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死んでもめげない異世界紀行 ~ドSな女神様のせいで大体死亡オチ~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
簡単なりきり悪役令嬢セットの世界

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「ふふ、それは私が天性の美貌を持つため。わかる?」


 何を言っているんだろう、俺ことレイジョ様は。

 このレイジョ様ボディのせいか、自分でも訳が分からない事をたまに口走っている気がする。

 女神の無茶ぶりは今に始まった事では無いが、毎回酷さがパワーアップしている。

 次は犬転成でもして探偵でもさせられるのだろうか。


「なるほど、名は体を表す──つまり体は名を表す、それで天性様と」


 ルニルちゃん納得してくれちゃったよ!

 危ない、この子は適当に言いくるめられて夜の街へ消えてしまうタイプだ。

 だが、今は好都合。ここで自分がレイジョに憑依しただけの転生者だとバレるとまずいのだ。


「そうね、アナタもそう呼びなさい。お友達の証よ」

「えっ!? れ、レイジョ様とお友達に……そんな勿体ない」

「あら? この私が良いと言っているのよ? それともお嫌かしら」

「い、いいえ! この国一番の美貌と気品を持つと言われるレイジョ様と友になれるなんて……」

「ふ、ふふ。私、そんなにお上品な人間ではなくてよ」


 何か無理やりヤンキーに、ダチになれよオラァ的な事を言われたシチュエーションに見えるな……。

 やっぱレイジョ様の話し方は恐いよなぁ。

 普通は嫌だよね~。

 それに、この国一番の美貌って……鏡で見たら俺の顔そのままだぞ? 世界が違えば、この顔は美人さんだったのか。

 俺は生まれる世界を間違えていたのかもしれない……。


「あ、私、まだお仕事が残っていますので! ご機嫌よう、天性様!」

「ご機嫌よう、ルニル。またいつでも遊びに来てくれていいのよ」

「は、はい!」


 ルニルは、たぶん無理やり元気いっぱいの返事を返して、逃げるように去っていった。

 ヤンキーレイジョ先輩に気を遣わせないようにする、ええ子やないか。

 あんな子が俺の部屋にくるとか……げへへ。


「てんせーしゃん……」

「あ、いや。その、あれです。まずは相手を知る事によって、目的を達成しやすくするとか何かそんな……」


 何かルトの好感度ダウンの音でも聞こえてきそうな雰囲気だ。

 よし、ここは話を変えて誤魔化そう。これが大人のやることだ!


「そういえば、ルト」

「なーに……?」


 不機嫌に返される。相手を褒めるような内容に持っていこう……。


「ルトってどれくらい強いの?」

「どれくらいって……うーん」


 ルトは、顎に手をやって少々考え込んだ。

 努力して強くなったルトだ。そこに話を振られて話したくないわけはない。


「た、たぶん真っ正面から戦う場合、中世レベルで武装した数人のパーティと粘れるくらいかなぁ」

「真っ正面から戦わない場合は?」

「数十人のパーティーとか、ゴーレムや魔法を使うリッチ、そこらに勝てるくらい! あ、いや、負けちゃうかもかな~どうなんだろ~?」


 どんだけのパワーインフレだよ!


「って、どうして急にそんな事を聞くの?」

「ルトにやってもらいたい事があるんだ」

「えっ!? ふ、ふーん」


 一瞬、ルトは頼られてパァッと表情が明るくなった。

 その後にハッとして、うつむきながらチラ見をしてくる。たぶん、どこかで怒っていた事が引っかかっているのだろう。


「非常に重要な事だけど、ルトになら任せられそうだ」

「も~、てんせーしゃんはしょうがないな~」


 ちょろい!

 ……12歳相手に俺は何をしているんだろう。


* * * * * * * *


 あの後、ルトは女神からもらった、赤い表紙のメモ帳を手に詳しく説明してくれた。

 大体の強さの目安になる位というものが、神達の世界の間ではあるらしい。

 元は天使の階級──天上の階位(ヒエラルキア)を表す物とか言っていたが、俺にはよくわからない。

 弱い順から。

 下級第三位──素手の人間や、ゴブリン。たぶん俺がここ。

 下級第二位──中世レベルの武装した人間、オーク、牙や爪を持つ強めの野生動物。

 下級第一位──魔法やアイテムで強化された熟練の冒険者や、魔法使い。ルトが言っていたゴーレムとかリッチがここ。たぶん銃もここに入りそう。


 中級第三位──人外の強さ。エーテルをある程度使えると、この段階になる事が多いらしい。ルトはこのくらいという事だ。弱めのドラゴンもここ。

 中級第二位。

 中級第一位。


 上級第三位──神々の領域。

 上級第二位。

 上級第一位。

 ここまでくると、後はもう上級第一位で団子状態になり強さが計れないとか何とか。

 そいつらが使う高性能な武器は喋ったり、動物に姿を変える事もできるらしい。


 ちなみに、中級からは剣や弓といった物理的なものに耐性を持ち始める者が多い。

 なので、安心してルトに頼み事が出来る。

 ルトが単独行動をしている間、俺はこの屋敷でレイジョ様として振る舞う。

 出来る事が少ない足手まといとも言える悲しみ。


「ふぅ……」


 屋敷のラウンジで紅茶を優雅に飲み、窓の外を見て溜息を吐く。

 深窓の令嬢というやつだろうか。まさか俺がそれになるとは思いもしなかった。

 それにしても、この屋敷はでかい。

 広大な森も敷地内にあるし、ラウンジも日本語で居間とか言ったらバチが当たりそうな程でかくて豪華だ。

 というか、なんでラウンジが6ヶ所もあるんだよ。

 ルトが言うには、客用とか王族用とかやんごとなき理由があるらしいが……。

 屋敷というよりちょっとした城だ。


「ご機嫌麗しゅう、レイジョ様。何か悩み事でしょうか?」


 何か聞いた事のある声。

 だが、屋敷の中という事で完全に油断していた。


「ご機嫌麗しゅう、ちょっとこの先の事を」

「へぇ、転生者。地獄ヘルヘイムの事を考えていたのか」


 黒いシルクハットに、スーツを着た野火のロギだった。

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