敵うはずもない」
そういえば、扇風機に向かって声を出すと宇宙人っぽくなるらしいよ?
知っていた?
え、マジで!? すごいじゃん!?
「そこで私は決心しました。地獄で一緒なら、身分は関係無いと……」
ああああああああああ核心を語り始めたあああああああ。
このパターンダメや! あかん! 現実逃避しきれない!
チートよ! 何かチートってくれ! マジで!
「でも、一度殺したはずのレイジョ様は蘇りました。そこで私は神に否定されたと思い、諦めました……」
お、改心パターンやん。これは懺悔しただけで終わるかもしれない。
「だけど、だけど……再び見たレイジョ様のお顔は、以前よりさらに眩しくなっていました! 何か不思議な力で惹き付けられるように!」
……異性を惹き付けるチートの効果ですね、わかります。
やっぱり、ズルっていけないと思うんだ。
俺は最初からそう思っていたよ。
「クレープ王子との婚約破棄。そして、あのロギという遠国の王子とのパティ・スリー……私は、この時しかチャンスはないと思いました」
婚約破棄しなきゃよかった。
クレープとイチャコラしていれば、少なくともこのホモヤンデレ死亡エンドは無かっただろう……。
どっちにしろ地獄すぎだろゥゥゥ!? 女神は最初から仕組んでやがったのか!?
「では、共に逝きましょうか」
いき、の字が違うよぉ……。
ダックワーズ・グリマルディの手には、緑色の濃い液体が入った注射器が握られていた。
大体は想像出来る。
ミュータントになってスーパーパワーに目覚めるか、地味に即死である。
俺はアメリカ出身ではない。
なので、きっとアメコミの世界で活躍する今後は無いだろう。
「安心してください。今度はしっかりと死亡確認した後に、私も逝きますから」
ヤンデレイケメンスマイルが眩しい。
今回、俺が死んだ後はどうなるのだろう。
パティ・スリーは、死者が出た場合は何か特殊ルールだったような。
「ちょ、ちょーっと待ってドクターダックワーズ! 殺すのはパティ・スリーが終わってからって約束でしょう!?」
俺の寿命を引き延ばしたのは、グラマラスな占い師──のフード下からエリの顔が見えていた。
何となく察した。
「この私は、老齢のエリのダイナマイトバディに騙されていたというの……?」
「老齢って言うな!」
やはり、意外と可愛い奴である。




