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2.地獄の始まり

「なんて汚らわしいのかしら」

母がいなくなるとすぐにイライザは私の元へ来た。

前から父の愛人なのに正妻のように振る舞っていたイライザだけど、母がいなくなることによってその振る舞いは過激になっていった。

「大人しそうな顔をして恐ろしいこと。あなたも本当に旦那様の子か分かったもんじゃないわね」

「私は父の子です!」

反論する私をイライザは鼻で笑った。

「その証拠がどこにあるというの?あなたの見た目に旦那様の要素が入っているようには見えないけど」

確かに私の見た目は父よりも母に似ている。

でも、イライザだって母のことを言えないじゃないか。

「ローラントとアナベルだって私と同じでしょう」

「何ですって」

眦を吊り上げて、私を睨みつけるイライザに一瞬怯んだけどグッと歯を食いしばって耐えた。

ここで自分の正統性を主張しないと母の不貞が確定してしまう。

「あなたは父の愛人でしょう。なら、他の男がいないとは断言できない」

「旦那様以外にいるわけがないわ」

「それこそ証拠がない」

「あなたと違ってローラントは旦那様と同じ銀髪なのよ」

「銀髪の人間は父以外にもいます。それに金や銀の髪色は貴族には多い」

イライザの平手が頬に当たった。その時、爪が頬を引っ掻いた。頬は叩かれ赤くなり、更に三本の引っ掻き傷ができた。

「エーベルハルト、あなたは自分の立場が分かっていないようね。もう少し賢く生きるべきだわ」

ねっとりと絡みつくイライザの目。この目を知っている。イライザが父や他の男に向けている時の目だ。

嫌悪と気持ち悪さが押し寄せてくる。

今すぐここを離れないとという恐怖が湧き上がる。

「私が教えてあげるわ」

「け、結構です」

「遠慮する必要はないのよ。だって私はあなたの母親になるんだから」

爪が食い込むほど強い力でイライザが腕を掴んでくる。

イライザは女で私は男だけど、十二歳の子供がいくら女でも大人の力に勝てるわけもなく必死で彼女の手を押しのけようとしたけどイライザはびくともしなかった。

「私の母はオルテンシア、ただ一人です」

「ああ、あなたを捨てて男と逃げた」

クスリとイライザは笑う。まるで母を想っている私の心を嘲笑っているようだった。

「あんな女に義理立てする必要はないのよ。あの女はあなたを捨てた。あなたなんて要らなかったのね」

イライザは言葉を紡ぐ。私の心を傷つけるために。

「可哀想に。あなたの母はあなたを愛してはいなかった」

「うるさい」

「あの女が愛していたのはあの使用人の男だけ。あなたは邪魔だった」

「違う」

「だからあなたを置いて逃げた」

「違う」

「女にとって愛してもいない男との子供なんて嫌悪の対象でしかないのよ」

そんなはずがない。

母はいつだって優しかった。

頑張って、結果を出せば褒めてくれた。

「あなたは母親に疎まれていの」

母が厳しかったのは全部私の為。嫌っていたからじゃない。

「可哀想なエーベルハルト。でも、大丈夫よ。あの女の分まで私があなたを愛してあげる」

「や、め」

イライザは私を無理やり自分の部屋に引き込んだ。

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