雷田十字郎(父)と橘行雄(師匠)
瞬間移動の訓練が始まった。
「この写真を見て、物の配置などを
しっかり覚えておいて下さい。」
悠介は写真をじーっと見た。
「あ、ついでにここの配置も
覚えておいて下さい。
帰れなくなりますから。」
そんなもの、嫌でももう覚えた。
一晩いれば、大体は覚えられる。
この人が起きるの遅かったおかげで、
中を見学できたし。
「覚えましたか?」
悠介は頷く。
「OK。じゃあ、
そのまま足に力を入れず、跳べ!」
ひゅん!
気がつくと、悠介は写真の中、
学校の屋上に居た。
暫くして、橘が瞬間移動してきた。
「初めてにしては、上々の結果です。
本当は、これは普通、一週間たたないと
やらない訓練なのです。」
…え!?
「な…何で、そんな難しい訓練をいきなり
俺に課したんですか!?」
「十字郎さんの御子息だからです。」
…え!?
「親父のこと、知ってるの!?」
「はい。彼は私の師匠ですから。
10年ほど前は、僕はここで
彼に訓練を積ませてもらいました。
最後の訓練が、彼に見守られながら
怪物を倒す、というものでしてね。
しかも生活は自給自足。
日本ではやりにくいので、
海外でやっていました。
キツかったですよ、あれは。」
なるほど、親父が海外出張、て
言ってた訳がわかった。
この人の訓練を見守るためだ。
「ちなみに私が戦わなかったのは、
十字郎さんに
『俺の息子を立派にしたら、
怪物と戦うことを許す。』
と仰ったからです。2つめの理由が
これですよ。私のためです。
私が早く怪物と戦いたいからです。
御理解いただけましたか?」
この人がずっと敬語な理由、
やっと分かった気がする。
十字郎(親父)の息子だからだ。
そうと決まれば!
親父の期待に応えるため、
早く強くならなきゃな!




