表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んでもめげない異世界紀行 ~ドSな女神様のせいで大体死亡オチ~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
簡単なりきり悪役令嬢セットの世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/47

11

「ああ、やっちまった……」


 ルニルが深々とお辞儀して部屋を出た後、俺はルトに謝罪しようとしていた。

 わざわざ俺のワガママで勝率を大幅に下げてしまったのだ。

 3試合中、1試合を捨てたようなものだ。


「すまない、ルト……」

「ん、いいよ」


 なぜかルトはニヤニヤしている。


「そういえば、ルトは途中、俺を止めようとは思わなかったのか? ずっと平常心を保っていたように見えたけど」

「だって、てんせーしゃんなら、って分かってたし」

「そ、それは良い方向に? 悪い方向に?」

「さあね~」


 この前とは打って変わって上機嫌だ。

 こういうのが分からないから、俺は彼女が1人も出来なかったのだろうか。

 まぁこうなってしまった以上、やれる事をやるだけだ。


* * * * * * * *


「ご機嫌よう、料理長。ちょっと隅を使わせてもらうわね」

「れ、レイジョ様!? このような所へ!?」


 屋敷の厨房。

 ここも例によってスケールが違う。

 一人暮らししていた時のキッチンスペースが50個くらい入りそうだ。

 豪華さは無いが、ピカピカに磨かれた鍋がいくつも釣り下げられ、大きな石窯まで複数用意されている。

 このまま料理屋でも開けそうだ。

 だが、今は視線が気になる。料理長や副料理長、表に出る事の少ない下働き達がこちらに注目している。


「ちょっとお菓子作りをルニルと一緒にね。あ、ハーピーさんもくるけど、衛生面には最新の注意を払うから安心して」

「は、はい。お怪我にだけはご注意を。何か必要ならいつでもお呼びください」


 ここは彼らの誇り有る職場だ。それを立場だけで無理やり蹂躙してしまっている自分。

 本当にすまない事をしている。

 後で勤勉さを褒め称えておこう。


「こちらがルト、私がレイジョよ。ええと、ハーピーさん、貴女の名前は」

「あ、申し遅れました。ハーピーのフーリンです! こ、こここっここの度は──」

「ふふ、そんなに緊張しなくていいのよ。私は色々なものをぶち壊したいだけ」


 自分で言ってるけど、どこのロック歌手だよ。歌舞伎過ぎだよ。


「フーリンちゃんとは、一緒に売られてきた仲なんです」


 ルニルが普通の口調で言ってるけど、これ凄く重い話だ……。

 あまり深く聞くといけない気がする。


「ふんっ、そんな過去に興味無いわ。二度と売られたとか仰らないで頂戴」

「……はい! これからは全身全霊をもって天性様に尽くさせて頂きます!」


 嬉しそうなルニル。ハーピーを助けてくれと頼んできた時の絶望はどこへやらだ。

 本当に良かった。


「てんせーしゃん、笑ってる~?」

「そんなわけないでしょう。ほら、時間の無駄よ。早く始めましょう」

「あ、そういえば、誰がお菓子作りを教えてくれるのでしょうか」

「る、ルト?」

「野草なら任せて!」

「……えーっと、ルニル?」

「肉の解体なら得意なんですけど……申し訳御座いません……」

「ま、まぁ人には向き不向きがあるわよね!」

「ちなみに天性様、料理経験は?」


 俺は言葉に詰まった。

 さすがに一人暮らしもしていたため、この面子よりは料理が出来る。

 だが、レイジョ様としては箱入り娘。そんな貴族っ娘だった人間が料理を作れたらおかしい。


「わ、私は手が荒れるからやらないわよ」

「ですよね!」


 本当は、物によってはすべすべになるんだけどなぁ。

 下ごしらえをして寝かせるのとかも地味に楽しい。

 ああ、家に置いてきた燻製機をもうちょっと使いたかった。

 桜チップもまだ余って……。


「そんな心配しなくても平気だよ、てんせーしゃん! 今日は助っ人を連れてきているの!」


 あれ、俺……顔に出てたのか。


「ふふ。さすがね、ルト」

「やぁ、レイジョ」


 現れたのは、赤髪のガッシリ体型イケメン。

 誰だっけこいつ。


「パンデピスさん、今日はありがとうございます!」

「いやいや、ルトちゃんから呼ばれた時はびっくりしたよ。でもレイジョの力になれるなら嬉しいね」


 パンデピス……パンデピス・ダルトワ。

 ワイルドイケメンで、親が爵位持ちの菓子職人だったっけ。

 何か王子とかも一緒にいたパーティーで話しかけられた気がする。

 いや、元々知り合いだったんだっけ、レイジョ様と。


「パンデピス、頼りにしてるわよ」

「君からそんな言葉が聞けるなんて、これはもう頑張るしかないね。菓子作りで爵位を勝ち取ったダルトワ家の技、存分に伝授してやりますよっと!」


 パンデピスは手際よく調理器具を集め、ルニルやルトに材料の指示を出した。


「そういえば、あいつ──王子様も、あれから頑張っているみたいですよ」


 王子……ええと、クレープシュゼット・ヴォーデモン。何か強そうな名前なんで印象に残っている。実際は細マッチョイケメンだったけど。


「クレープが?」

「ええ、バリバリやって王子の風格が何倍にも上がってきていますね」

「ふふ、楽しみになるわね」


 罪な女だな! レイジョ様!

 あ、ルニルとルトが、こっちを睨み付けてる。

 真面目にやれという事だな……すみません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ