アッシジの聖フランチェスコ
裕福な商人の子として生まれたフランチェスコは、陽気で人々に愛され、騎士に憧れる放蕩の若者であった。仲間たちと歌い、宴に明け暮れ、栄光を夢見る彼は、戦乱に巻き込まれて捕虜となり、病を得る。帰郷後、虚しさと挫折を抱えながらも、やがて祈りと幻視を通して神の声を聴き、内面に大きな変化が芽生えていく。彼は父の富と世俗の望みを拒み、裸一貫で神に仕える道を選ぶ。
町の人々は嘲笑し、父は激怒するが、母と少数の友が彼を支えた。やがて、名門の娘クララが彼の信仰に共鳴し、財産を捨てて修道の道へと歩み出す。二人は世俗を超えた友情と信仰の絆で結ばれ、周囲の青年たちも次々と彼に従い、やがて「小さき兄弟会(フランシスコ会)」が形を成してゆく。
フランチェスコは清貧と隣人愛を貫き、自然のすべてを「兄弟」「姉妹」と呼び、鳥や獣にまで語りかける存在となった。最後は病に倒れるが、その魂は光に包まれ、多くの人々に「神と共に生きる喜び」を遺した。
この物語は、一人の放蕩息子が苦難と回心を経て、やがて世界を照らす聖人へと変貌してゆく軌跡を描くものである。