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改めて-2

「さぁ!やるぞ!」

「ちょ、ちょっと待って!」



 やる気で満ち溢れている佐山さんに声をかければ、不思議そうな顔をして「どうした?」と首をかしげる姿に俺は緊張から唾を飲み込んだ。



「試合をするって、急すぎて……」

「大丈夫だ!ちゃんと教えるから安心しろ」



「いきなり、放牧するわけないだろう!」と快活に笑いながら、俺の背中をバンッバンッ叩く佐山さんに胸をなでおろした。「ちゃんと一から教えるから安心しろ!」とサムズアップする佐山さんのドヤ顔はとても輝いている。



「私が手本として先攻でいいか?」

「そっちのほうがありがたいです。よろしくお願いします」

「私が全部倒すところを、よく見ておくんだぞ~」

「え?」



 ――全部……倒す……?



 佐山さんは右手にモルックを横向きに持ち、モルッカーリ前に立った。



「いいか田中。投げるとき、投げたときにモルッカーリから出たらダメだから気を付けるんだぞ」

「わかったよ。佐山さん」



俺の返事に小さく頷いた佐山さんは、3mと少し先にある木の棒……スキットルに向かい合う。腰を低くしてモルックを握っている手を前後に揺らす。その姿はボーリングの球を投げる直前のようだ。



「ソォイ!!」



 ――そい?



 佐山さんの謎の掛け声とともに右手から離れたモルックは、左右の平衡を保ち真っ直ぐ12本のスキットルに飛んでいく。そして、カンッ!カンッ!カンッ!カカンッ!と高い音を響かせながら、ぶつかった衝撃でスキットルは花が咲くように倒れていく。

 宣言したように、全部倒れたように見える。



「どうた!!!田中!!」

「見た!見てた!すごい、宣言通り!」

「そうだろう、そうだろう」



 俺は感動と、尊敬を込めて佐山さんに拍手を送った。佐山さんは「さぁ!点数を数えるから着いてこい!」と言いながら俺の腕を鷲掴み倒れたスキットルへ二人で向かった。




「うわぁ……本当に全部倒れてるよ」


 見事なまでにスキットルが倒れていた。



「モルックの点数の数え方を教えるぞ!」

「お願いします」

「一見全部倒れているように見えるが、点数に数えられないものもある」

「え?そうなの?」

「くぅ!!!」

「!?」




 佐山さんは眉を寄せ、突然胸を押さえしゃがみこんだ。あまりの速さに俺はついていけなかった。




「さ、佐山さん?」

「うるるるるるる」



 ――唸っている……だと……



 唸りながらも佐山さんはスキットルに指を指した。佐山さんが指している場所を見ると、11、12、10、4、4つのスキットルがあった。



「まず、この4つは地面についていないのがわかるか?」

「確かにスキットルは倒れているけど、下敷きになってるやつがあって地面にはついてないね」

「そう、地面についていないのは点数として数えられないんだ」

「え、そうなの?」

「悲しいぐらい事実だ……」

「そう……なんだ……」



 佐山さんは気持ちを上げるように、近くに転がっていたモルックを拾いながら明るい声で「田中、私の点数がわかるか?」と俺に問いかけた。

 俺は彼女の点数を計算するために改めてスキットルを見た。スキットルは先ほど指を指した4つ以外は地面にちゃんとついてる。



「地面についてないのは数えないから、合計で8点だね」

「ふふ、我ながらいいスタートだ」

「12点ではないけど、宣言通り全部倒したのはかっこよかった」

「ありがとう、田中!ただ勝負の世界だからな!!次は全部倒して得点にするぞ!」



 そう宣言した佐山さんは、次は本当に全部倒して得点にできそうなほど迫力があった。



「じゃあ、倒れたスキットルの説明をするぞ!」

「お願いします」

「倒れたスキットルは倒れた場所に立たせるんだ」

「つまり、ボーリングみたいに新しく綺麗に立てないんだね」

「そうだぞ!」



 二人で倒れたスキットルを、倒れた場所で立たせていく。最初はきれいにまとまっていたのに、今は一つ一つの間隔がひらき全部倒すのは難しそうだ。



「ほら田中、次はお前の番だ」



 佐山さんは、ずいッとモルックを俺に突き出した。「佐山さん、ありがとう」と言ってモルックを掴んだが、佐山さんは手を放してくれない。



「えっと……?佐山さん?」

「田中!!!!」

「はい!!?」

「全部、倒せよ!!!」



 太陽ように笑う佐山さんに俺は苦笑いしか返せなかった。




 ――さっき、全部倒すの無理って考えたばかりなのにな!





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