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改めて-3

 俺は佐山さんに渡されたモルックを片手にモルッカーリまで戻った。先ほど佐山さんに言われた「全部倒せよ」の言葉が頭にこびりついて離れない。


 ——いや、全部倒すのは無理。


 改めて見ても、佐山さんの投球?いや投棒によりスキットルの間隔は広がっている。到底この20㎝ぐらいしかない木の棒では、すべてを倒すなんてことは不可能だと感じる。


「ねぇ、佐山さん」

「どうした、田中?」

「先に50点を獲得した方が勝ちなんだよね?」

「あぁ、そうだぞ!」

「そうか……そうか……」


 「やはり、すべて倒すしかないのか……」と呟き覚悟を決めようとした俺に、佐山さんは「おいおいおい田中ァ」とアニメでよく見る不良やチンピラのように俺ににじり寄ってくる佐山さんに俺は一歩、また一歩と後ろへと下がる。俺が距離を開けるのを止めるために、佐山さんは俺の腕を掴んだ。


「点数は倒した本数のほかに、もう一つある!」

「もう一つあるの?」

「あぁそうだ!それも1本狙いだ!!!」

「いっぽんねらい」


 俺から手を放し、楽しそうに言い放った。


「スキットルを1本だけ倒した場合は、その倒したスキットルに書いてある数字が点数になるんだ!」

「つまり俺が佐山さんを追い抜こうと思ったら、佐山さんの言う通り全部倒す、もしくは、9以上の数字のスキットルを1本だけ倒せばいいのか」

「あぁ、そうだ。でもな、まだお互いに1投目だ。とにかく高得点だけを考えればいい。つまりだな」

「つまり?」

「全部倒すか!12をピンポイントで倒せ!!」


 ——もしかしなくても、佐山さんは……いや、まだ断定するのはよくない。よくないよな。


 頭に浮かんだある言葉を振り払うように俺は頭を左右に振り、改めて目の前のスキットルに目を向けた。

 スキットル同士は離れているが、うまく当たれば全部とはいかなくても高得点が期待できるだろう。ピンポイントで1本を倒すには、もう少し間隔がひろくないと無理そうだ。そもそも、俺にはピンポイントで倒す技術とか無い。


「よし!それじゃあ、投げます」

「いけ!田中!全部倒せ!」


 モルッカーリから出ないように気を付けて、ボーリングの球を投げる要領で俺はモルックをスキットルに向かって投げた。

 俺の手から放り投げられたモルックは、まっすぐと飛んでいきそして——カンッ!カララッ!と音を立てて倒れていく。


「おぉ、いいぞ!」


 全部とはいかないが、真ん中のスキットルの1、2、4、10、11、が倒れていた。「よし、点数を確認すぞ」と佐山さんが倒れたスキットルに近づく。俺の投げたモルックは遠くにいかず、倒れたスキットルに紛れるように転がっていた。


「田中!点数を発表するぞ」

「お願いします」

「5!ちゃんと、全部地面についていた」

「よかった……でも佐山さんとは3点差か」

「ふっふっふっ、私を簡単に超えられると思うなよ」


 まるで悪役のような、師匠のようなセリフを吐く佐山さんに、苦笑いしか返せない言葉の引き出しが無い俺は倒れたスキットルを戻し、モルックを渡した。


「私が1本狙いを見せてやる!」


 自信に溢れた佐山さんの姿は、なぜだか俺の目にかっこよく映った。




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