第3話
システム操作からフレンドチャットを開くと、ユズさんから手を振っているスタンプが送られてきていた。俺も同じものを送り返してみる。
「お、大丈夫みたいだね」
「問題なし」
確認もすんだので、俺はさっき二人が話していた内容について聞いてみる。
「そういえばミルクさんと二人で話してたけどなんの話をしてたんだ?」
「えっ? それはその……」
「ああいや、答えたくないなら別にいいけど」
聞いてみたが言いずらそうにしていたし、やはりやめておこう。知らない方がいいこともあるってやつかもしれない。
「それはまた今度いうから、今は内緒で……」
「ん? 了解」
今は教えてくれないけどいつかは話してくれるらしい。忘れないようにしないとな。そういうわけでほかにいろいろな話……主に攻略前線の話をしていたところ、頼んでいた品が運ばれてきた。
「お待たせしました~。醤油ラーメン二人分です」
「ありがとうございます」
「ミルクちゃんありがとう! いただきます!」
目の前にラーメンがおかれると同時にシステム操作でインベントリから箸を取り出したユズさんはすぐに食べ始めた。
いつものってラーメンなのかよ。まぁ俺もラーメンは好きだし、ありがたくいただこうか。システム操作でインベントリから箸を取り出す。
「いただきます」
日本人として感謝の言葉を述べて、俺もラーメンを口にする。見た目からわかってはいたがあっさり目の醤油ラーメンだ。俺の好みとぴったりだな。ユズさんはもくもくと食べている。しかし随分とおいしそうに食べるなぁ。ミルクさんの方を見ると、子供を見守るような目でユズさんの方を見ていた。なんというか、気持ちはわかる。
しかし俺もユズさんを眺めていては食事が終わらないのでラーメンを食べる。
「「ごちそうさまでした」」
どうやら俺とユズさんは同時にラーメンを食べ終えたらしい。少し驚いてユズさんの方を見るとユズさんもこっちを見たようで、ちょうどぴったりと目が合った。少しの沈黙ののち、俺たちは二人で笑いあった。
「ヴィンセントも結構食べるの早いタイプなんだね」
「ユズさんも早いじゃん」
二人で少し食後の話をしているとミルクさんが来て食器をプレートに乗せてこういった。
「二人でまた来てくださいね」
「もちろん。また来ますよ」
「また来るね~!」
ミルクさんに頭を下げて店からでると、すぐにユズさんが話しかけてきた。
「ヴィンセント、今日のこの後の予定は?」
「少し買い物にでも行こうかと」
「いいね、それじゃあボクも連れてってよ」
「いいよ。じゃあこの街の案内とか頼めたりする?」
「もっちろん!」
ユズさんは胸を張ってそう答える。これは期待大だな。
◇◇◇
ユズさんに案内してもらいながら、雑貨などの買い物をしていると時間が過ぎるのが早いもので、すでに時刻は午後7時となっていた。
「そろそろボクは一旦落ちなきゃだなぁ」
「お疲れユズさん」
今は日も傾いた街のベンチで二人で座って休憩中だ。どうやらユズさんはリアルでやることがあるらしい。
「ヴィンセント」
「なに?」
「次はいつ、会えるかな」
夕日を見ながらユズさんがそう聞いてきた。そうだな、俺はリアルで不労所得があって働く必要がないうえ、このゲームにドはまりしていて基本的にずっといる。だから……。
「呼んでくれたらいつでも会えるよ」
どんな用事があってもユズさんを優先できるくらい、今日二人での行動は楽しかった。
「ほんと!? じゃあまた明日呼んでもいい?」
「もちろん」
「ありがとね! それじゃあボクはこれで。また、明日ね?」
「うん、また明日」
ユズさんはシステムを操作してログアウトしていった。夕日のおかげか、ユズさんの笑顔がとてもきれいに見えた。明日が楽しみになったな。それじゃあ、日課の狩りと前線攻略、行きますか。
機神と呼ばれる少女と反逆の剣士。火力特化の二人が出会ったのは、ごく普通の街中であった。