裕福なる放蕩
アッシジの丘に日が傾き、金色の光が石造りの家々を染めるころ、フランチェスコは仲間たちと街の広場を歩いていた。商人の息子として裕福な日々を送る彼は、服も靴も豪華に整え、誰よりも目立つ存在だった。
「今日の宴は俺の家でやるぞ!」フランチェスコが宣言すると、仲間たちは歓声を上げた。パオロは腕を組み、にやりと笑う。「ああ、また財布を気にせず騒げるな」
「贅沢すぎるって母さんに怒られそうだ」ルカが呟くと、フランチェスコは笑って肩を叩いた。「母上の祈りは心配無用さ。今は楽しむ時だ!」
その夜、広間には豪華な料理と香辛料の香りが満ち、奏者がリュートを弾く音に合わせて子どもたちも踊った。フランチェスコはその中心で笑い、歌い、酒を振る舞った。
だが、母ピカの目には薄い陰が差していた。「楽しさはいいけれど、心が奪われぬよう…」彼女はそう祈るしかなかった。父ピエトロは酒を傾けながらも満足そうに息子を眺め、「やはり我が家の血だ」と誇りを隠そうとはしなかった。
友情と贅沢に満ちた夜の中で、フランチェスコはまだ知らない。豪華さと自由の裏に、やがて自分を試す運命が待っていることを。町の光と影が、少年の心を少しずつ試し始めていた。
広間で宴が始まると、パオロが肘をつきながら言った。「フランチェスコ、また俺たちを金の力で笑わせるつもりか?」
「もちろんさ。楽しむのに遠慮はいらない!」フランチェスコは笑いながら、杯を高く掲げた。
ルカは皮肉を込めて呟く。「贅沢もほどほどにな。金は尽きるものだぞ」
「そのときはまた父上に頼むさ」とフランチェスコは冗談めかすと、パオロも笑った。「ほんと、親に甘えるのは得意だな」
マッテオは鼻を鳴らして、「酒も食べ物も、全部俺たちのために? 贅沢すぎるぞ」
「贅沢こそ、友情を祝う儀式だ!」ステファノが大声で叫び、皆で笑った。
そこへ父ピエトロが入ってきて、肩を叩きながら言った。「フランチェスコ、楽しそうだな。しかし金だけでは町の人々の心は得られんぞ」
「父上、今は笑いを広げるのが僕の役目です」
母ピカは静かに息子の肩に手を置き、囁いた。「楽しむのはいいけれど、心の道を見失わないで。光を忘れずに」
フランチェスコは微笑みながらも、胸の奥で小さな決意を抱いた。金と遊びの夜は続くが、心の声を無視してはならない――そう感じながら、笑いの輪の中心に立ち続けた。