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改めて-1

俺は約束を果たすため、いつものように公園に足を運んだ。そわそわしながら、いつも座っているベンチに腰を下ろし彼女が来るのを待つ。


 ――遊ぶ約束をしたのは、いつぶりだろうか?


 楽しみだからか、それとも約束が果たされないかもしれないことへの恐怖か、時間の進みが遅く感じる。まるで1分が10分のようだ。

 体感2時間ぐらい経ったぐらいだろうか、彼女が木箱を持って現れた。駆け寄ろうと立ち上がるが、一歩踏み出して足が止まってしまった。


 ――あれ?自分から話しかけるのって、こんなに怖かったっけ……?


 働いていたときは問題なく話せていたのに。いや、違う。あの頃はロボットのように、頭を空っぽにして家電製品のように働いていた。それと同様に上司も、同僚も、クライアントも、全員をいつしか人と思っていなかったのかも知れない。俺も機械、相手も機械と認識して、人間として死にながら生きていた。それは、生きていたと言えるのか?考えがまとまらない、首が閉まっていく感じがする、呼吸が……

 


「田中!!待たせたな!!!」



 佐山さんの凛とした声が、暗雲から差し込む太陽の光のように俺の思考を切り裂いた。さっきまで感じていた息苦しさが嘘のように楽になった。



「いや、待ってないよ」

「そうか!待っていないなら、よかった!」



 快活に笑う彼女に俺はこっそりと息を吐きだし、また小さく息を吸った。



「それじゃあ田中、今日もモルックをするぞ!」



 佐山さんは宣言すると木の棒を並べ始めた。俺は1と書いてある木の棒から、3mと少し離れたところに足で線を引くことにした。



「佐山さん、この木の棒から3mと少し離れた場所から投げるんだよね」

「よく覚えていたな、偉いぞ田中!」

「あはは……ありがとうございます」



佐山さんに褒められるのは、上司に褒められた時より嬉しいな。木の棒を並べる手を止めて、こちらを見ているから、ちゃんと気持ちがこちらまで真っ直ぐ伝わってくる。まーでも、年下の女の子に褒められて喜ぶ成人男性って傍から見ると相当に気持ち悪いな。



「あ、田中!コレを離れたところに置いてくれ」

「?なんだこれ」



 佐山さんに渡されたのは、三節棍のように細長い木の棒が短い紐で繋がれていた物だった。折りたたまれていたものを広げると、三節混は棍棒の部分が3つあるが渡されてたものは、それは細長い木の棒が4つあり三節混より1つ多かった。



「それはモルッカーリと言って、投げる位置に置くものだ」

「へぇ~すごい、便利だね」

「そうだぞ。これがあれば線はやっていると消えていくが、物体だから線と違って書き直さなくてもいいから革新的な代物だ!」



 俺は手渡されたモルッカーリを持って3mと少し離れたところに置いた。置くとその長さが意外とあることがわかる。端から端までだいたい1mぐらいあり、外側の木の棒2本が真っ直ぐではなく、少し内側へと曲がるようになっている。底辺はないが台形のような形になる。 



「よし!これで準備完了だ!」


 佐山さんは片手にモルックを持ち立ち上がり、俺の方へ近づいてくる。



「それじゃあ田中、今日は試合をしよう!」

「え?」


 佐山さんの宣言に、俺は間抜けにも口を開けることしかできなかった。



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