出会い
俺は会社を辞めた。
俺の名前は田中 洋一、脱サラした27歳である。
辞めた理由はいろいろあったり、なかったりだが一番の理由が『しんどかったから』に尽きるだろう。昔は頼られて嬉しく思っていたが、いつしか俺は都合のいい人間。楽するために利用される家電製品のような扱いをされていた。気づいたときはそれでもと思って頑張っていたが、一度気づいてしまえば見て見ぬふりなんてできなくて心は軋んでいき「死にたい」って考えがよぎった自分が怖くなり勢いで辞めた。生きる楽しみなんて忘れたが、俺は死にたいわけではない。
なんで突然自分語りなんて始めたかというと意味はない。ただ暇だっただけだ。会社を辞めて実家に出戻り、家の畑を手伝っている。今は日課になった散歩で公園のベンチで休んでいる。
この辺りは子どもがいないわけではないが、この公園にはあまりいない。まぁ子どもは、自分たちで遊び場を見つけて遊ぶもんだ。大人より子どもの方が、そういう場所を見つけたりするのが上手だ。
公園のベンチで休む理由は散歩に疲れたのもあるが、一番の理由は気になる子がいるからだ。別にそっち方面で気になるわけじゃない。もうそろそろ来る頃だろう。公園の入口にさりげなく視線を向ければ、小六か、中一か、それぐらいの女の子が、大きな木箱を両手に抱えて歩いてくる。
彼女はその木箱に入っている木の棒をボーリングのピンのように並べ、一定の距離から木の棒を投げてぶつける遊びを毎日1人でしている。そう1人でだ。友達がいないのか、彼女がやっている遊びがおもしろくないのか知らないが、家が近くだろうが正直子ども1人は危ない。防犯カメラなんてないし、勝手に俺が心配しているだけだ。
今日も彼女は1人で木の棒に、木の棒をぶつける。カンッという高く耳障りのいい音が、俺の耳に届く。通勤途中や、散歩中は音楽を聞いていたが、この時だけは音楽を止めて耳を澄ましていた。
恐らくルールがあるのだろうが、彼女のやっているソレの名前も知らないし、「木の棒に木の棒をぶつける」で検索して出てくる気がしない。そもそも、そこまでの興味もない。
カンッ
カンッ
カンッ
一定に響く音に夢中になっていた俺の足にコツンと、何かがぶつかった。俺の足元には木の棒があった。拾い上げてみたら、ずっしりと重い。大根一本分ぐらいの重さだろうか。
「すまない。その木の棒は私のだ」
初めて彼女の声を聞いた。
これぐらいの年齢って、知らない大人に、ましてや俺は男だし……話しかけるのに緊張や、恐怖があるはずなのに彼女の声色からは一切感じない。凛としていて、こちらの背筋がピンっと、伸びるような彼女の人柄がそのまま出ているようだ。
「ねぇ、これっておもしろいの?」
俺は彼女に木の棒を差し出しながら聞いた。
「気になるなら、お前も投げてみればいい」
彼女はそう言ってニヤリと笑った。
これが脱サラ 27歳 田中 洋一と、中学一年生 佐山 あき子と、モルックの出会いだ。
こんにちは、梅木しぐれです。
モルックが広まってほしいと思い書き始めました。
少しでも興味がわいたらうれしいです!!!




