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雷田悠介
何だ、粗筋だけかよ。
何を拾ったのかも分かんないし、
主人公の名前も分からない。
てか、酷いな。
30分かけて粗筋だけって。
TVを見ていた雷田悠介はそう思った。
彼は笹塚学園中等部2年生。
つまり中学2年生である。
今日は夏休みに入ったばかりの
7月26日である。
彼が今住んでいる家には、
彼以外住んでいない。
理由は海外出張である。
といっても十年も帰ってこなけりゃ、
立派に「住んでる」っていえるわな。
彼には弟がいるが、両親と一緒である。
悠介は自分の意思でこっちにいるのだ。
なぜだう、今考えると不思議である。
小さなころ、母がいないため、
弁当屋に金を持っていって
足の不自由な母のため、
と称して弁当を買った記憶がある。
我ながら棘の道を選んだな、
と今になってそう思う。