第1話「友達」
小学校を卒業して、中学校に入学した。
少しわくわくしたけど、緊張と不安が勝った。
小学生の頃のようになりたくなくて、傷付きたくなくて…
私は最初から人と距離を置いた。
最初にする自己紹介。
緊張であまり声が出なくて、何度も繰り返し言うことになった。
休み時間になって、周りの皆は勇気を出して知らない相手に話しかけていた。
小1の頃の自分みたいで少しだけ寂しかった。
私は持ってきていた本を開く。
好きな小説だったから少しだけ寂しさが紛れた。
しばらく本に夢中になっていると、背中を突っつかれた。
最初は気のせいだと思ってそのまま読んでいたらまた背中をトントンってされた。
驚いて振り返ったらメガネをした一つ結びの女の子が微笑みながら後ろの席に座っていた。
「ねぇ、何読んでるの?」
初めて話し掛けられた。
「え…あ…こ、これ…。」
戸惑って、戸惑って、小さいけれどやっと声に出せた短い言葉。
それでも、ちゃんと聞き取ってくれた。
「あー、これ私も読んでるよ!面白いよねっ!」
パッと花が咲いたみたいに笑う女の子につられて私も笑顔になる。
「あ、私ね、月野香穂。よろしくね!」
「あ…う、うん。私は…光崎華乃。よろしく…。」
私達はそれから少しずつ、少しずつ話すようになり、ゆっくり時間をかけて友達になった。