ミントガム
「ガム、食べる?ミントの辛口だけど」
彼は唐突にそう言い放ち、私が反応する間もなくガムを1つ、掌に落とした。
茜色の西日が眩しいほどに校舎へ差し込む放課後。
ずっと憧れていた先輩を部活終わりの美術室に呼び出した。
告白をするために。
油絵の具の強いにおいが充満していて少し、頭の中が朦朧としてきた。
「先輩のことが、好き...です」
「付き...あってもらえませんか」
―――決意が揺るがないうちに
「気持ちは嬉しいけど、好きな人がいるから。ごめんな」
先輩が立ち去った後、私はそのまま泣き崩れてしまった。
フラれても泣かないと決めていたのに...。
心の、決意の弱い自分にも泣けてきた。
その時、彼がガムをくれた。
私は「なんでここにいるの?」という顔をしてた。たぶん。
―――ゴミ捨て行ってて。帰ってきたらあんたらがいたから
頭をかきながらそう言った後、ガムを口に含み黒板近くのキャンバスに向かった。
はっ、と我に返り廊下に出た。
「あんたら」ということは告白も聞かれていたかもしれない。
恥ずかしくなって一度はとまりかけた涙がまた零れはじめた。
掌に乗せられたミントガムを見てみると下を向いたから涙が一粒、ガムの上に落ちた。
「食べれば少しは、落ち着く、かな...」
ガムを口に放り込んで1回噛むとミントの香りと強い刺激が口じゅうに広がった。
とても辛いその刺激は落ち着くどころか、さらに涙を出させた。
辛い辛い刺激は嫌だった。
嫌なら噛むのをやめればいい、
口から出せばいい、
でも、
―――暫くはこの気持ちに溺れていたい...
読んでいただきありがとうございます。
短編小説って書くの難しいなぁ、と思いながら書いたので
描写が読み取りにくいかもしれませんが...。
後味も、スッキリしないしよくわからないと思いますが、
超初心者ということでお願いします。