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同担歓迎強火オタク

 現在8時50分。

 俺は公園のベンチに座っている。

 約束の時間まで、あと10分。

 今日は佐山さんと俺……だけじゃなく、もう一人いるらしい。いや、いる。もともと、二人の約束に俺が入る形だ。

 正直、しんどい。というか、絵面が犯罪じゃないか?通報されたらどうしよう……自分の想像で冷や汗が止まらない。緊張から両手を握りしめる。握りしめている手が手汗で、ヌメヌメしてきた。最悪だ。


「……あの」


 佐山さんとは違う、鈴のような響く声が上から降ってきた。反射で顔を上げれば、今の時代に珍しいおさげの女の子が立っていた。

 目の前の彼女は、口をもにょもにょと動かしている。

俺が彼女に驚いて立ち上がれば、彼女は「ひいぃっ!」と叫んで一歩下がった。

へ、凹む……


「えっと……俺の名前は田中、田中洋一です」

「あっ!えっと……はいぃ。わた、わたしは山田 はる、はる、春深ですぅぅぅ」


 あがり症なのか頬を赤く染めて、指をくちゃくちゃと動かしている。指の動きが速く、なめらかで……ちょっと気持ち悪い。


「あー……山田さんは、佐山さんの、」


 友達ですか?と続く予定だった俺の言葉は彼女の「そうなんです!!!」という、クソデカボイスにかき消された。


「わたし、佐山あき子のことを小学生2年生の時から推していて、いや推しというか、いやいや推しなんですけど、もはや生きる糧で!!あ、それで、小2の頃にスカートめくりしてくる男の子がいたんですけど、それで何言っても止めてくれなくて困っていたところを佐山あき子が颯爽と助けてくれたんです!!!その後ろ姿といったら本当に、本当にかっこよくて!!それから、本当に日々推していて!佐山あき子が呼吸してるだけで、私の命が助かる!!!今日は同志に会えると聞いて楽しみにしてたんです!!!」


 さっきまでおどおどしていたのに、水を得た魚のように生き生きと話す姿は見ている俺も困惑はしたが佐山さんのことを本当に好きだと伝わってきて胸の奥がじんわり温かくなった。にしてもテンション上がってるからなのか、話すスピードが速いし、佐山さんのことをフルネームで普段から呼んでるのか?


「ハッ⁉わ、わたし一人で、きゅ、きゅうに、あ、あ、あ、すみません!」


 急に正気に戻ったのか勢いがなくなり、最初のおどおどした様子に俺は失礼だけど、おもしろい子という印象を抱いた。


「その推し?ってファンみたいな意味だよね?」

「え?あ!そ、そうです」


 山田さんは首が取れそうなくらい首を上下に振っている。推しがファンって意味なら、俺は出会ってから今日で3日目だけど確かに彼女のファンであるとは思う。佐山さんと出会わなければ、楽しいという感情も忘れていたことだろうし。


「あの、質問いいですか?」

「あ、は、はい!」

「出会ってから3日目でも、ファンって名乗ってもいいのかな?」


 俺の疑問に山田さんは目を見開いて「もちろんですよ!!!!!」と、鼓膜が破れそうなほど大きい声で肯定してくれた。

 そんなときに公園の入り口の方から「待たせてすまない!」と叫びながら、こちらに走ってくる佐山さんの姿あった。


「佐山さん、おはようございます」

「あ、あきちゃん、おはようぅ」

「田中、春、おはよう!」


 ——!?フルネームじゃないかーい。いや、普段からフルネームで呼んでたらおかしいか。



 さて、時刻は8時57分。

 今日はこの3人でモルックをします。


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