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姉妹スイッチ  作者: 中尾
第二章
2/12

今日もどこかで雨が降る①

 昨日まで雨が続いていた梅雨の時期に珍しく晴れたその日、マミは死体を発見した。


 最初は、人と気が付かなかった。


 何か大きな荷物が落ちているようにすら見えた。しかし、異常なまでの匂いと異様な雰囲気。


 なんでこんな日に限って晴れているのだろう。


 死体だと気が付くまでそしてすべてを理解してからも、マミは声を出せなかった。



「嫌な気持ちだろうとは思う。しかし、君の話が重要だ。話を聞かせてくれないだろうか」


 人のよさそうな警察官が、声色を出来るだけ優しくしてマミに問いかけた。



 結局マミは発見したのち、なにもできないままそこに突っ立っていた。


 たまたま通りかかった大人が警察を呼び、マミは保護されることになったのだ。


 発見してから保護されるまで恐怖のあまり声すら出せなかったマミに、警察を呼ぶなどという冷静な対処を望むべきではないだろう。


「発見したときについて教えてほしい。公園のそばでおかしなものを見かけたりしただろうか」


 マミは最小限の動作でそれを否定した。しかしマミにできることといえば、それだけであった。


 マミはまだ中学生なのだ。


「怖かっただろう。この公園はよく通るのだろうか……なるほどなるほど。


 では昨日も通った? 昨日は通ってない? ふむ、通る日は決まっているわけじゃないのだろうか。


 あぁそうか、学校に行く平日とそうじゃない休日という境があるのだね。


 それだけじゃない? ほう、妹さんの迎え? 


 ……新垣マミと名札を見るに、お父さんはあの有名な“英雄”だろう?


 彼は家に帰ることが少ないと聞いたことがあるが、まさか妹の世話をすすんでやっているのか。


 ……親がご立派だと子どもも苦労をするというのは間違いではないのだな。いやなに独り言だよ。


 じゃあそういった経緯で発見したということは理解できたわけだし、これから妹さんの迎えを邪魔したくはない。もう聞き込みは終わりにしよう」


 マミの怯えように気を遣った警察官はもういいだろうと立ち上がった。


 しかし走ってきた警察官がそれを制した。何やらまだ確認するべき事項があったらしい。


 しばらく二人で会話をする。


 そしてこれで最後だという風に、マミの前に写真をかざした。


「すまないね、これで最後だ。彼女に心当たりは?」


 すぐに分かった。これは死体の写真だと。

 そして、彼女の正体も。



「……ぉえっ」

 マミは、吐き出した。

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