僕だけの宝物
今、この瞬間。
この時代に、この世界。
『僕』という身体をもって、陽を浴びているのは奇跡の賜物だ。
地に足を置き、重力の力を借りまっすぐに。
地面と垂直になるよう、僕は立つ。
意識せずとも、僕はこの地上にしっかりと根を張り巡らせるように。
長く長い時を生きる木々と同じように、接地面少なくとも立つことが出来る。
寿命の差など、この世界で生きることの言い訳にはならないのだ。
そんなちっぽけな違いは、誤差でしかない。
ふぅ……と、息を吐く。
今度は、空を見てみよう。
首を上げ、地面に向けていた視線を天界へと移す。
さすれば自ずと見えて来るだろう。
尊く、大地とは異なる世界がそこにはある。
あぁ、なんて広いのだろう。
僕が根を生やす大地よりも、限りなく続く空は計り知れない。
大いなるこの空は、誰からの干渉も得ない。
この空がどこまでも澄み、どこまでも遠く、手に届かないのは幸いだ。
ほんの小さな生命体に過ぎない僕たちが、安易に手を伸ばせる領域ではない。
だからこそ、僕たちはこの空に想いを馳せる。
遠い未来へ、期待する。
澄み渡る青い空。
雲が順々に伸びると、煌々と照る陽は隠され、世界は薄暗くなる。
やがては雲が山にぶつかれば、大地に『雫』をもたらす。
それもまた、自然界からの贈り物。
大地が潤い、生きるには湿った土も必要だ。
広大な大地に及ぶ枯れ、ひび割れを起こす地面を潤す。
それには、人間の手に握られた如雨露からの水だけでは、全くもって事足りない。
世界をすっぽりと包む『雨』を、命は乞う。
目に染みるほどの光。
曇った空ですら、直接視界に入れると目の奥が刺激される。
それは、痛みとはまた異なる。
次第に濃度の深い灰色の世界が落ち着けば、曇っていた視界も晴れる。
眩い光を取り込めば、頭の中は清々しく晴れやかだ。
感覚もしっかり、研ぎ澄まされていく。
空はなんて、眩しいのだろう。
空はなんて、温かいのだろう。
僕は、拳を握った。
掴んだものを、目では捉えない。
『希望』という名の、温かい塊。
手が汗ばんで、じんわりとした感覚が得られるほど、それは熱を帯びている。
人間も、空や大地と同じように『熱』を生むことが出来るのだ。
生きている。
この身体も、この心も、確かに生きている。
その証拠が、内から芽生え生じる『熱』だ。
何処にベクトルを向けてもいい。
『熱』がある限り、僕たちは前を向ける。
後ろを振り返りながらも、道を模索出来るのだ。
僕は一歩、足を踏み出す。
今までに、足跡を付けたことのない道へ。
一歩、また一歩と足跡をつけ残す。
全く同じ道を歩いているように見え、実際の所はそのはずがない。
いつだって新鮮で、いつだって初対面。
だからこそ、人生とは何が起きるのかを予測することが出来ない。
だからこそ、僕はこれを『面白い』と認識する。
視線を空から大地へと戻す。
続く世界は、僕だけの特別な宝物。
さぁ、此処からだ。
僕は息を吸いこんだ。
湿った空気は喉に優しく、濡れた土の匂いは甘く鼻に残る。
口角を上げ、目を細めると世界は変わる。
視力が落ちた目にも、留まるものは多々あるものだ。
さぁ、行こう。
この瞬間を、誰に譲ることもしない。
この瞬間は、僕だけのものだ。
さぁ、見てごらん。
世界は僕を、待っている。
世界と僕は、無限の可能性と希望に満ちているのだ。
はじめまして。
または、お久しぶりです。
小田虹里です。
この『なろう』に登録してからしばらくの間は、僕は恥ずかしながらニートでした。心を病んでおり、それの療養。また、母が癌ということが分かり、仕事を辞め無職になったという理由もあります。ただ、母は助からずに他界。その悲しみを引きずって、ずるずるとしておりました。
でも、三年前から以前勤めていた場所へ復職。今、四年目となりました。働くことは、いいことですね。生きる上で、お金が必要だということを、すごく感じております。今は、実家を出て大切な人と生きています。そのため、よりお金が必要だと認識し、なんとか仕事を続けています。
ただ、その職場でパワハラにあったり、イジメにあったり。イジメとまでいかなくとも、嫌がらせを受けたりなどを近年多々あり。精神的に、今とても厳しい状況に置かれています。そして、働くようになった為、執筆活動に時間を割けなくなってしまいました。休みの日は、結構あるにはあるのですが、心身が疲弊してしまっており、パソコンを開くに至らないのです。
このままでは、まずいな。
さすがに、そう感じるようになっていました。
そんなところで、今は『コロナ』まで流行。何やら、本当に不穏な日々ですよね。僕の住んでいる地域は田舎なので、そこまで緊迫はしていないのですが、職場が子どもたちや他県からのお客さんが来る場所なので、心配でないと言ったら嘘になります。去年の今頃は、休館中でした。
いつまた、コロナで休館になるかもわからない……という訳で、もっと積極的に、活発的に小説を書いていこうと思いました。今の仕事を辞めるつもりは無いけれども、いつまでも僕の夢は『小説家』です。それを叶える為には、もっと努力しないと! と、思いました。
つい先日。
久しぶりに、ファンタジー小説を買って読みました。
ハイファンタジーの作家になりたい。ずっと、そう思っていました。
だけど、実際に書籍化されている本を改めて読んでみて、自分には難しいかもしれないと、思ってしまいました。ただ、それは悲運なことではなくて。むしろ、人生の分岐点が見えたのかもしれないと、前向きにとらえることが出来ました。
今の僕には、どのジャンルを見ても力不足かもしれない。だけど、今回のような詩とか、現実的な物語を紡ぐ作家を目指してみるのも、アリなのではないかな……と。視野が広がった様に思えます。
なろうでの更新も、以前はファンタジーからSF。現代的なものから時代劇的なものまで、様々なジャンルへ手を出していました。しかし、今はCOMRADEシリーズ……それも、『憂鬱』編しか更新出来ていなくて。もっと、別の作品やジャンルにも、もう一度挑戦したいし、しなければいけないのではないかな、と。そこで、今回。休日にこの作品を書いてみました。
鬱を患っている僕が、前向きになろうとしている……そんな中で生まれた作品です。
コロナ禍でも、希望を忘れたくない。
夢を叶える為の、踏み台にしてやる。
それくらいの意思を持って、打ち込みました。
ここまで読んでいただけたことを、嬉しく思います。
本当に、ありがとうございました。
どうか、世界が平癒されますように。
これ以上の苦しみが、課せられませんように……。
また、別の作品でもお会いできますように。
その際は、よろしくお願いいたします。
2021.4.28




