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秘密会議(前編)

「そもそもメンズ服持ってないんだけど」


「そこのクローゼットの三段目に一押しのコビッティが入ってる。好きなものを着てくれ」


「違うのが着たい」


 許可が下りたので、クローゼットを漁ってみる。

 あまり服のことは分からないけど、水原のセンスは良いほうだと思う。


「俺は服に興味ない」


「へ?そうなの?決まった系統がなくて、無難に着こなしてるじゃん」


「ディスプレイの組み合わせを全部買っていけば、悩まずに済む」


「何、その金持ち買い」


 プロのコーディネートをそのまま買っているから、手堅いわけだ。

 

 試着してみたけど、ズボンは緩い。

 水原とは似たような背格好なので、服のサイズも同じだと思ったが、そういうわけにはいかないようだ。


「水原、甘いものばっかり食べているから、お腹出てるよ」


 緩いズボンをベルトで絞めるとデザインが歪む。

 うーん、と悩みながら幾つかの服を並べる。


 選んだ服を上下で並べ、また悩む。今時のメンズコーデと言うのがそもそも分からない私にはかなりの難問だ。


「それと、それと、それで合わせたらどうだ?」


 水原が左手で服を指差す。

 デニムのジャケットに、黒のVネックのシャツ、変わった柄のストール。


「ズボンは君が持ってるジーンズで良いだろう。サイズが合わない服は、どんなにおしゃれなものでも、だらしがなく見える」

 

 水原のチョイスした服を着てみると、ぴったりと似合ってる。

 胸元が開いているのが気になったけど、ストールでうまく隠せばおしゃれ度アップ、ばれる危険はダウン。

 

 お!良いかもと鏡の前でくるっとターン。


「君、楽しそうだな」


「うん。意外にノッテきた」


 中学時代から劇に出ると男役だったので、何だか懐かしくなった。



 日曜日は早めに水原の家に行き準備。

 帽子を被って顔を隠すと、良い感じに性別が隠れる。


 髪を逆立ててみよーとワックスで遊んでいる私の前で、水原がホワイトチョコ入りの抹茶ブラウニーを朝ごはんにしている。


 渋い抹茶とホワイトチョコの甘さが絶妙なしっとりブラウニーは、昨夜ママと作った。


 ブラウニーは3日くらい日持ちするので未だ利き腕が不自由な水原の非常食にしようと持ってきたが、朝に完食された。

 

 いつか絶対、水原の胃にアリが湧くと思う。


「そろそろ出なくて良いの?」


 準備万端と水原をせかすと、あと20分は平気だと返された。電車で行くのが当然と思っていたが、水原はタクシーを呼んだらしい。


 足を怪我しているからってタクシーを簡単に移動手段に使うとは、信じられない金銭感覚だ。


「君、何だか慣れているな」


 怪我している左を支え、右足に重心を移動させる。


「うん。酔った空手メンバーとか怪我した空手メンバーとか世話するの日常茶飯だから」


 意識がある分水原の方が楽だ。

 まだ歩くには痛みがあるみたいだけど、全然使えないわけではない。どちらかと言うと右手の方が治療が遅れている。

 いらっとした水原が医者の忠告を無視して使ったので、途中悪化してしまった。


「丸田さんには事情は話してある」


「あぁ、それなら安心。丸田さん、ぺろっと話しちゃうしね」


 痛い目を見た私は、実感をこめた頷きを返す。

 

 タクシーから水原と荷物を店まで運搬。

 本日休業日と札がかかっているが、入口はあいている。ドアについていた鈴が鳴り、丸田さんが出てきてくれた。


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