第2話 派遣社員の告白
俺は失踪した社長のオフィスに行く事にした。オフィスは新宿の高層ビル内にある。
すでに俺が行くのは社長の奥さんから告知されており、従業員は俺に協力するように夫人から言明があったので、皆協力的だった。
俺は会社で用意してくれた応接室で社員や派遣社員、出入りの業者、警備員、設備のメンテナンス担当の会社の人など様々な人達と1人ずつ会話したが、社長の行方につながるような話はなかなか出てこない。
当然だ。何か知ってるなら最初に警察が捜査に来た時とっくに話しているだろう。
やがて1人の若い女性が、応接室に入ってきた。派遣社員である。名前は八重樫早紀だった。
彼女は部屋に入った時から興味深そうな笑顔を浮かべて、俺を見ている。
「探偵って本当にいるんですね。映画やドラマの中だけかと思ってた」
開口一番、早紀がそう発言した。俺は思わず笑ってしまう。
「まあ普通に暮らしてたら、あまり縁はないだろね。ともかくおかけになってください」
俺は、女に椅子を薦めた。
「この会社では、どのくらい働いてるの」
「半年。でも、もう他の会社に行く。だって係長がエロい目で、いっつもジロジロ見るんだもん。派遣元に相談して、派遣先を替えてもらったんだ」
「そうなんですね。ところで八重樫さんは、社長の失踪事件について、何か知ってます」
俺は、尋ねた。
「知ってるよ」
早紀は、嬉しそうなスマイルを浮かべる。