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こんなバイトで一万円かぁ……。
マジ最高だろ。
世の中、真面目に働いている方が馬鹿に思えてくる。
毎日満員電車に乗ってるサラリーマン乙!
「やっぱ、賢いやつが得をするよう世の中なんだよなーあ」
9分割されたモニターは異常なし、
俺はワイヤーイヤホンを耳につけて音ゲーの世界に没頭した。
時刻は朝の6時。
これといって、何かが起こるわけでもなく俺のバイト初日は終わった。
朝出勤の斉藤さんに軽い引き継ぎ(とくに何もなかった)と、異常なかったことを伝え、俺はタイムカードを切った。
外に出ると朝日が眩しい。
片手で顔を覆い隠し、目を細める。すると、お腹の虫が鳴きはじめた。ぐーうっと、腹の虫たちが今にも合唱コンクールをはじめそうな勢い。迷惑なやつらだ。
どんちゃん騒ぎをするならよそでやってほしい。仕方ない、
「コンビニ寄って帰るか」
と、俺は売れ残っている弁当の中から適当に目に留まった豚の生姜焼き弁当を持って家に帰る。
築30年のボロアパート。駅から徒歩30分と立地はあまりいいとは言えない。
風呂とトイレは一緒だし、畳はささくれてボロボロだし、何より部屋が狭い、ベッドなんてものを置いた日には部屋の半分がベッドで占領されてしまう。
すると俺の安らぐ空間はどこにある?
ンなもん、どこにもない。そもそもこの床はベッドの重さに耐えれるのか。俺は若干窪んだ畳を見て不安に思った。
冗談じゃないぞ。
ベッドで寝ていて、床が抜けてみろ。そのままおっちんじまったら……。
安眠どころか、
永眠だ。
あの世で、俺は閻魔大王様に何と言えばいい?
笑い話にもならん。いや……なるのか?
「そもそもベッドなんて買う予定もないけどな」
俺は万年敷きっぱなしの布団の上でコンビニ弁当をむさぶり食らった。
腹が満たされると、プッツンと腹の虫たちがどこかにいなくなった。現金ならヤツらめ。
時刻は7時30分。
「さすがに眠いな」
俺は布団で横になって目を閉じる。
微睡の中で、意識がゆっくり落ちていった。
薄暗い廊下。
そこで誰かが、俺を呼んでいる。
だれだ?
不意に頭上で何か気配を感じた。
決していいものではない。
そう、突き刺さるような視線だ。
誰かが俺の顔を覗き込んで見ている。それはまるで長い舌を伸ばしてこちらを舐め回すかのような、そんな不愉快なもの。
ちらっと横目で見ると、俺は警備員の制服をきていた。ということは、ここは会社の廊下ということになるのだろうか。にっしても……身体が動かねぇ。
くっそ、誰だ。
今なら許してやる。俺の黄金の右ストレートが炸裂する前に俺を解放しやがれ。
だが、声が出ねぇ。
俺は声の代わりに、そいつに念を送ってやった。
すると、そいつがどこかに消えていくような気配を感じた。
「ぷっはあ!」
と、俺は目を覚ます。
シャワーでも浴びたのかというくらい全身大量の汗をかいていた。
「夢かよ」
それにしてはリアルな夢だった。
時計を見ると、夜中の22時30分。
もうすぐ、夜勤バイトの時間だ。
俺は急いでシャワーを浴びて家を出た。




