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死んでもめげない異世界紀行 ~ドSな女神様のせいで大体死亡オチ~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
簡単なりきり悪役令嬢セットの世界

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 まずい。野火のロギが目の前にいる。

 こいつは人類絶滅後の世界でミトラ君を封じ、サンドワームですら操ってしまう奴だ。

 前回のように気が変わったりしなければ、俺なんて数秒で殺されてしまうだろう。

 いや、でもルトがいない今。

 彼女を巻き込まないのであれば……。


「おっと、こっちの世界ではレイジョ様だったっけ。お互い、素性は隠しておきたいんだろ?」

「お互い……?」


 こいつにも何か理由があるのか。

 もしかして俺と同じで、股間のアレを人質に……。

 いや、外見的に男のままか。羨ましい。

 

 ロギは、俺よりずっと年下のはずなのに、その爽やかそうな表情からは何も読み取れない。

 たぶん今の顔は仮面で、サンドワームの時に見せた苛烈な悪意こそ彼の本性なのだろう。


「そう恐い顔をするなよ。今の僕は遠い遠い国のお上品な王子様って事になってるんだからさ。どうせならアラブの石油王にでも設定を変えて欲しいね」


 何か引っかかった。

 だが、次の一言でそんな事を気にしている余裕は無くなった。


「ここでは君達に合わせて遊んであげるよ」

「やっぱり何か企んでいるのか」

「企む、ねぇ……。企んでいるのはそっち側じゃないのかい? 僕としては、もっと血の雨を降らせたいけどさぁ。うちの王様と、君達の上の方で取り決めがあるらしいよ」


 上? 俺達の上というと……。


「何そんなに考えた顔してるの。神々に決まっているじゃないか」


 確かに女神だから、神様の1人ではあるか。

 その神が、ロギの言う王様とやらと取り決めをしている。

 いつもひどい事をされながらも、心のどこかでは女神を信じていたところもあった。

 だが、確かに隠し事が多い気がする。

 ロギのブラフかも知れないが、頭の片隅には置いておこう。


「そんな事はどうでもいい。俺達とどう遊ぶんだ?」

「くく、それはね」


 緊張。

 次に発せられる言葉の内容によって、俺の死が確定するかもしれないのだ。

 それくらいに実力差がある。

 生殺与奪権を持っているのは完全にロギなのだ。


「ねーねーロギ! この小さいケーキ超おいしいんだけど!」


 素っ頓狂でいて、幸せそうな声が飛んできた。

 確かアレは、前にロギと一緒にいた何とかのエリ……だっけ。


「エリ……今、こいつの顔を歪ませる良いところだったのに……」

「いやいやいや、あんただってちょっと前に美味い美味いと言って五段重ねパンケーキ食べてたじゃない!」

「うっ」


 こいつらの弱点は菓子だな。たぶん間違いない。


「あ、こいつ前に獣人の村にいた転生者……って、何か性別変わって無い?」

「これにはちょっとした事情が……。それで、野火のロギと、老い……だっけ、老衰だっけ……のエリがここにいるのは理由があるのか?」

「ちょ、そんなお婆ちゃんみたいな名前じゃないわよ! 老齢ろうれいのエリよ!」

「そこの転生者が言ったのとあまり変わらないよ、エリ……」

「なっ!?」


 老齢のエリは、口にクリームをつけたままロギと喧嘩を始めてしまった。

 下手に首を突っ込むと火の粉が飛んできそうなので、収まるまで紅茶を飲むことにした。

 ちなみに老齢のエリは、見た目は大学生の黒髪ロングなナイスバディ姉ちゃんである。片眼に変な仮面付けているが。


 しばらく経った。

 どうしたもんか……、と見物していたら、ルトが特別任務から戻ってきた。

 一瞬、ロギを見付けて恐い顔をしていた。

 そりゃそうか、サンドワームによって村を滅茶苦茶にされたのだ。


「てんせーしゃん、アレなに?」

「どっかの国の王子として化けたロギが、こっちに合わせて勝負したいとか……そこまで聞いた辺りで、女性の年齢問題で戦争が勃発した」

「あ~、その問題は根深いからね……」


 エリの鋭い右アッパーが、ロギのアゴを打ち抜いた所で勝負は終わった。


「えほっ、ごはっ。……はぁはぁ、話の続きをしようじゃないか転生者──ここではレイジョ様か?」

「あ、うん」


 急にロギの噛ませ臭が酷くなってきた。


「くくく……ごほごほっ。僕達がフロランタン・ルニルを手中に収めれば勝ちだ。つまり、多数の男達をうまく操作し、恋仲にした後で間接的に手に入れれば良い……」

「外道だな」

「くはは! 褒め言葉だ! 既に数十人の男達をルニルと恋仲になるようにしておいた! 今頃はもう──」


 勝ち誇ったロギの顔。

 すごく嬉しそうだ。


「あ、てんせーしゃん。ルニルちゃんの恋愛フラグを53個潰してきた」

「ん、ご苦労。さすがルトだ」

「んふふ、もっともっと褒めて~」


 固まるロギ。

 すごく間抜けだ。


「というわけだ、ロギ」

「……はっ!? この僕がそれだけなはずないだろ! ……良いだろう! 最終手段だ!」

「もう、策がそれだけしか無いのかよ……」

「うるさい! お前達の脆弱な力に合わせての作戦なんて思い付くはずがないだろ! というわけで、決闘だ! このプチフール王国に伝わる歴史ある決闘方法! パティ・スリー!」

「て、てんせーしゃん! 聞いた事がある!」

「知っているのかルト」


 と言いたくなる。


「神々の時代、一人の女性を取り合った二人の男! そこで決着を付けるため、パティと言われる神の試練を三回行う事によって結婚相手を決めるという伝説の……」

「ルトって、こういうの好きなの?」

「え~、ロマンスに溢れてていいじゃん~」


 女神様との共同生活で、色々と見聞きして興味を持ってしまったのかもしれない。

 願わくば、アブノーマルな方面だけは避けて欲しい所だ。


「レイジョよ! この僕──ロギを賭けて勝負だ!」

「なんでそうなる」

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