技術-1
一本だけを当てると宣言した佐山さんは、最初よりも広がったスキットルを見て何を当てるか考えているようだ。
今のスキットル位置は、一番左にあるのが7、7より前にある5と3、真ん中は一番奥に9、9よりも前に11と10が並び、その前に1がある。一番右は奥から8、6、4、2がそれぞれ左側と反対に広がっている。12だけ最初に立っていた位置からあまり動いていない。
「決めたぞ!田中」
「どこを狙うの?」
「12だ!」
確かに先に50点を得点した方が勝ちではあるが、12のスキットルだけをピンポイントで狙うのは難しい。いや、そもそも12のスキットルに関わらず一本狙いが難しい。
「難しい顔をするな」
「でも……」
「ふっふっふっ、まぁ見ておけ」
「わかったよ」
佐山さんは俺を見てニヤリと笑ってスキットルに目線を移した。俺も追うように目線を12のスキットルを映した。確かに周りのスキットルとは一見孤立しているように見える。それでも10や、6と4が割と近くにあるため一緒に倒れる可能性は0ではない。
——本当に12だけを倒すことができるのだろうか……
狙いを定めた佐山さんが「じゃあ投げるぞ」と同時に、気のせいだと思っていた「ソォイ!!」という掛け声とともにモルックを12のスキットルへ向けて投げた。
——!?
俺の一瞬の驚きとともに、モルックが12のスキットルに吸い込まれていくかのように飛んでいきそして——カンッ!と高い音を奏でた。
「よしっ!」
「すご!!!!??」
「ちゃんと見ていたか!」
「見た!見てた!見てました!」
12本全部倒すと宣言した時と同じように、またも有言実行を果たした佐山さんには脱帽だ。年下の女の子がとてもすごい!なんてラノベのタイトルみたいな感想が思い浮かんだ。
「佐山さん、佐山さん」
「どうした?田中」
「質問いいかな?」
「いいぞ!」
12のスキットルを立たせながら「最初と投げ方違ったよね?」と聞けば、佐山さんは素早い動きで俺の腕を鷲掴みにした。困惑する俺に佐山さんは「よく気づいた!!!!」と感動したと言わんばかりの大きな声を出した。そして腕を握る力が無意識なのか強くなっていく。「痛い痛い痛い」と騒ぐ俺に慌てて手を離した。
「田中、すまん」
「大丈夫だよ、佐山さん」
「ありがとう。それで投げ方だったか」
「はい」
佐山さんはモルックを拾い上げて「それじゃあ、説明するぞ」と楽しそうに笑った。
「モルックを縦に持って投げたんだ」
「縦に」
「そうだ。一本狙いをするときは縦の方が、成功率が上がるし、その分外す可能性も上がる。ただスキットルの位置によっては横の方がいいときもある」
「なる……ほど」
「結論は臨機応変にやることだ!」
佐山さんの言葉に「それもそうか」と納得した俺は佐山さんからモルックを受け取り、モルッカーリまで戻った。
「えっと、佐山さんの点数が20点か」
「そうだ、5点の田中はどんどん点数を稼がないといけないな!」
ニヤリと笑う佐山さんの姿に嫌な予感がする。
「田中も12を一本狙いするしかないな!」
——やっぱり、言うと思ったよ!




