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絶滅種  作者: てつまる
7/7

コンビニ 2

やっと、少しだけ時間の遣り繰りが出来ました。

来週は僅か15分間、人に会うために往復で5時間の新幹線……


誰か代われよ!と叫んでも……虚しく響くだけです。


なかなか進まないですが…


久しぶりの『絶滅種』地味な内容で申し訳ありませんが……


こだわります!


読んでやって下さい。

「おい!」


稲本が倉本と本田に呼びかけて部屋の外に出るように促した。


2人が事務所を出ると稲本は事務所のドアをキッチリと閉め


「山口くんのロープ、外れたりせえへんやろな?」


「まぁ無理やろ。固結びしてあるし、タップリと水にも濡らしてから…更に強く引っ張ってるし」

「そんならええわ。

よう、聞いてや。居酒屋で、チャイナインフルエンザのワクチンを打ったらあかんって話しがあったやろ?」


3人は事務所から離れるようにコンビニの店内に向かった。


シャッターが降りた店内で倉田と本田は思い思いにレジカウンターに腰掛けたりしながら稲本の次の言葉を待っていた。


「先輩の話しでは、あの水の中には……現在の科学では分析でけへん成分が何種類もあるらしいんや。実はその内の数種類がチャイナインフルエンザに劇的に効くらしい。水分として補給した場合はインフルエンザを叩いてから体内から小便で排出されるらしい。体内に残らんからインフルエンザが発症してからしか効果がないんや。

そこで、その未知の成分を壊さずに…

正直に言えば、壊れるどころか人間の血液に非常に親密性が高くて、血液の主成分のヘモグロビンに結合していきよるんや。何故か、通常の食料や飲料みたいに体内の内蔵からの吸収はなく、直接血液にしか結合せんらしい。

まるで血液を捕食しとるみたいなんや!ムチャクチャ気味悪いやろ?」


倉本は僅かに理解した様子であったが、本田はまるで理解が出来ずに店の中をウロウロしながら、棚からガムをつまみ上げていた。


「イナ。と言うことは……チャイナインフルエンザワクチンを接種した人間は……あいつ等みたいになるっちゅうんか?」

「せやな。問答無用にゾンビになっとるからこんだけの時間で蔓延しとるんやろ。それに、噛まれてもアウトの可能性大やな。」


「噛まれてもか?なら、山口はなんでゾンビにならへんのや?」


「そこや!そこがわからんのや。」


「ちょいまち!分かってる情報だけやけど……山口は普通のインフルエンザワクチンすら予防接もしてへん、しかし子分は接種しとったな。」


「倉本ぉ、お前の言い方やとインフルエンザワクチンを打ってたら、噛まれたらゾンビになるってことか?

せやけど……何で普通のインフルエンザワクチンを打ってただけで噛まれたらゾンビになるんや?」


あまり理解出来ていない本田であったが、チャイナインフルエンザと普通のインフルエンザの違いは分かったみたいだった。


「噛まれただけでは、唾液が血液に混ざるだけやけど…

一応唾液も体液やさかいな。感染するんやろ。」

稲本もそこは曖昧にしか解明が出来なかった。


「稲本、こうは考えられへんか?

チャイナインフルエンザワクチンは血液とは直接的に結合出来るが、他の体液とは結合でけへん、せやからインフルエンザウイルスを宿主として噛みついた相手にインフルエンザウイルスとして侵入して、体内でチャイナインフルエンザウイルスに変異する。って」


稲本は難しい顔をしながら……しばらく考え込んで


「もし、倉本の仮説が正しいとしたら………」


「したら?どないやねん?噛まれたらゾンビになるっちゅうだけやろ?」

本田が話しに割って入ってきた。


「いや!そんな単純な話しやないで!」


「単純で悪うございましたね」


すねた本田はいじくっていたガムの包みを開けてガムをほうばり始めた。


「チャイナインフルエンザワクチンは意志を持って宿主を増やしている。増殖しようとしているっちゅうことや!」


「何や、ゾンビの次はリングかいな。チャイナインフルエンザワクチンは貞子の怨念が作り出したんか?

長野の水は貞子が落ちた井戸から汲み上げとんのかいな?貞子が落ちた井戸は伊豆かどっかと違うかったか?」


本田が話しを茶化していたが………


「確かにリングって話しは別にして、地球外生命体とか未知の生命体って線とか……

いや、考えすぎで単なる突然変異なだけかも知れへんな」


倉本の真顔を見て、本田の膨らませていた風船ガムは瞬く間に萎んでしまった。


「どちらにせよ。チャイナインフルエンザワクチンは警察や自衛隊や役人に優先接種した後に一般にも接種が始まった上に、普通のインフルエンザの大流行の兆しでインフルエンザワクチンの接種を受けた人達も大量にいとるやろから……

周りはゾンビだらけってことやな。」


稲本の言葉に倉本と本田は顔を見合い言葉をなくした。


「悲壮な顔したってしゃぁないやろ?2人ともそんな顔してたら女性陣の質問責めにあうで、顔でも洗ってきたらどうや?」


稲本の勧めで2人は、いそいそと顔を洗いに行った。


さて…ここの食料って言っても…保存が効くやつは菓子とカップ麺くらいしかあらへんし……参ったな。


男達が困り果てている中、女性陣はワイワイと食事の用意を行っていた。

「料理って言ったって……お湯を沸かして、余ったお弁当をチンしてなんて……倉本さん達に、女のくせしてって言われないかしら」


郁恵は最年長らしく気遣いを見せながら食卓代わりの机の上の食材を眺めていた。


「ビールもあるし、ピチピチの女子高生の由紀ちゃんに奈緒美ちゃんが手酌でもしたら、文句はないんと違う?」


「スープやったら一品増やせるけど?」


奈緒美がク○−ルのカップスープを買い物籠から出していた。


「ちょいまって!どんだけ篭城するんか分からへんねんやから、今日・明日は保存の効く食品は残してナマモノや日持ちせえへんやつにしたほうがええんちゃうかな?」


「由紀ちゃん。若いのに…しっかりしてるわねぇ。それなのに…私は…」

一品と言われて、一気にツナ缶を5つも開けてしまった郁恵が、6つ目のツナ缶を握りしめながら、シマッタ!と言う顔をしていた。


「おっ!ええ匂いやんか?」


鼻をクンクンさせながら、本田が部屋に入ってきてどっかりと座りこみ、机の上の缶ビールのブルトップを勢いよく引き上げた。


ブッシュュュュッッ


本田は、勢いよく噴き出すビールの泡に慌てて口をつけ、ゴクゴクと一気に缶ビールを飲み干した。


「プファァァ!いやあ、ビールが上手いなぁ!」

そこへ、倉本が現れて


「コラ!ビールなんか飲んでどないすんねん。」

「ええやんけ。ビールくらい。こないな世紀末、ビールでも飲まなやってられへんで!」


「アホか!まだどんな危険があるかわからんねん。俺達が順番に警戒せなあかんやろが!へたに飲んでて、寝てしまいましたわ、全員の命を脅かすやで」


続いて現れた稲本も、倉本の横で腕組みをしながら本田を見下ろしていた。


「スマン!スマンって……そんなに、怒らんでもいいやんけ。ほら、俺の好物の牛焼き肉弁当は譲ったるから……」


本田は、1個しかない牛焼き肉弁当を持ち上げて、倉本か稲本のどちらに渡すかを考え込み、答えが見つからずに女性陣に助けを求めるように情けない顔を向けた。


「まぁ、まぁ、倉本さんも稲本さんも、そう怒らんでも。

夜中の番は私も手伝いますし……せっかくの食事やから、楽しくしません?」


郁恵が仲を取り持ち倉本と稲本も仕方なく机に向かった。


郁恵は本田にウィンクをしながら


「さぁさぁ、まずはお腹一杯にしましょうね。アルコールはダメみたいやから、ペットのお茶やけど……由紀ちゃん!」


指名?された由紀がペットボトルのお茶を少しだけ持ち上げて


「倉本さん、稲本さん、本田さん。今日は私達4人を助けていただいて、ありがとうございました。こんな事態なんで、何んのお礼もでけへんし、お礼・お礼って言うて、また、郁恵さんや香織ちゃんが暴走しても……それはそれで私が困るし…」


郁恵と香織が口々にに文句を言い出したが由紀はその文句を無視して言葉を続けた。


「本当に、助けてくれてありがとう。」


最後のありがとうは涙声でよく聞き取れないほどであった。


「みんな、聞いてくれるか?今の由紀ちゃんのお礼で……謝ったりするのは止めにせえへんか?

助けたと言っても、所詮、コンビニに立てこもってるだけのことや。

いづれ、ここの食料もなくなる。その時こそ、みんなで力を合わせなあかんことになる。多分、遠慮なんかしてられへんで、みんな今から助けあう仲間や!俺やイナや本田は……大学からのツレをなくしたばっかりやから、乾杯とはいかんけど……な」


「そうね。でも……湿っぽいのはなし。食べましょ」


郁恵の一声で、皆が弁当に箸をつけ始めた。


本田はちゃっかりと、牛焼き肉弁当をほうばっていた。


和気あいあいとした食事もあっという間に全員のお腹に入ってしまった。

タイミングよく、奈緒美がアイスクリームを店に取りにいき、全員でアイスクリームに舌鼓をうっているなか


「1階の警察の人はどうなるんですか?噛まれてたみたいやけど…ゾンビになるん?ご飯はどないするん?」


稲本の横でアイスクリームを食べていた香織が唐突に誰ともなく喋りはじめた。


「乱暴されたんわ…そらショックやけど。何や、1人だけはみごにするんわ、かわいそうなんやけど……」


「香織ちゃん!それってあかんと思うわ!

テレビで見かける、ヤクザモンの情婦のセリフやん!あんな奴に情けかける必要あらへんで」


奈緒美が香織に詰め寄っていった。


「せや!せや!ほっとき。あんなん」


本田も同調していた。


「山口くん。あっ、下の警官の名前な。

取り敢えず彼には朝まではあのままでいてもらう。いつゾンビになるかわからんし、例えゾンビにならへんでも信用はでけへんしからな。」


アイスクリームを食べ終えた、倉本と稲本は、郁恵に本田を任せると目配せをして1階に降りて行った。


郁恵は、由紀と奈緒美に片付けを指示して、本田と香織を連れて隣の部屋に行き、ありったけの布団や毛布を食事をしていた部屋に運びこんだ。


「女性陣はここで寝るんかぁ?」


「全員でこの部屋で雑魚寝にしませんか?

いづれ、電気も止まるでしょ?

この部屋にこれだけの人数で居てれば、それだけでも結構暖かくなるでしょ?

どうせ全員着の身着のままだしね。早くそれにもお互いにも慣れた方がいいでしょ?」


「ああ、俺は別段構わへんけど……」


「それより、布団を敷くのを手伝ってもらえるかしら?

それと……男性女性の境界線には私と本田さんて寝ましょうね!」


「へっ?」


訳がわからぬままに準備が整い、女子高生達はさっさと3人が抱き合うようにして布団を被ってしまった。


「おいたはダメですよ!さぁ、本田さんも仮眠してくださいね。さぁ早く!」


郁恵の勢いに負けて、本田は郁恵の布団の中にもぐり込み、出来るだけ布団の端に寝るようにした。しかし、この緊張よりも、生死と隣り合った緊張がほぐれた方が大きかったのであろう。数分とたたずに深い眠りについた。


「一応。もしものことがあったらあかんから、渡しとくわ。確か…イナはハワイがどっかでやったことあるって言うとったやんな」


倉本は、警官から押収したM37回転式拳銃と実弾10発を稲本に手渡した。


2人が部屋に入ると、気味が悪いほど室内は静かだった。

山口はうなだれる様に頭を倒したまま、微動だにしなかった。

倉本と稲本はお互いに顔を見合い頷きあった。

稲本は手に持っていたタオルを捻り山口の後方に位置した、ゾンビ化してた場合に猿ぐつわをはめるためであった。

倉本が山口の正面に立ち、木刀で顎の下を持ち上げて山口の顔を正面にむけさせた。


「!?」


一瞬たじろいた倉本は、改めて山口の顔を覗き込んだ。


青白い顔にはまさにミミズが這った後のように何本もの血管が浮き出ていた。


「あんたか?怖い兄ちゃんは?」


僅かに呂律が回っていない喋り方であった。


「山口?」


異変に気づいた稲本が正面にまわってきた。


「山口、今はどんな気分や?」


「ごっつう気持ちええや。腹へったなぁ。肉が食いたいわ」


「名前は言えるか?自分の名前は言えるか?」


「そんなん……腹減って分からへん。ちょっとだけ指かじらせてくれへんか?こ・小指でええわ。頼むさかいに」



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