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魔物-1

「そ、それじゃあ! なな、投げます!」



 山田さんは宣言したあと右足を少し後ろに下げ、モルックを持っている手を前後に揺らす。両目はまっすぐとスキットルを見つめ、狙いを定めている。さっきまで、一番最初が嫌だと顔を青くさせていた人と同一人物に見えない。

 前後に揺れている右手から送り出されるように放たれたモルックは、美しい放物線を描いてスキットルへ向かっていく。見ているだけの俺も当たるという確信があったが、きっとその確信は投げた本人が一番強く感じているだろう。


 モルックが1と書いてあるスキットルに当たりコツン! という音を響かせた。響かせたのだが………



「倒れない………だと……!」



 ぶつかった衝撃でわずかに揺れはしたが、スキットルが倒れることはなかった。



「はわわわわわ」

「投げ方はよかったけど、力が足りないぞ!」

「あー、優しすぎたんだね」



 俺は転がったモルックを取りに行く。その間に佐山さんが山田さんに「もっと、スキットルを破壊するつもりで力を入れるんだ!」とアドバイスをしている。いやいや、壊すつもりで投げる奴はいないだろう……と思ったが、山田さんはそれぐらいの気持ちで投げた方がいいかと納得した。



「はい、次は佐山さんだよね?」

「田中、ありがとな」

「どういたしまて」



 モルックを受け取った佐山さんは何かを思い出しのか「あ!」と声を上げた。



「ど、どうしたの? あきちゃん」

「春はミス1回だ」

「ミスが重なると、なにかあるの?」

「あるぞ! 連続3回、スキットルを倒すことに失敗した場合は失格になるんだ」



「じゃあ、このあと連続で2回失敗したら………」と、顔を青くする山田さんの肩を慰めるように肩を叩く佐山さんは「次当てたら0に戻るから気を落とすな!」と笑っている。



「ま、こちらとしては、春がミスしてくれたおかげで全部倒せるからありがたいけどな!」

「たしかに、一番最初って高得点が狙いやすいもんね」

「田中もわかってきたな! モルックを」



 佐山さんはモルッカーリの前に立ち、スキットルを睨む。



「春、よく見ておけ!」

「は、はい!」



 山田さんの元気な返事を聞いた佐山さんは左足を後ろに下げ、モルックを握った右手を前後に揺らし始めた。





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