声も体もなっちゃってるよー!
・・お、お母さん・・
私は涙目になって鏡を見つめた。ヨン君が涙目になってる。
・・綺麗・・
って、言ってる場合じゃないよ。なんだよ、これ。どういうことだよ。ヨン君に会いたいとは言ってたけど、ヨン君になりたいなんて一言も言ってねーよ。
夢ですか?夢ですよね??ねえ。
私は思いっきり頬をつねった。
い、痛い
ヨン君の頬が赤くなる。
「ご、ごめーん!ヨンくーん!!」
思わずさする。夢から覚めたい時は、やっぱり頬をつねってみるんだね。
なんてこと、言ってる場合じゃない。
「ヨンー!!今日、何のアクセサリーつけるー?」
さっき部屋から出ていったとジョン君がまたふいに現れる。
・・・は、は、は、はだかーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
私はおもわず布団で顔を隠した。ボクサーパンツしか履いてないジョン君は、まだ状況をはっきり把握していない私には刺激が強すぎるのです。ハイ
「・・どうしたの?ヨン?まじでなんか今日変だよ」
やたらと近づいてくる。やたらと距離が近い。やっぱり、ここの国の人は距離感おかしいよね。
って、そんな事言ってる場合じゃない!もう、さっきから「場合じゃない」しか言ってないよ。
「あ、分かったー!シャワー一緒に浴びたいんでしょ」
満面の笑みで訳わかんない事言ってます。この人。
「じゃ、行こっか」
私をつかみ、たちあがらせる。私だって今一応男の子なのに、がっしりしたジョン君からしたら朝飯前らしい。
そのまま、本当にシャワー室まで連れていかれる勢いだったので、とりあえず踏ん張った。
踏ん張りまくった。
「なに?」
すぐ、不機嫌な顔になるジョン君。そんなとこも可愛い・・じゃなくて。
「あ、あの・・きょ、今日は・・シャワー浴びない・・(そんなことしたら死ぬ)」
あ、ヨン君の声だ。こんな時なのに、ヨン君のハスキーボイスを聞いて泣きそうになる。この声にどれだけ救われてきたか。
「え?そうなの?昨日入ったっけ?今日、もうあんま時間ないから?」
ジョン君は意外とすんなり手を放してくれた。おもいのほか、時間が押してるのかも。うん、そうだ。これでいこう!
「う、うんうんうんうんうん!入った入った入った入った!今日、時間、ないないない!!」
「何それ?なんでそんな何回も?」
「はい、はい、はい、入ったのは入ったから!!」
「ふーん、ま、いいけど。とにかく今日つけるアクセサリー早く決めてよ」
アクセサリー、私が決めるの?
私は訳がわからず、とりあえず隣の部屋につれていかれる。隣の部屋は、衣裳部屋のようだった。衣裳部屋と言っても、私の部屋より広いけど。しかも、ものすごいブランド物ばかりだ。
すごいなー。「FXF」売れてるんだなあ。
「ねえ、これなんか良くない?」
ジョン君がにっこり笑いながら、数珠のようなものを取り出してきた。
・・数珠じゃん
そう思った私の心の声は無視して、私があいまいに笑うと。
「ちらっと見せるようにつけてよ。長袖の下にさ」
訳のわからない提案をしながら、ジョン君が私の左腕に数珠?をつけてくれた。
「ちゃんと長袖着てよ」
見せたいの?見せたくないの?
訳が分からなかったので、私は半笑いのままだった。
チュッ
「ーーーっーーー」
・・・おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおいい!!!!!
だからスキンシップ多すぎだって。何なのこれ?こちらの国の人みんなこうなの?
一言話したり笑ったりすると、自動的にでこやほっぺにチュッってされるの??
どういうお国事情???
「なんか、半笑いのヨンも可愛い!今日のヨン、変で可愛い!」
半笑いって気づいてる。しかも変って気づいてる。なのに、可愛いって・・・
「さ、ヨンも早く着替えてよ。今日はどんな感じ?」
「・・ええっと・・こ、こんな感じ!?」
どんな感じもなかったので、とりあえず近くにあった服を手に取る。
「お、珍しくモノトーンいいじゃん!じゃ、それ早く着て、行こう」
ジョン君がそう言って、近くにあったツールに浅く腰掛ける。一つ一つの動作が格好良い以外ないんだけど・・ないんだけど。
「あのー、着替えるから出ていってくれる?」
さすがに、人前で着替える趣味ありません。
・・・そしたら、なぜかジョン君爆笑!!!
「ヨン、何なの?今日はどういうコンセプト?だいぶヨンの変わった感じには慣れたつもりだったけど。
OK!じゃ、外で待ってるよ」
とりあえず、何だか分からないが気にいってくれたらしい。
今度は不機嫌な表情を見せず、ジョン君は手をヒラヒラ降りながら衣裳室を出て行った。
さ、さてと。き、着替えるか
「・・ヨン君、ごめんなさい!!こんな訳わからん日本人が服脱いだりして。
な、何も何も!!見ませんから。ごめんなさいね」
私は念仏のように唱えながら、ひたすら目をギュッとつぶって一目散に着替える。
見てはいけない気がして。み、見たいけど。いや、見てはいけない。み、見たいけど。
チラッと大きい鏡を見たら(見てしまった!)、もう、ほんっと私のものとは思えない(私じゃないんだけど)綺麗な体が確認できて。
やっぱり、それ以上は無理で、目をつぶりながら急いで着替えた。
薄目で・・・