町の誇り
アッシジの広場は、日曜日の朝になると商人たちの呼び声や教会の鐘の音で賑わいを増した。石造りの家々が並ぶ通りには、香辛料や布、絹の匂いが混ざり合い、町の誇りを象徴するかのように活気が満ちていた。
フランチェスコと仲間たちは、広場の中心でいつものように戯れ、通りかかる町人や子どもたちを巻き込んでいた。陽気な笑い声は、石畳に反響し、町の人々の心まで温める。
「フランチェスコ、また祭りの出し物を考えたのか?」とルカが笑う。
「もちろんさ、今年は新しい歌を作るんだ。町の人々も楽しめるやつさ!」とフランチェスコは胸を張る。
町の誇り――自由と自治の精神は、彼らの遊びにも自然と反映されていた。誰もが声を上げ、意見をぶつけ合い、笑い合う。それは戦や権力に縛られない、町の独自の生き方であり、フランチェスコの心を大きく揺さぶった。
クララも教会の階段からそっとその光景を見つめていた。祭りや騒ぎに興味はなくとも、フランチェスコの生き生きとした姿に、少女の心はひそかに引き寄せられる。
フランチェスコはまだ知らない。町のこの活気、自由、友情――すべてがやがて彼の信仰と使命に深く関わることになるのを。
広場で騒ぐ少年たちの輪に、パオロが声を張った。「フランチェスコ、今年の祭りではどんな芸を披露するんだ?」
「新しい歌を作ったんだ! 町の人々も笑顔になるやつさ」フランチェスコは胸を張って答える。
「お前はいつも口ばかりだな」とルカが冷やかす。「本当に歌で人の心を打てると思ってるのか?」
「心を打つかどうかはわからない。でも楽しませる自信はある!」フランチェスコは大きく手を振った。
その様子を見ていたマッテオが笑いながら言う。「そうだ、その調子で俺たちにも酒を奢れよ」
「酒なら、俺が樽ごと運んでやる!」ステファノが豪快に答え、皆はまた笑い声を上げた。
そこへ父ピエトロが現れ、額に皺を寄せながらも笑顔を浮かべた。「フランチェスコ、祭りは楽しそうだな。しかし遊びばかりでは商売が心配だぞ」
「父上、僕は町の人々を喜ばせたいだけです」
「喜びも大事だが、金と名誉も忘れるな。町の誇りは楽しさだけでは守れんのだ」
母ピカはそっと息子に手を置き、囁いた。「心の喜びを大切に。でも目を曇らせず、道を見失わないでね」
フランチェスコは笑顔を崩さず、胸の奥で小さな決意を固めた。町の自由と活気の中で、彼の夢は今日も育まれていくのだった。